元フィギュアスケート選手の中野友加里さん。2010年フジテレビに入社し、2015年に結婚、2人の子どもに恵まれました。大好きだった仕事と子育ての両立。中野さんがとった選択とは(全5回中の3回)。
「そこに行き着くまで、私は自信がなかった」
── 2015年に結婚されて、2人のお子さんを出産。仕事と子育てをしながら、2019年にフジテレビを退職されましたが、もともとその予定だったのでしょうか?
中野さん:退職するまで、すごく悩みました。子どものころから憧れていたテレビ局で働かせてもらって。しかも、お仕事がどんどん好きになって。第一子が生まれる前から保育園を決めて、産休後も、すぐに働けるように準備していたくらいだったんです。
── いざ、復帰されていかがでしたか?
中野さん:子どもって、急に熱を出すんですよね…。次から次へと病気にかかり。私も免疫力があるほうではないので、一緒にうつったりして。
── 予定通りにいかないことも多そうですね。
中野さん:子どもの体調不良で、毎回誰かに預けてばかりだったし、会社にも急な休みをもらったり、すごく周りに迷惑かけてるな…って感じはしていて。先輩たちは「大丈夫だよ」って見守ってくれるような雰囲気もあったんです。でも、2人目の妊娠がわかったときに、また会社に迷惑をかけてしまうかもしれない…って、何度も頭をよぎってしまって。
それに、第一子を出産して、復帰後は時短勤務にしたんです。でも、常勤のころに比べて時間の制限もあるし、どうしても任せてもらえる仕事が減ってしまう。実際、以前のように決められた時間までに仕事が終わらないこともありました。
あと、フジテレビの社員として在籍している間は、他からお仕事の依頼がきても、いろいろなところに承認をしてもらわないといけなかったんです。いくつかの部署を通していたので、もっと幅広くお仕事を引き受けたいなという気持ちもありましたね。
── いろいろ制限がかかってしまうと。
中野さん:会社に行くと、働いているときはすごく楽しいんです。仕事はもちろん、先輩たちと何気ない会話で盛り上がったり、愚痴とかも聞いてもらったりと、楽しい思い出ばかりだったんです。
でも、やっぱり出産前と同じようには働くのは厳しそう。子どもが大きくなってきたら、また違うかもしれないんですけど、そこに行き着くまで、私は自信がなかったですね。
それに、子どもってあっという間に成長してしまうので、一緒に住んでいても、知らない間にどんどん成長していく気がします。その過程も見ていたくて…。子どもたちに寄り添って目をかけながら、やっていきたいって思ったんですよね。
退職を決めた、あの言葉
── 退職は、いつくらいに考えたのでしょうか?
中野さん:2人目の産休に入って、半年くらい経ったときです。仕事復帰について夫と相談し、「育児と好きなスケートの仕事に専念したらどうか」と迷っている私の背中を押してくれたので、決心がつきました。
結局、第二子の育休中に、そのまま復帰しないで退職しました。
── 退職したことは、どう感じますか?
中野さん:働いている友達もたくさんいるので、羨ましいなって思うことは、もちろんあります。ただ、今はまだ子どもが4歳と6歳。子どもたちが、1人で学校に行って、1人でおやつを食べて、習い事に行く、みたいなところまでは見守りたいですね。今は、こういった取材とか、フィギュアスケートの審判とか、単発で受けさせてもらってる感じです。
── 将来的にはまたお仕事をしたいですか?
中野さん:仕事は好きですし、ぜひやりたいです。ただ、あと4、5年はかかるんじゃないでしょうか。それまでは、今できることを楽しみながらやっていく感じです。
PROFILE 中野友加里さん
1985年生まれ。愛知県出身。3歳でフィギュアスケートと出会い、24歳で現役引退。2010年に株式会社フジテレビジョンに入社。2015年に結婚、現在は二児の母。2019年3月でフジテレビを退社し、メディアでスポーツコメンテーター、講演活動等を行っている。
取材・文/松永怜 撮影/阿部章仁