タイミング法、体外授精を経て女の子を出産
── ご結婚後、ブログでは「周囲の妊娠をうらやましく思ったことがある」と記載されていました。当時の妊活について伺ってもいいですか?
西方さん:子どもについては、結婚を意識したころから絶対に欲しいと思っていました。プロポーズのときの「子どもは作らなくてもいいよ」という発言は、結婚してもらうための嘘でしたから(笑)。夫も「できたらできたでいいね」という感じだったのですが、結婚して4年ぐらい経っても子どもができませんでした。妊娠しにくいんだと気づいて、夫に「不妊治療をしたい」と伝えてみると、「えー!子どもは自然にできたらいいねという話じゃなかった?」と驚いた様子で。「そんなの結婚するための嘘に決まってるじゃん!」と泣いて訴えると、彼も「そこまで言うなら」と真剣に考えてくれました。でも、そのとき彼はきっと不安なんだろうなと感じました。
なぜなら、夫は環境の変化が苦手で、同棲のときも結婚のときも彼のほうがマリッジブルーみたいになっていたので、妊娠・出産となるとまたひとつ構えるだろうなと思ったからです。そこで、「あなたを守るメンバーを増やすんだよ!私はどんどん年を取っていくけど、子どもがいたら私ができないことも子どもがサポートしてくれるかもしれない。子どもがいれば、あなたを守ってくれるよ!」と話したら「そうか!」と希望に満ちてくれて(笑)。そのあとは、同意書を書いたり精子提供を行ったりと協力してくれるようになりました。
治療を始めて最初の1年間はタイミング法をしていたのですが、なかなか授からず。生理が来るたびに落ち込んでいましたが、「年齢的にもうステップアップしたほうがいいよ」と医師からアドバイスを受け、体外受精に挑みました。
── 治療中、意見や気持ちの相違からケンカになってしまうケースもあるようです。西方さんご夫妻はいかがでしたか?
西方さん:ケンカは、やっぱりありましたね。不妊治療している方はきっと皆さん通ってきている道だと思うのですが、タイミング法の場合、気分じゃなくても疲れていても、しないといけない。でも、子どもを授かるためにはそんなことを言っていられない。思いが強いのは女性側なので、どうしてもケンカになりそうなときがあったのですが、「ここを乗り越えたらあなたを守るメンバーが増えるから!」と言い続けて(笑)。なんとか乗りきりました。
── 2016年に女の子を出産されました。産後についても聞かせてください。
西方さん:私が勝手に「こんなパパになってほしい」という理想像を作りあげて、そうはいかなくて勝手にガッカリしちゃうことはありました。自分のなかでは、子どもが産まれたら、父親は愛おしいという眼差しで子どもを見て「あー、かわいいね。あー、かわいいね」と言うイメージだったんです。でも、産後の入院中に夫が来たとき、娘を抱きながらめちゃくちゃ仏頂面で「これから家に帰ってきたら大変になるなあ」と言ったんです。あとから考えるとまったく悪気はなくて、仏頂面に見えたのは、いつもの真顔(笑)。「不安もありつつ、夫婦でがんばっていこうね」という決意の表れだったのですが、ホルモンバランスを崩していたからか、そのときは文句に聞こえてしまって。勝手にショックを受けた記憶があります。
ただ、不妊治療に協力すると言ってくれたときから、周りのパパがしているようなことを夫には押しつけないようにしようと決めていて。彼は彼のできることでサポートしてくれればいいなと思っていたので、極力期待はしないし、「やってよ」と言わない。期待すると、してもらえなかったときにきっと腹が立つと思うので、私からは何もお願いしなかったんです。
そしたら、娘が大きくなるにつれてどんどん「かわいい」が増していったみたいで、仕事が終わるとすぐに家に帰ってくるようになって。3学年差で2人目を妊娠してからは特に、率先して助けてくれるようになりました。たとえば、妊娠中で娘を抱っこできないことを察して抱っこしてくれたり、ごみ捨てをしてくれたり、つわりがひどくて「もうダメ。気持ち悪い」と言うとすぐ料理をして娘に食べさせてくれたり、作り置きもしてくれたり。期待しないと決めていたぶん、彼への印象はよくなる一方でしたね(笑)。
PROFILE 西方 凌さん
1980年8月生まれ。人気バラエティ番組『恋のから騒ぎ』第9期生として約1年間出演し、「左官屋」の愛称で人気に。翌年から芸能活動を開始し、2009年4月公開の映画『ニセ札』で俳優デビューを果たした。監督を務めた木村祐一さんと2012年5月に結婚し、現在は2児の母。
取材・文/長田莉沙 写真提供/西方凌