経営者としての悩み「厳しい意見ほど聞くべき」
── 起業してから挫折を感じたことはありますか。
愛沢さん:ビジネスは順調で、挫折というと私自身のことになるですが、もともとの性格で協調性がないとか、価値観を押しつけてしまうところがあり、それに気づくまでに時間がかかりました。人と一緒に働くという社会人経験がなかったので、自分で頑張って、それに対する評価をされてお給料が上がることが幸せだと思っていたんです。周りの人もみんなそうだと勝手に思い込んでいたのですが、人によって幸せの基準は違います。プレイヤー気質が抜けるまでが大変でした。
── どうやってそのことに気がついたんですか。
愛沢さん:一緒に働く人がどんどん辞めていったんです。「なんで辞めちゃうんだろう」とショックは受けていたのですが、それでも最初は気づかないんですよね。起業して4年が経った頃に、これは私の問題なのかも知れないと思い始めました。過去に一緒に働いてくれたスタッフには謝りたいです。
── 誰か相談できる方はいましたか。
愛沢さん:キャバクラのお客様にどうしたらいいのか相談していました。返ってくる答えは2パターンで、9割以上が「それがえみりちゃんらしいから、わかってくれない方が悪い」というもの。私もそれを言われると嬉しいんですよね。
その一方で、ごく少数ですが「それは自分が悪いでしょ」と言ってくださる方がいて。そういう意見って、自分が悪いとなんとなくわかっているから聞きたくないんです。そこをぐっと堪えて、きちんと指摘してくださる方の意見を意識的に聞くようにしてから、状況が変わっていきました。
「そんなことないよ、あなたは正しいよ」と言ってくれる人より、「頑張っているとは思うけど、結果がすべてだから変えなきゃダメ。そうしないとよくならないよ」と厳しく言ってくださった方の意見が正解でした。もちろん味方してくれる方が嬉しいので、居心地は悪かったですけどね。
── 具体的にはどんなことを変えていったのですか。
愛沢さん:伝えたいことは同じであっても、伝え方をすごく意識するようになりました。今は、ハラスメントの問題もあって、何も言わない選択をする方もいると思いますが、言わないのは簡単です。本当に言わなくてはいけないことをどう伝えるか考えられる人が、人の上に立つ人間だと思っています。
── 経営者として目指す姿はありますか。
愛沢さん:昔は、自分が会社を大きくしたいとか、人に負けたくないというところが大きかったのですが、出産してからその価値観が変わりました。今は、スタッフをはじめ、仕事で関わってくれる人のことを優先して考えています。そのためにも売上を上げて、利益を出すことは大切なのですが、昔とだいぶ考え方は変わったと思います。
PROFILE 愛沢えみりさん
1988年神奈川県横浜市生まれ。(株)VOYAGE代表取締役。元歌舞伎町No.1キャバ嬢、『小悪魔ageha』専属モデル。インフルエンサー歴13年で総フォロワー数は200万人以上。
取材・文/内橋明日香 写真提供/愛沢えみり