連帯保証人で父親にある日、突然4000万円の借金が。精神的にも経済的にもつらい日々を過ごした西真央さん。大学生だった彼女はこの途方もない金額と直面しながらも、「そこまで絶望感がなかった」と当時を振り返ります。(全3回中の1回)

いきなり父が4000万円の借金を背負うことになった

当時は完全ギャルだった大学時代の西真央さん
当時は完全ギャルだった大学時代の西真央さん

── 大学時代に、親の借金返済のために中退せざるを得なくなってしまったそうですね。どんないきさつがあったのでしょう?

 

西さん:父は工務店を営んでおり、私も「いずれは仕事を継ぐのかな」と思って育ちました。高校卒業後は国立京都工芸繊維大学に進学。工学部に所属して建築やデザインなどを学んでいたのですが、大学3年生のときに父が突然、4000万円の借金を背負うことになり、人生が一変しました。

 

── なぜ、いきなり多額の借金を背負うことに?

 

西さん:父が親戚の連帯保証人になっていたのですが、その人が自己破産をしたため、わが家に借金が降りかかってきたんです。すぐに家族会議があり、親から「もしも私(親)に何かあった場合、子どもである私に借金が相続される」と告げられ、衝撃を受けました。とはいえ、学生だったこともあって4000万円という金額の大きさに実感がわかず、何年くらい働ければ返せるのか、本当に返済可能な額なのかも検討がつかない状態。家族全員混乱した状況でしたが、私が「しっかり支えていかなくては」と感じていました。

 

── 大変でしたね。相手の方と話し合いはされたのですか?

 

西さん:はい。話し合いの場には私も参加しました。聞けば、家族の病気や事故などの不幸なできごとが重なって、借金が膨れ上がってしまったとのこと。自己破産をすれば借金が消えると思っていたらしく、連帯保証人である父が返済義務を負うことになるとは知らなかったと謝罪されました。しかも、「生活するだけで精一杯で返済するのは難しい」と言われてしまって。

 

事情は理解しましたが、うちがすべて肩代わりするのも大変ですし、少しでも支払う意欲を見せてもらいたい気持ちもあり、「少しずつでも返済できる方法はないか?」と話したのですが、折り合いがつきませんでした。話し合いはサイゼリヤで行ったのですが、店内の明るい雰囲気とは裏腹に、私たちの席だけ重苦しい空気が漂い、なかなか壮絶でしたね。

 

結局、その後の平行線をたどり、私たち家族が借金を返済するはめに。もともと父はお人好しで頼みごとを引き受けがちなタイプなんです。ただ、このできごとをきっかけに、夫婦ゲンカが増えて家庭内がぎくしゃくし、後に住んでいた家を手放すことになるなど、経済的にも精神的にも苦しい数年間でした。

「借金の肩代わり」不思議と絶望感はなかった

──「なぜ自分が犠牲にならなくてはいけないの?」と怒りがわきそうな状況ですね。

 

西さん:もちろん納得できない気持ちもありましたが、怒りというよりは「これからどうしていくか」を現実的に考えなくてはいけない状況でした。それに、大変ではありましたが、不思議と絶望感はなかったんです。父も会社をやっているし、私も大学を辞めてお金を稼げばなんとかなるだろうと、意外に前向きでした。振り返れば、何も知らない20歳の若者だからこそ、わが身に降りかかったことに現実味がなく、楽観的に考えられたのかもしれません。もしも、いま4000万円の借金を突然抱えることになったらと思うと、恐ろしいです(笑)。

 

幼少期の西真央さん
幼少期のころ。工務店を営む大好きな父親と

── つらい状況の中でも前を向く気持ちを失わない。気丈でいらっしゃいますね。

 

西さん:昔からわりと、自分の力で生きていきたい気持ちが強いタイプでした。親からも「高校までは責任を持って育てるけれど、成人したら自力で頑張って」と言われて育ちましたし、大学の学費もバイト代から支払っていました。親は「払う」と言ってくれましたが、「お金を出してもらう=自分の人生の決定権を委ねる」ことになる気がしていたんです。

 

── その後、1年間の休学を経て、大学中退を決断されました。休学されたのは、どういう思いがあったのでしょう?

 

西さん:当初は借金返済のために、大学をすぐに辞めてお金を稼がなければと思っていました。ですが、当時所属していたラボの教授に相談したところ、「そういう事情であれば、とりあえず1年間休学してみたら?実際に働いてみて、そのまま社会でやっていけそうな手応えが得られてから、辞めてもいいのでは?」とアドバイスしてくださいました。

 

たしかに、自分が社会に出てどれくらい稼ぐことができるのかわからなかったし、退学に迷いもあったので、「そういう選択肢があるならやってみよう」といったん休学することに。当時、アルバイトをしていたウェブ制作会社に事情を話したところ、正社員として雇ってもらえることになりました。