自身のさまざまな経験をもとに、他者理解を深めるために、全国の小中学校・高校・大学で「命の参観日」という講演を行っているシンガーソングライターの玉城ちはるさん。「家族相談士」の資格をとり、日々、子どもたちのSOSに向き合っています。(全4回中の4回)
子どもたちが相談してきてくれたことを褒めたい
── 講演「命の参観日」をきっかけに、小・中・高・大学の子どもたちと無料でLINE相談をされているとのこと。2000人を超える子どもたちの相談に乗ってきたそうですね。
玉城さん:最初は「メールで相談できませんか?」と言われたのがきっかけで、公式LINEを立ち上げ、子どもたちと直接つながるべくLINE相談を始めました。
──「学校に行きたくない」「どうやったらお母さんに愛されるか」などの相談があるそうですが、そんな子どもたちの声に応えるのはとても繊細で慎重になることと思います。どのようなことを大切にして対応なさっていらっしゃいますか?
玉城さん:大切なのは応えるのではなく話してもらえるように寄り添うことだと思っています。まず初めに、私に相談してくれたことに対して感謝の気持ちを伝えます。というのも、たいがいの子が自分を否定したり、相談することが申しわけないとか、みっともないと思ってしまっています。なので、相談したこと相談できたことを褒めてあげたくて感謝を伝えます。
「今、あなたは問題を解決しようと私に相談できた。あなたは行動力がある人なんです。誰もが相談できるわけではないので、解決する能力がある人なんですよ。そのことに自信を持ってください」と。子どもたちが悩みを吐き出すことで「今は視野が狭い状態だけど、そのなかで少しでも余裕が生まれると解決の糸口が見えてくるんだ」ということに気づいてもらえるように継続的に声をかけています。自分自身の持っている力を信じて、活かせるようにするお手伝いしています。
── たしかに、誰に相談したらいいのかもわからず、自問自答で自分を否定的に考えてしまうお子さんには、LINE相談で誰かと話す機会を持つことは大きな意味がありそうですね。
玉城さん:苦しいことがあっても相談できない子がたくさんいると感じています。なので相談するという一歩を踏み出してほしい。LINE相談ではさっきもお伝えしたように「こんなことを相談してごめんなさい」とか「これぐらいのことを聞いてもらうのが申しわけない」とか、「愚痴ってごめんなさい」とか謝るお子さんが本当に多いんですよね。
実際、みんな生きづらさを抱えて不登校児は増えるばかりなのに、大人への相談は増えていない。それが疑問で、相談しづらい原因が何かを探るべく、大学でアンケートを取りました。回答にあったのは「カウンセリングに行くのが恥ずかしい」「みじめ」など、そしていちばん多かったのは「親に心配をかける」というものでした。
子どもが「スクールカウンセラーと話してきた!」というと、親が心配した顔で「どうしたの?ママに話して?何があったの?」となりがちですよね。そういう反応が余計に親を心配させるから相談しにくいと思っていることが判明したんです。
そんな悪循環があることがわかったので、相談できる能力は素晴らしいし、生きていくうえで大切な力なんだということを伝えたいんです。こうした活動を通して、セルフメンタルケアができる人を増やしていけたらという思いです。