ドラマ「GTO」への出演をはじめ、俳優や歌手として活躍した希良梨さんは二十歳頃から拠点を海外に移しました。仕事で多忙だった幼少期の経験から「今は学びたい」と話す現在の暮らしぶりについて伺いました。(全3回中の3回)

ラテンの文化に触れて

── 二十歳頃から海外と日本を行き来する生活をしているそうですが、現在はメキシコにいらっしゃるんですよね。

 

希良梨さん:今年のはじめ頃からメキシコシティで生活しています。今まで行ったことのない、喋ったことがない言葉に触れたくて、ネットで調べものをしていた時に国民性や文化に惹かれたんです。メディアではメキシコに関して、どうしても治安に関する報道が多くて。

 

「他に素晴らしいところが絶対あるのに!」と思いました。直感でここに来ましたけど、それは間違っていなかったと思います。今はここに縁があったんだなと思えています。自分を成長させるために来たのですが、メキシコ料理が美味しくて横にも成長しました(笑)。

 

希良梨さん
メキシコで髪を脱色して金髪になった希良梨さん 提供/The Home Hair re-creative 担当:Nory

── 現在はどんな生活を送っているんですか。

 

希良梨さん:スペイン語の勉強をしているんですが、結構苦戦しています。英語でスペイン語を習うのですが、その意味を頭では日本語で考えていて。長年、台湾で生活していたので、考える際に中国語も入ってしまって、もう頭がゴチャゴチャです。

 

5か国語を話せるロシア人の先生にスペイン語を習っているんですけど、中国語が話せるので英語に詰まると中国語で習っています(笑)。

 

── もはや何語のレッスンかわからなくなりそうです(笑)。語学を学ぶのは好きだと伺いました。

 

希良梨さん:家の大家さんに、英語かスペイン語で話そうと思っていても中国語か日本語が出てくるんです。それくらい言語って体にこびりつくんだと思いますね。語学は若いうちの方が吸収が早いといいますけど、こうして大人になってからも、話さなきゃならない環境に身を置くとここまでなれるんです。学ぶのが好きかどうかにもよりますが、私の場合は言葉に触れるのが好きなので、日本語、英語、中国語ときてスペイン語は4か国語目になります。

 

── メキシコの印象はいかがですか。

 

希良梨さん:みんな優しくて陽気で親日家なんですよ。ラテンの文化なのでクヨクヨせずポジティブなのですが、これはアジアにはない文化なので新鮮で楽しいですね。メキシコの方は人生を楽しむプロという感じがします。基本的なことなんですが、人生は楽しむためにあるというのをここで学びました。ここは階級があって貧富の差も目に見えてわかるので胸を痛めることもあるんですが、どの方も笑顔が素敵なんです。目が合うとパッと笑ってくれるのがいいなと思います。

 

希良梨さん
いよいよ髪をピンクに染めます!笑顔が弾ける希良梨さん 提供/The Home Hair re-creative 担当:Nory

── 親しくしている方はいらっしゃいますか。

 

希良梨さん:大家さんが私の母親くらいの年齢で、心理学者で医者なんです。子どもが3人いて孫もいるビッグママなのですが、街では信頼もされていて人望も厚い方です。人を救おうとしている姿に心を打たれましたし、どこにいても人柄って大切だと感じますね。私のモチベーションをあげてくれる存在で、頼れる方が近くにいてくれてすごくラッキーです。

 

彼女から、心理学の治療法で、金繕い(金継ぎ)という日本の文化から取ったものがあると教えてもらいました。傷跡があっても、よりよい人間になるために生きていくんだよって、それが人生だからって。成功よりも失敗から学ぶことって多いと思うんですが、改めてそうだなと思えています。

海外生活で見出した自分

── 小学4年生から芸能の仕事を始めて、二十歳頃から日本と海外を行き来する生活していますね。

 

希良梨さん:結局原点に戻ると言いますか、小さい頃から仕事をしていたので、今は勉強したいんです。学校に行ってみたいという憧れや、何かを学びたいという意欲はそこから来ているんだと思います。

 

いわゆる学校生活を楽しんで送ってこなかったので、その当時にできなかったことを取り戻している感じがあります。言葉も覚えて、友達を作って話したいという気持ちもそこから来ているんでしょうね。人生を逆に生きているようなところがあるのかもしれません。

 

希良梨さん
歴史的な建物が美しい!メキシコの街並みと希良梨さん

それに、5年前に亡くなった祖母の死も大きかったです。生きている間にもっと一緒の時間を過ごしたかったと後悔しているんです。祖母は私を可愛がってくれて育ての親のような存在だったのですが、仲も良かったのに仕事が忙しくなってからはあまり一緒にいられなかったんです。限りある人生のなかで自分が成長することに執着するのは、祖母の死の影響があると思います。悔いなく生きたいと思いますね。

 

── 芸能界での生活と今の生活で、何が変わりましたか。

 

希良梨さん:40代に突入しましたが、表に出るだけではなくそれ以外の部分も含めて、ひとりの人間として生きていくことが大切だと思っています。自分の人生をどう生きていくかということです。

 

子どもの頃は自分が不幸だと思っていたのですが、それは間違っていて、私はちゃんと家族に愛されていました。その事に気がつくのには、だいぶあと、大人になって世界を見たときだったんです。ストリートチルドレンが物を売って生きているのを見て胸を痛めたこともありました。愛情を持って私を陰で支えてくれる家族と、いつも温かく支えてくれる友人たちに感謝をして生きることが大切だと学びました。

 

希良梨さん
知人に会うために訪れた世界的に有名なLAの創作和食レストランにてサングラス姿がお似合いの希良梨さん

日本で生まれ育った20年と、海外で育ててもらった20年。我ながらあっちこっち忙しい人生だなとは思うんですが、どの場所でも人との出会いは宝物でした。きっと私にしか生きられないような道を歩めていると思っています。人の想いに寄り添って生きていくのがこれからの人生のテーマでもあります。

 

海外で生きるユニークな日本人でありたいなと思いますし、いつか本も書いてみたいですね。こうなりたいと思う理想の姿にいつかなれるように、一歩一歩の積み重ねで、毎日を丁寧に過ごしていけたらと思っています。

 

PROFILE 希良梨さん

1980年東京都生まれ沖縄育ち。子役として芸能活動をスタートさせ、ドラマや映画、バラエティ番組に出演。Kirariとしてアーティスト活動も行う。二十歳頃から拠点を海外に移し、台湾のエンターテイメントの世界でも活躍。独自の感性で今年のはじめよりメキシコにて生活を送る。

 

取材・文/内橋明日香 写真提供/希良梨