いまだに名義貸しだと思われているので驚かれます
── 美容専門学校を卒業して間もなくの2022年の7月に完全予約制のエステサロンをオープンされます。
赤井さん:個人サロンでは珍しいですが、女性だけでなく男性もウェルカムにしています。フェイシャルとボディ、ヘッドのマッサージのほか、男性は薄毛に悩んでいる方が多いのでオプションで薄毛育毛治療として、専門の先生にお願いして鍼灸もしています。
── 施術も赤井さんがされているんですよね。
赤井さん:そうです。いまだに名義貸しだと思われていて、私がお出迎えして施術をすると驚かれますが(笑)。ひとりで施術をしているのとお客様の悩みをしっかりヒアリングしてからケアをしたいので、基本的にはお受けするお客様は1日2人です。
経理面で一部お任せしているところはありますが、基本的にすべて私が担当しています。オープン当時「宣伝するためのプレスリリースってどう配信すればいいのか」と地道に調べたりも。慣れないことは大変ですが、DDT(赤井さんが所属していたプロレス団体)や所属している芸能プロダクションのスタッフなどに助けてもらい、どうにか開業にこぎつけることができました。
── 施術するにあたってプロレスラー時代の経験が生きている、と感じることはありますか?
赤井さん:腰を入れられるので力強くマッサージできますし、チョップがうまいです(笑)。
── プロレスラーのセカンドキャリアは飲食店や、体を使うトレーナーやストレッチ店が多いそうですね。赤井さんが美容の分野に進んだのは、後輩にさまざまなセカンドキャリアがあると示したかったからですか?
赤井さん:エステサロンをオープンしたときはそこまで考えていませんでした。後づけですが、セカンドキャリアに美容を選んだプロレスラーって知らないんですよ。だから後輩にこういう道もあるよ、って背中を見せたかったところはありますね。常に今の自分がしたいことをして、プロレスをしていたときはよかったって、過去を振り返るばかりの人にも「私の時代は〜」と後輩に自分語りをする人にもなりたくないですから。
── 今後エステサロンに関しての展望はありますか?
赤井さん:事業を拡大しないと、とは思うんですけど、今は店舗を増やすことは考えてなくて。私を信頼してご来店いただいているので、お一人おひとりと向き合って、自分でしっかり対応したいなって思っています。固定費のかかる場所を持って、人の手でケアするって今の時代にはあまり賢い商売ではないかもしれません。だけど人の手でしかできないケアってあると思うんです。時代に逆らっているかもしれませんが、そういう部分は大事にしていますね。
PROFILE 赤井沙希さん
あかい・さき。1987年生まれ。京都府出身。スカウトされ、高校時代にモデルデビューを果たす。芸能活動を続けながら、2013年にDDTプロレス両国国技館でプロレスデビュー。2023年11月にプロレスラーを引退し、現在は芸能活動、DDTの裏方、エステサロン経営と忙しい日々を送っている。
取材・文/津島千佳 写真提供/赤井沙希