自分の機嫌を取るスイッチ、他人に委ねたくない

── ひきこもる以前は、優秀ゆえに「俺は他とは違う」という優越感があった、と話されていました。そういうご自身のプライドと、どう折り合いをつけたのでしょうか?

 

山田さん:今自分に何のプライドもないかと言われれば、そんなことはないんですけど。ただ、人生にはサイズ感があると思うんです。そんなブカブカのジャケットを着ていてもしゃあないがな、という。

 

山田ルイ53世
「人生、ブカブカのジャケットを着てもしゃあない」と笑う山田さん

20代半ばぐらいまでは、人と比べたり、妬み嫉みをガソリンにしたりして「俺も頑張らな」という気持ちがエネルギーになると思うんです。でも、30代、40代になってくると、そういうガソリンで人生のエンジンを動かしてしまうと、焦げつくというかね。自分に合ってない気がするんですよね。

 

他人と比べるより、自分に集中して、自分ごととして頑張る。自分の機嫌を取るスイッチをまわりに置きたくないんです。誰かと比べるということは、自分のなか以外に、機嫌が良い悪いのスイッチがあるってことやから。

 

自分の機嫌のスイッチを、手の届く範囲に置いておきたいなというのがすごくありますね。だから、ちゃんと自分を諦めてあげられるようにはなったと思います。

 

PROFILE 山田ルイ53世さん

1975年生まれ。六甲学院中学に進学後、6年間のひきこもり生活に。大検(当時)を経て愛媛大学に入学後、中退。99年に「髭男爵」を結成。2008年「貴族のお漫才」でブレイク。エッセイやラジオなど多方面で活躍。

 

取材・文/市岡ひかり 撮影/植田真紗美