仕事をするなかで、いつ何がきっかけで自信がつくのでしょう。「初めて母に作ったケーキでした」と話すのは、人気テレビ番組『ジョブチューン』のジャッジ企画でおなじみの安食雄二さん。40年近く前の話ですが、色あせない素敵なエピソードでした。(全3回中の2回)

小3のころからホットケージをアレンジして作っていた

20代のころのパティシエ・安食雄二さん
20代のころの安食さん

── 安食シェフにとってお菓子づくりの原点とは?パティシエになったきっかけは何だったのでしょう。

 

安食さん:ぼくの母親は家でマドレーヌを焼くようなタイプではなく、そういう意味ではとくに親の影響があったわけではありません。ただ、ぼく自身、子どものころから食べることが大好きで、食の世界に行ったのは自然な流れだった気がします。昔はどの家にもプリンミクスやシャービック、ホットケーキミックスなんかが茶だんすに入っていたんですよね。ぼくもそれでお菓子をよく作っていました。レシピには「全卵2個」と書いてあるところを、「全卵1個と卵黄2個」にアレンジしてみたり。それが小学3年生のとき。「よりおいしくしたい」感覚が、そのときからあったようです。

 

パティシエ・安食雄二さんの幼少期
やんちゃだった幼少時代。父と

昔から器用なタイプで、物作りが得意という自負がありました。たとえば、親にダイヤブロックを買ってもらったときなんて、ご飯を食べるのも忘れるくらい熱中して、ものすごい大作を作ってみたり。父が工務店を経営していたので、そこは父に似たのだと思います。ぼくは3兄弟の次男ですが、父は「雄二が一番、大工に向いてる、雄二に工務店を継がせたい」と考えていたようです。ぼくには直接言うことはなかったけれど、工務店のお客さんにそんな話をしているのを耳にしたことがありました。当時うちは薪風呂で、毎週日曜日になると、ぼくだけ薪割りを手伝わされるんです。「なんでぼくなんだよ!」と、ブーブー言いながら手伝っていたけれど、きっと父の期待があったのでしょう。