娘の未来は「未知数で楽しみ」

── 娘さんとはどんなことをして過ごしていますか。

 

BONNIE PINKさん:子どもと一緒に歌う時間が増えたのが楽しいです。だいたい私の方が先に夕飯を食べ終わってしまうので、娘が食べているのを見ながら目の前で歌うんです。そしたら娘も、「それ私も今歌いたい」と言い出して、ご飯がストップしてしまう。「食べ終わってからね!」と言って一緒に歌うのが楽しくて。私も毎日声は出したほうがいいので発声練習にもなっています。

 

BONNIE PINKさん
雰囲気おしゃれすぎ!スウェーデンでのレコーディング時のワンカット

楽器を教えるのもいいですし、これからもこういう時間があったらいいなと思います。一緒に何かできるという喜びが私に返ってきて、今後の活動の糧になっているので、本当に娘にはパワーをもらっていると感じます。それに、人が育つ過程を見るのも面白いです。

 

娘には夢が無数にあるんです。「全部なれるかもよ!」と応援しています。未来が未知数で楽しみですよね。私は子どもの頃になりたいものをそんなに口にしてこなかったので、全然違うタイプの人間だなと興味深く見ています。今日の時点では、テキスタイルデザイナーになりたいそうです(笑)。

 

──  お子さんらしからぬ回答ですね!?

 

BONNIE PINKさん:娘は絵を描くのが好きで、ドレスの柄なんかも細かく描くので、「お洋服や壁紙の模様や柄を考える人ってテキスタイルデザイナーっていうんだよ」と2、3日前に教えたんです。そしたら、今日「私、夢が変わったの!」と言い出しました。注いだら注いだだけ夢が増えて面白いです。きっと私が言った言葉が「カッコええ」って思ったんでしょうね(笑)。

 

── 母親になって、ご自身で感じる変化はありますか。

 

BONNIE PINKさん:もともと家事は嫌いではなく、なんでもする方だったんですが、夫と私と娘の3人で暮らしているのに、掃除をする人が私しかいなくなって。現状、追いつかなくなってきていますが、家事一つひとつにかける時間が短縮できるようになったと思います。

 

昔だったら作曲期間として1か月もらっていたら、それ以外のことはしたくないというタイプだったんですけど、今はそんなこと言っていられません。「30分あるから、洗濯してしまおう」というように切り替え上手になりました。毎日毎日、育児と家事は発生するので隙間を見つけてするしかないですよね。

 

── 日々のスケジュールはどんな感じですか。

 

BONNIE PINKさん:朝は一番頭が冴えているので5〜6時に起きてメールや書き仕事をさくっと済ませてから娘を起こす日もあります。8時頃に娘を保育園に預けて午前中は家事をできるだけ終わらせて。午後、家にいられる日は歌の練習や作曲をして4時半にお迎えに行っています。

 

その後、娘をみながら夕飯を作って、娘が寝るまでは自分の時間はありません。寝かしたあと、ようやくひと息つけるというルーティンです。でもまた翌朝早く起きなきゃと思うと娘と一緒に寝てしまうこともあります。早寝早起きですし、ご飯も作りたくないとは言っていられないので健康になりますね。

 

圧倒的に自分ひとりの時間は減りました。娘が保育園に行っている間は仕事や自分の時間と見せかけて結構な割合で家事に取られてしまいますし、時間をうまくパズルのようにはめて分刻みで動くしかないんですけどね。

 

家の外で仕事をする際は基本的に娘を職場には連れていきません。ソロアーティストなので、自分がお願いして色々な方に来てもらっていますし、中心で仕切る立場なのに周りに気を遣わせるのもなと思って、仕事は切り離して考えています。

 

── 子育てと仕事の両立がスタートしたなかで、今後のビジョンを教えてください。

 

BONNIE PINKさん:そのとき、そのときでできることを全力でやるしかないと思っています。子どもができると、子どもの将来のことや自立に向かって歩んでいけるようにサポートすることに一番フォーカスしますし、そこ抜きには考えられなくなってきています。

 

どうしても20代、30代のときと比べると仕事の比重は少なくなっていますし、割く時間も減ってはいるのですが、久しぶりにアルバムをリリースして、待っているファンの方が喜んでくださっているのも伝わっています。恩返しの気持ちもこめて、ライブ活動も増やして、リリースも11年も間を空けずに作品を作り続けていきたいと思っています。

 

BONNIE PINKさん

1995年アルバム「BLUE JAM」でデビュー。国内外のミュージシャンと積極的に交流しつつ作品を制作。2006年リリースのシングル「A Perfect Sky」とベスト盤「Every Single Day-Complete BONNIE PINK(1005~2006)-」が大ヒット。その後もオリジナル・アルバムの数多くの楽曲はドラマや映画・CMに起用され、その歌唱力と作詞/作曲センスは幅広い世代から注目を集め続けている。2023年、11年ぶりのアルバム「Infinity」をリリース。

 

取材・文/内橋明日香 写真提供/BONNIE PINK Official