フランス人マダムたちは、年齢も他人の目も気にしない

石井庸子さん
ジャケットや帽子の雰囲気を引き立てているバッグは、ZARAのもの。プチプライスやお手頃価格のアイテムをコーディネートして、今風のファッションに仕上げるのが石井さん流

YouTubeでも暮らしぶりが紹介されている石井さんは、最近では、日本に一時帰国すると、講演を依頼されることもしばしば。

 

「日本の女性たちは、『私はもう歳だから』とか『いい歳して何してるんだろうって、人から妙に思われたりしないかしら』と、つい人の目を気にして冒険しなくなってしまう。けれど、フランスのマダムたちのように物怖じせずに、どんどん挑戦してみてくださいねってお話ししたら、『私も挑戦してみることにしたわ!』とすっきりした表情で帰られる方がたくさんいらっしゃるんですって。私って、日本の女性たちに勇気を与えてるのよ。なんていったって、私は82歳の元気なおばあちゃんなんだから(笑)」

 

そのライフスタイルとともに、パリのセンスで着こなす私服ファッションにも注目が集まっている石井さんは、「若い頃にショーや撮影でさまざまな服を着る経験ができたからこそ、自分に何が似合うのかがわかるようになった」と言います。

 

「たとえば、私にはヒラヒラのフリルや派手な花柄は似合わないし、いつも着る服の色はベージュ、茶色、白、グレー、黒。要するに、シンプルなのがいちばん。クローゼットの中もこれらの色合いで揃っているから、コーディネートに迷うことはありません。とはいえ、たとえ私には似合わない服でも、ほかの女性には似合うかもしれない。だから、自分にはどんな服がしっくりくるのか、ためらわずにどんどん試してほしいですね」

 

ブランド品には特にこだわらず、好きな服を着る。髪にはスカーフかリボンを巻いて、シンプルなシャツかブラウスにベストやジャケットをサッと羽織り、ボトムスの多くは無地のパンツで、その足元にはメンズライクなレザーシューズを合わせる。パンツのポケットに手を入れてパリの石畳を歩く姿はなんとも粋。石井さんの生き方にはスタイルがある。それが世代を問わず人気の理由なのです。

 

PROFILE 石井庸子さん

いしい・ようこ。日本でモデルとして活躍した後、1973年10月に渡仏。パリの左岸パンテオンの近くで21年間バーを営む。現在は娘のロミの夫、ジルダ・ロアエックが創業したブランド、メゾン キツネ直営の「カフェ キツネ ルーブル」に勤務。

 

撮影/YOLLIKO SAITO 取材・文/原 正枝