「愛は自由」母と話した性のこと

── お母さんに話したのはいつ頃でしたか。

 

ハリウさん:結構、大人になってからです。仲のいい友達には打ち明けたものの、それでもやっぱり男の人を好きにならなきゃいけないと思っていた自分がいました。男女の恋愛が世の中の普通で、自分が女の人を好きなのは間違っているという思いが消えなくて。

 

ハリウリサさん
高校生の頃にステージで歌うハリウさん

23歳の頃に、先輩の男性芸人とお付き合いをしていたことがありました。それがテレビで流れているのを一緒に観ていた母が、「いや、これあんた嘘でしょ。男の人、好きじゃないでしょ」と私に言ったんです。今まで自分では、母には隠し通せていたと思っていたんですけど、実はずっと気がついていて、あえて言ってこなかったんだなと。

 

そこで初めて、性について母と腹を割って話しました。これまで無理してきたことや、昔から女の人が好きだったこと。

 

母から初めて聞いた話もありました。周りの友達やフィリピンの親戚から「あんたの娘、女の子なのに男の子っぽくておかしいよね」と言われていたことがあったそうなんです。でも、母は「別にそうだとしても、おかしくはないでしょ。あなたたちに迷惑かけていないんだから、好きにさせてあげて」と言い返していたと。

 

母は私に「愛は自由だから、このままでいいんだよ」と言ってくれました。今まで何も言わないでいてくれた優しさと、母の偉大さを感じましたね。

 

── お母さんを避けるようにしていた時期もあったと伺いました。

 

ハリウさん:見た目が目立ちますし、周りから母のことを言われるのが嫌だったので、一緒にいたくなかったんです。休みの日も、お父さんと過ごすことが多かったと思います。今がいちばん一緒に過ごしている時間が多いですね。収録現場に一緒に行ったり、出かけたり。大人になってから、いい関係になって思い出も増えてきていると思います。今は恋愛や仕事の話もして、なんでも話せる関係です。

 

── 先月末に、念願の歌手デビューをされました。デビュー曲は、はなわさんが作詞作曲を手掛けたそうですね。

 

ハリウさん:事務所の先輩のホリさんが、私がもともと歌手志望だったことを知っていて、これまでの生い立ちや境遇を強みにして頑張っているから、「歌を作ってみるのはどう?」と提案してくれたんです。はなわさんは、情景が浮かぶような歌作りが得意だから、ふたりでお願いしてみようかって。私たちの依頼を、はなわさんは快く受け入れてくださいました。

 

ハリウリサさん親子
「親子、似てます!」幼少期のハリウさんと母のヴィルマさん

── デビュー曲『ヴィルマ』はお母さんのお名前だそうですね。最初に聞いた時はいかがでしたか。

 

ハリウさん:素直に涙が出てきました。「めちゃくちゃいい歌だな」って。自分の経験がそのまま歌になっているので、これまでの母との思い出が走馬灯のようによみがえってきて。感情でいっぱいになって、泣けました。

 

実は、はなわさんには母のいろんなエピソードを伝えていたんです。例えば、「58歳で総入れ歯」とか。芸人なのでちょっと笑いがあるような感じで仕上がるのかなと思っていたら、こんなに感動する歌に仕上げてくれたんだという驚きもありました。

 

── お母さんの反応はいかがでしたか。

 

ハリウさん:単独ライブに母を呼んでサプライズで歌ったんですが、ステージからボロ泣きしている姿が見えました。帰ってから「どうだった?」と聞いたら、「感動した。私の歌を作ってくれてありがとう」って。

 

でも、歌詞の解釈を間違えている部分もあったんです。」これから先、私はもう1人で生きていくから構わないでという意味に捉えたらしくて(笑)。「歌詞を変えなさい」と言われたので、きちんと本来の意味を伝えました。

 

── ハリウさんからみてお母さんはどんな人ですか。

 

ハリウさん:家族への愛が情熱的すぎる人ですね。「子どもは宝物」というのが昔からの口癖で、常に愛情を注がれているんですけど、たまに重いと感じるときがあります。実家から徒歩10分くらいの場所でひとり暮らしをしているんですが、手料理のフィリピン料理や果物がすごい頻度で届けられています。

 

正直、たまには違うもの食べたいなと思うときもありますね。「今、家いるの?」と電話が来て、「今日は夜まで帰らないよ」というと、本当に夜、家の前で帰りを待っているんですよ。

 

── すごい!まるで出待ちですね。お母さんは一番のファンなんでしょうね。

 

ハリウさん:私にだけではなく、父に対しての愛もすごいです。お父さんがモーニング娘。をテレビで観て笑っただけでヤキモチを焼いて。「ハロプロに電話してやる!」とすごい剣幕で怒ってました(笑)。うちの両親は、お互い初めての交際相手だそうです。

 

── お母さんの愛情深さがネタにもなりそうですね(笑)。ネタと言えば、いろんな方の意見を取り入れていると伺いました。

 

ハリウさん:エゴサーチで見つけた意見も積極的に取り入れています。「誰々に似てる!」と書かれたらすぐやりますよ。もちろん、「これ似てない」とか「こいつ嫌」というものもありますけど、それにはあえて「いいね」をしています。批判的な意見も、見てくれている証拠だと思うんです。何も反応がないことの方が悲しいですね。

 

エゴサーチをすると、「ミュージカル似合いそう!」というようなコメントも結構あるので、それに背中を押されていて。ものまね芸人として新しいレパートリーを探し続けながら、いつかミュージカルにも挑戦してみたいと思っています。

 

PROFILE ハリウリサさん

1993年生まれ、東京都出身のものまね芸人。抜群の歌唱力を活かし、フィリピン人の母との思い出を綴ったオリジナルソング『ヴィルマ』で歌手デビュー。

 

取材・文/内橋明日香 写真提供/ハリウリサ サムネイル撮影/Shoichi Okatake