2010年、39歳で学生服リユース店「さくらや」を開業した馬場加奈子さん。今や「さくらや」は全国に事業を拡大、メディアでも活動が取り上げられる日々ですが、今日までの道のりは順風満帆ではありませんでした。困難の局面で発揮された馬場さんの「伝える力」に迫ります。(全4回中の2回)
背中を押してくれた母の言葉
── 馬場さんは制服リユースビジネスの先駆者ですが、起業当初周りの反応はいかがでしたか?
馬場さん:前職の保険会社の法人営業で出会った経営者たちからは、「制服リユースなんてニーズがあるのか?」と反対されました。子どもとの時間を優先するために10~15時の短時間営業にしたことも、「商売にならない」と一蹴されました。あまりにダメ出しばかり喰らうので、「ビジネスとして成り立たたないのかな」と思い、母に相談しましたね。
── なぜ相談相手がお母さまだったのでしょうか?
馬場さん:母は元々保育士でしたが、父が脱サラしてからは、両親2人で中古車販売のお店を営んでいました。母なら、経験をもとに親身に意見してくれると思ったんです。母には、「制服のリユースは、社会に必要なビジネスだ」という想いと、「周りから反対されている」という葛藤をぶつけました。
── 馬場さんの話を聞いて、お母さまは何と?
馬場さん:「やってみたら?」って言われました。すごくシンプルな言葉なんですけど、昔お店を切り盛りしていた母の姿と重なって、私の背中をポンと押してくれました。
39歳のときに自宅で開業しましたが、集まった在庫は50着程度でした。
でも、驚くほどお客さまが来ない。「これは商売にならないな」と感じました。うまくいかない理由を探るなかで「お店として信用を得るには店舗を構えないとダメなんだ」と勝手にイメージしてしまいました。
何とか捻出できる10万円以下の家賃の物件を探したんですが、やっと見つけたのは家賃12万円の物件で。
── 他の物件を探すしかないですね…。
馬場さん:でも、その物件を諦めきれなかったんですよね。
何度も大家さんを訪ねてビジネスへの想いを伝え続けました。
最終的には、家賃12万円を、6.5万円にしてもらえました。「ここで始めるビジネスは、たくさんの子どもたちや親のためになる、社会に求められるものなんです」って伝え続けたら、応えてくださって。本当にありがたかったし、想いを伝える大切さを感じました。
── なぜ断られ続けても、諦めなかったのでしょうか?
馬場さん:「絶対に社会に必要なビジネスだ」という想いがあったからです。あと、断られて諦めない姿勢は、保険会社の営業で身につきました(笑)。