監督が相手でも現役時代からはっきりと意見を伝えてきた元バレーボール女子日本代表の大友愛さん。現役引退から12年が過ぎ、4児の母となった今、当時の自分を振り返って思うこととは。 (全4回中の4回)

最初はビクビクしていましたよ

大友愛
お母さんとパスタ「お腹はち切れそうだった」

── バレーボール選手の現役時代は、監督や先輩が相手でも違うと思ったらはっきりと意見できるタイプだったそうですね。もともとそういった性格だったのでしょうか?

 

大友さん:いやいや、全然そんなことないと思います。私は中学からバレーを始め、高校3年生のときには世界ユース選手権を経験させてもらったのですが、当時の私は身長が高い(184cm)だけで同世代と比べると本当に下手っぴだったんですよ。

 

でもユースで会う東京や大阪の強豪校の子たちは、皆すごくしっかりしていたんです。技術も高いし、自分の意見もはっきり言っていた。地元の宮城からひとりで参加していた私は、最初は心細くてビクビクしていましたが、そういう同世代に刺激されて、そこから少しずつ自分を主張できるようになったのかなと思います。

 

── スポーツの世界は監督と選手、先輩と後輩など、上下関係が厳しい印象があります。自分の意見を言いづらい場面も多かったのでは?

 

大友さん:でも私、練習の目的が納得できないと、それが気になって集中できないんですよ。たとえば選抜大会の練習中に、コーチが壁にボールをボーンと投げて「あれを取りに動け!」と指示を出す。でも壁にボールが当たったら拾えないですよね?だから「先生、なんでわざと壁に当てるんですか?この練習は何につながるんですか?」と、思ったことは目上の人が相手でも普通に言っていました。

練習メニューっていろいろあるじゃないですか。でもたまにそのなかに、特に目的はないけど惰性で声を出して時間が過ぎるのを待つ、みたいな無意味な練習もある。そう感じたときは「先生、これ意味ないから早くやめましょう」と言っていましたね。腑に落ちないこと、納得できないことはなあなあで流したくないんです。

 

── なるほど。根性論の対極ですね。当時の監督が大友さんにどんな印象を抱いていたのか聞いてみたいです。

 

大友さん:長女の美空もずっとバレーをやっているのですが、10代の私に教えてくれた監督が、美空が中学に上がったときのバレー部の監督だったんですよ。その監督と久しぶりにお話したら「10代のころのお前は本当に珍しい選手だったよな。みんなが『ハイッ!』と返事をする場面でも、自分が納得できないときは絶対にハイを言わないからやりづらかったな~」と笑って言われました。でも私としては、バレーに限らず「知らないでやることのほうが恥ずかしい」という感覚があるんです。知らないことを知っているように装ったり、納得できないことをそのまま放ったりしておくほうが恥ずかしい。

 

だから、4人の子どもたちにも「わからないこと、これは違うんじゃないかなと思うことは、相手がコーチでも大人でもどんどん聞くといいよ。間違っていたら大人が教えてくれるし、間違っていなかったらそれは自分の自信になるから」と教えています。

 

── 間違っていたら学びに、間違っていなかったら自信になる。すごくポジティブないい考え方ですね。そういう人が組織にひとりでもいると新しい風が吹きそうです。

 

大友さん:でも私、前に出たいタイプではまったくないんですよ。本心では波風なんて立てたくないし目立ちたくない。毎年のように「今年こそ静かな人になろう」と思いながら生きてきたくらいなのですが…ムリでした(笑)。私にとってバレーボールは、好きだからずっと続けてこられたこと。好きな仲間と同じ目標を持って戦える。だからこそ楽しかったし、やりがいがありました。子どもたちもそんな風に、自分が夢中になれるものを見つけてほしいなと思っています。