妊娠報告に夫の第一声は「体温計入ってんだけど」
── すごいタイミングですね。妊娠がわかったときの栗原さんの気持ちとご主人の反応はいかがでしたか。
栗原さん:衝撃でした。でも私は選手時代から体の感覚がすごく敏感でなんとなく察知するタイプだったんです。だから少し生理が遅れただけで「今回は違うな」とすぐわかりました。それで検査をしてみたらやはり妊娠していたんです。彼には封筒に手紙と一緒に妊娠検査薬を入れて渡したんですが、主人の第一声が「体温計入ってんだけど?」でした(笑)。すべてを悟った瞬間は口が開いたままでしたね。その後はハグしてくれたので、本当にうれしかったんだと思います。
── はじめての妊娠、そして出産ということで不安もあると思いますが。
栗原さん:生まれてくるまでは何が起こるかわかりませんし、生まれてからも何が起こるかわからないのが妊娠なので、もちろん不安はたくさんあります。高齢出産になりますし、まさに未知の世界。やはりわからないことやなんでも初めの一歩ってすごい怖いもの。いろんな人からアドバイスをいただいていますが、こればかりは自分が体感しないとわからないものだと思っています。妊娠を通して、今はいろんなことを教えられています。
── 母になる実感はありますか。
栗原さん:もうすぐ臨月なんですが、手足を曲げ伸ばししているのか胎動がすごいんです。そういうときは「あ、いるんだな」と実感しますね。これからさらに実感すると思いますが、本当に親ってすごいなとその存在の偉大さをあらためて痛感しています。
── ご両親も喜ばれたのではないですか。
栗原さん:彼とおつき合いしているころに、母には子どものことは相談していることも伝えていました。母は私に結婚願望がなかったこともわかっていたので、「子どもができたら生みなさいよ」とは言ってくれていました。彼と出会う2日前でした。母親と「孫が猫でごめんね」「一生フリーだと思うからごめんね」と何げない会話を交わしていたんですが、その後すぐに妊娠がわかるなんて。妊娠したことを伝えたときは「すぐ助けに行くからね」と本当に喜んでくれました。
── 結婚願望がなかった栗原さんですが、結婚されて価値観はどのように変化しましたか。ご主人と出会ってご自身が変化したなと思うところはありますか。
栗原さん:些細なけんかは増えましたね(笑)。どちらかというと人とけんかをするのは苦手なタイプなんですが、彼にだけは自分の感情を素直に伝えられる。よき味方であり、パートナーだと思っています。
── お子さんにはいずれバレーボールをやってもらいたいですか?
栗原さん:私はとくに考えていないんですが、彼はしてほしいと言っていますね。サッカーでも野球でも本人がやりたいことでいいんじゃないと言ってるんですが、「いや、バレーボールでしょう!」って。
※取材後の2024年12月22日にインスタグラムで第1子の出産を発表した栗原恵さん。「陽太(ひなた)私たちをパパとママにしてくれてありがとう」とメッセージを発信されました。そんな栗原さんに、出産後のコメントもいただきました。
栗原さん:皆様のサポートのお陰で、陣痛が始まって5時間という安産でわが子を産むことができました。陣痛中、彼に「このような素晴らしい経験をさせてくれてありがとう」と伝え、母には改めて「産んでくれてありがとう」という感謝の気持ちが湧きました。わが子に会えた瞬間のことは、今思い返しても涙が溢れます。
まだスタート地点に立ったばかりではありますが、今は妊娠中からここまで元気でい続
けてくれた子どもにありがとうの気持ちでいっぱいです。
PROFILE 栗原 恵さん
くりはら・めぐみ。1984年広島県生まれ。小学4年からバレーボールを始め、中学、高校と強豪校でプレー。2001年に全日本女子に初選出され、翌年に代表デビュー。エースとして活躍し、04年アテネ、08年北京と2度のオリンピックにも出場した。現役引退後はコメンテーターやスポーツキャスターとして活躍し、後進の育成などにも力を入れている。
取材・文/石井宏美 写真提供/栗原恵