今だから語れるZONE脱退の真意
── 人気絶頂期に、脱退を表明されました。
MIZUHOさん:仕事自体はすごく好きだったのですが、ずっと続けていきたいという気持ちと思春期ならではの葛藤がありました。自分のやりたいことと、やらされていることのジレンマが大きくなって、このままでは続けられないと思ったのが正直な気持ちです。
自分たちの意見のように見せかけて、大概は大人たちがしたいことでした。10代特有の不安定な時期だったこともあって、何か違うなと感じていて。同世代の友達は、大学や専門学校に進学するか、就職して働くか進路を決める時期だったので、そのギャップも感じていましたし、違う世界も見てみたいと思うようになっていきました。
── 大人が思っていることとのズレとは、具体的にはどんなことですか。
MIZUHOさん:たとえば、キャラ作りなどもそうです。当時、歌番組にたくさん出させてもらっていたのですが、そこでトークをする際にMCの方からちょっとおもしろくイジられたことがありました。私自身は楽しかったんですけど、そのあと週刊誌に「MIZUHOがショックを受けて泣いて学校に行けなくなった」というような嘘の内容を書かれたことがあって。毎日、学校には楽しく通っていましたし、番組でおもしろいことをするのも大好きでした。
事務所的にイメージがよくないと思ったのか、その後から「ふざけるのを辞める方向で」と言われるようになりました。それまでは、元気で楽しい感じを全面に出してと言われていたのに、ガールズバンドとして急に「かっこよくいきたい」と。言っていることが真逆すぎて戸惑いましたし、素直に「それじゃつまらないな」と思ったんです。もっと大人だったら続けられたと思うんですけど、まだまだ子どもだったんでしょうね。自分たちの立ち位置を客観視できていなかったように思います。
── 思春期ならではの葛藤もあったとのことでしたね。
MIZUHOさん:私が脱退を申し出た前の年にTAKA(TAKAYOさん)が辞めているんですけど、そのときには彼女の気持ちがわからなくて。「なんでみんなで一緒に頑張っていけなんだろう」と思っていたんですが、その1年後に、自分が同じ年齢になって同じ気持ちになりました。TAKAとは辞めてから仲良くなって当時の気持ちを聞いたんです。
他のメンバーは続けたいという意志があったのに、私が辞めたいと言った結果、解散することになってしまって。解散は事務所の意向だったのですが、「みんなの未来を変えてしまった」という思いをどうすることもできなくて、メンバーには何回も謝りましたし、再会したときも改めて謝りました。みんなは「全然だよ」と言ってくれていましたけど、今でも申し訳ない気持ちでいっぱいです。
それに、解散理由について仲が悪かったと言われたのもまったく違っていて悲しかったです。私たちは、いわゆる中身がおじさんといいますか。周りから見ても女の子同士でべったりしている感じではなくて、割りきった関係で全員が仕事は仕事、プライベートは別という感じだったのでそう言われたのかもしれません。チームワークはよくて、仲間意識は強かったんですよ。
── 大人から言われることの影響力は大きいですよね。
MIZUHOさん:自分が言っていないことが勝手に独り歩きするのは怖かったです。かわいい子たちはほかにたくさんいるので、いわゆるアイドルグループとは違って実力派と言われてきましたけど、自分たちではそう思っていなかったのと、それって顔じゃないということでもありますよね(苦笑)。それもわかっていることなのでいいのですが、小さい頃から少しずつ傷つけられてきたなとは思います。でも今こうやって冗談で話せるくらい、メンタルはかなり鍛えられたと思います。
PROFILE MIZUHOさん
1986年生まれ。ガールズバンドグループZONEの元メンバーでドラム担当。2001年に『GOOD DAYS』でメジャーデビュー。『secret base〜君がくれたもの〜』が大ヒットし、紅白歌合戦にも3度出場。脱退を表明後、2005年4月にバンドが解散、その後はバーテンダーとして札幌市内で働く。現在の所属事務所は44プロダクション。プライベートでは1児の母。
取材・文/内橋明日香 写真提供/MIZUHO