「子は親の言うことなんか聞かない」応援するのみ

── 子どもはすっかり親離れの準備ができていると。それに対して…。

 

蝶野さん:やっぱり寂しいですよ。長男の下宿先までどれくらいかかるのか調べて、「車だと6時間くらいか…。よし、行けなくもないな」と。ただ、本当は手放したくないし、近くにいてほしいけれど、子どものためを考えると、世界に出てグローバルな生き方をしてほしいなという気持ちもあります。息子に「将来どんなふうに生きていきたい?」と聞いたら、「ラクしてお金を稼ぎたい」と言うから、「わかる、それは俺も同じだよ。でもそうなるためには、やっぱり努力をしないといけないよね」と。

 

お金を稼いで何がしたいのか。そのためにはどんな勉強をしなくてはいけないのかなど、一緒に考えながら話をしたり、調べたり。いろいろ話すことで、子どもの本当の気持ちだったり、夢が見えてくるので、会話を重ねることは大切だなと思います。

 

── 上からアドバイスをするのではなく、子どもと一緒に考える。素敵な関わり方をしていらっしゃいますね。お子さんには、どんなふうに育ってほしいですか?

 

蝶野さん:親の願望を押しつけてはいけないなと思っているので、子どもが望む道を応援したいです。そもそも子どもって、親の言うことなんか聞かないものだと思っているんですよ。自分自身も厳しい家に育ったけれど、親の反対を押しきって、レスラーになったわけですから。だから、「どうしてもこれがやりたい」と思えるようなことがあるなら、味方になってあげたいし、全力でサポートしたいと思っています。

 

PROFILE 蝶野正洋さん

ちょうの・まさひろ。1963年生まれ、アメリカ合衆国シアトル出身。1984年に新日本プロレスに入門し、同年デビュー。以来、数々のタイトルを獲得し、「黒のカリスマ」として人気を博した。2010年に退団。現在は、メディア出演や講演活動など多方面で活躍し、「AED救急救命」や「地域防災」の啓発活動にも尽力。アリストトリスト代表取締役。一般社団法人ニューワールドアワーズスポーツ救命協会代表理事。

 

取材・文/西尾英子 写真提供/蝶野正洋