結婚=引退の空気の中で

谷亮子
肉じゃがもよく作りますと語る谷さん

── ところで結婚会見の「田村で金、谷でも金」の名言は話題になりましたが、当時は女性アスリートが結婚して現役を続けることが珍しい時代だったのでしょうか。

 

谷さん:結婚=引退。決められているわけではないですが、そうした流れはありましたね。海外では結婚しても第一線で活躍されている選手は珍しくなかったのですが、日本ではまだまだ強いのに、結婚を機に引退された先輩方をたくさん見てきました。そうしたなかで、私自身は結婚してもまだまだ続けられるし、シドニーオリンピック(2000年)で金メダルを取っていたので、アテネオリンピック(2004年)で連覇もしたいと思っていて。結婚することでより強くなって、いい方向に導いてくれるんじゃないかという思いもありました。

 

── 結婚会見後、周りはどんな反応でしたか?

 

谷さん:たくさんの応援をいただきました。いっぽうで、「結婚したら弱くなるんじゃないか」「家庭を持ったことで時間を取られてしまうのでは?」と思った方はいるかもしれませんね。

 

── 「田村」から「谷」、名前を変えることで運気が下がるのでは?と心配された方もいたとか。

 

谷さん:勝負師なので、それは一瞬思いました。
試合のトーナメントを決めるとき、出場する世界の全選手の名前が入力されて登録が完了した時点でコンピューターによって、一瞬でバンと組み合わせが決まります。会場では監督が参加して見守っています。選手は決まったトーナメント表をミーティングで受け取り、そこで初めて組み合わせを知ります。名前を表記するときにアルファベットのイニシャルで田村は「TA」。でも、谷も「TA」までは一緒なので、まぁそんなに変わることはないかなと思ってみたり。ほかの苗字なら違ったかもしれませんが(笑)。

 

── たとえば佐藤の「SA」だと変わってきたり(笑)。ただ、夫婦でベストな状態はいいですが、どちらかが不調なときは、どう過ごしていましたか?

 

谷さん:今日活躍できなかったっていう日はなんとなく雰囲気でわかるというか、そこは言わんとしてこうみたいな日はありますよ。逆に、私の調子が悪いときは、私の元気がないことで主人に悪い影響が出てしまわないか心配したし。でも、私が調子悪くても主人が頑張ってる姿を間近で見られることによって、運気が上がるんですよね。勝つ運気というか。お互い調子がいいときは一緒に手をとって進むし、逆にどちらかが不調であれば、もうどちらかが引っ張っていけるように支えあっていましたね。