保育園生活に必要なものすべてをサブスク化し、「手ぶら登園」の実現を目指して起業したナカラル株式会社の関原さん。脱サラして一番満足度が上がったのは奥様だったそうです。(全2回中の2回)

3人の子を抱え、13年間勤めた大手銀行を退職し

── 2020年秋に起業したそうですが、それまでどんな仕事をしていましたか。

 

関原さん:三井住友銀行で13年間働いていました。最初の5年は営業、その後は人事部に異動して、新卒の学生の採用や、インターンシップなども行いました。最後の3年間は社内の異動や評価などの担当もしていました。

 

保育園着のサブスク
自社で製造したTシャツ。オリジナルのロゴでサイズもわかりやすい

── 共働きで3人のお子さんを育てていらっしゃると伺いました。

 

関原さん:小学校3年生の男の子の双子と、小学1年生の娘がいます。会社員時代は、子どもが起きる前に出社して子どもが寝てから帰宅してくる毎日を送っていました。洗濯や皿洗いなど、帰宅してからできる限りのことはしていたのですが、育児の負担は妻がほとんどを占めていて。

 

もっと何かできるかなと思い、朝、3人の子どもを保育園に送ることを始めました。やってみないとわからなかったことなのですが、送迎って単純に子どもを送ったり迎えに行ったりするだけじゃないんです。どういう荷物を準備して、それを園のどの場所に補充するか、ベビーカーの置き場所などもすべて決まっているんです。子どもの毎日の生活を把握しているからこそできることだなと思いました。

 

── 3人ぶんの準備や支度は大変そうです。

 

関原さん:荷物も大量ですし、3人それぞれ別の教室に連れて行って、それぞれの荷物を決められた場所に置きます。朝、7時に預けていたのですが、子どもたち3人を送るだけで30分はかかっていました。雨の日は歩いていくので、さらに時間がかかります。自分の仕事の荷物だけ持っていけたらどんなにラクだろうと思っていました。園生活で必要になる洋服や、お手拭き、エプロン、寝具などすべてを使い放題で提供し、汚してもそのまま返せるサブスクを思いついたのは、まさに毎朝苦労していた実体験からです。妻が保育士で、子どもが6か月になる頃には仕事に復帰したので、現場の大変さについては妻に聞いて事業構想を練っていきました。

 

ナカラル代表の関原さんご家族
代表の関原さんご家族 起業にあたって保育士の奥さんからも意見を聞いた

── 会社を辞めて起業するといったとき、奥様の反応はいかがでしたか。

 

関原さん:妻の衝撃は相当大きかったと思います。起業後2年間はお給料をもらうつもりはなかったので、収入がゼロになるあいだも子ども3人を育てていかねばなりません。かなり不安だったと思うのですが、妻は「そこまでやりたいならやってみたら」と背中を押してくれました。妻のご両親にもプレゼンして説得し、納得してもらいました。

 

会社員当時の話を聞くと、妻は「忙しすぎて記憶がない」と言うんです。妻は1日のなかで仕事に行っているときだけが落ち着いて過ごせていたそうで、いかに家庭の家事や育児が目まぐるしかったかがわかります。本当に大変な思いをさせてしまっていたので、起業した今は、妻の満足度がいちばん上がったと思います。子どもとの時間が増えて、週に3回は僕が夕食を作るなど、子育てと仕事のバランスを見つけられるようになったと思います。