お笑い芸人として、皆に笑ってもらうのを喜びとしていた小林アナさん(42)。乳がんの経験を公表するか迷ったそうです。そのとき、背中を押してくれたのは同じ事務所の先輩であるカンニング竹山さんでした。(全3回中の2回)

闘病を経験して「ウケなくても死ぬわけじゃない」

── 小林アナさんは31歳で乳がんと告知され、1か月後には仕事に復帰したそうですね。

 

小林アナさん:はい。手術後は痛みもありましたが、あえて日常生活をふつうに過ごすことがリハビリとなり、回復も早かったです。仕事に復帰してみて、手術前とは心境の変化がありました。

 

── 具体的にどんな変化があったのでしょうか?

 

小林アナさん:もともとそれほど落ちこむタイプではないのですが、その傾向がより強くなりました。手術後、お笑いのライブに出演した際、まったく受けなくて大スベりしたんです。以前はお笑いに対する思い入れが強くて、ライブ1回ごとにウケたかどうか、スベったかどうかにこだわっていたんです。でも、そのときは「あれっ、ウケなくても平気だな」と思いました。乳がんと診断され「もしかしたら死ぬ可能性もある」という恐怖にさらされたときに比べたら、たいしたことないなと思ったというか…。私の場合、乳がんは初期だったから、そこまで大きなリスクはなかったんです。それでも大病を患ったのはショックで、生まれて初めて真剣に自分の生死について考えたできごとでした。

 

だから、ライブでスベっても「そういう日もあるな」と気持ちを切り替えるようになりました。前はウケなかったネタを別の日にもう一度やろうとはあまり思わなかったのですが、抵抗なく挑戦できるようになりました。

 

長野県佐久市にあるぴんころ地蔵にお参りに

もちろん、お笑い芸人としては全然ウケないのは困るんですけれど、スベったりウケなかったりしても、そこから新しい発見がある場合だってあります。ウケなかったことがきっかけで、新しいネタを見つけられるかもしれない。これまでとは違うジャンルのお笑いに挑戦するチャンスになることだってあり得る。どんな状況でも、いい方向に向かうきっかけになるはずだと思えるようになりました。

 

── 考え方が大きく変わったのですね。

 

小林アナさん:そう思います。だからといって、いつも前向きで達観しているわけではないし、ときには落ちこむことがあります。でも、そういう気持ちを否定することもないんです。「ヘコんでいる自分がいてもいい。それも私なんだ。もしかしたらこの経験だって今後に生きるかもしれない」ととらえています。受け入れるものが大きくなったと思います。