元フィギュアスケート選手の中野友加里さん。2010年にフジテレビに入社し、2012年から『すぽると!』のアシスタントディレクターとして活躍しました。しかし、生放送中には予想外のニュースも飛び込んできて──(全5回中の2回)。

「その1秒ください!」という戦い

── 中野さんは、2010年にフジテレビに入社。2012年に映画事業局からスポーツ局に異動し、『すぽると!』の担当になったそうですが、いかがでしたか?

 

中野さん:深夜の生放送だったので、体力がきつかったですね。帰宅して、寝るのが朝の4時とか5時あたり。翌日の12時には出勤していたので、帰ったらすぐ寝る生活です。

 

あと、上司から「いろいろな社員を見てきたけど、こんなに気が強い人は初めてだ…!」って言われました(笑)。

  

フジテレビ時代。2014年ソチ五輪にディレクターとして参加。取材準備の間に笑顔で一枚

── なぜ、そう言われたと思いますか…?

 

中野さん:時間内にニュースを届けるために、秒単位で尺を計算してるんです。1秒でも貴重なので、たとえば担当のニュースを伝えたかったら「その1秒、こっちにください!」ってプログラムディレクターやディレクターと交渉する強さがあったからだと思います。

 

あと、2年目くらいになると仕事も慣れてきますよね。やることは山積みだし、自分でもどんどん効率良く進めたいとか、この方法がいいなって案を出していくんです。でも、人それぞれのこだわりとか、やり方、経験もありますよね。

 

いろいろと分かってくるとプロデューサーやディレクターと、対等に話しているような感じというか。多分、圧をかけているつもりはなくても、かかっていたんじゃないかと…。映画事業局のころも、私のように文句を言う人もいなかったと思います。

 

── 熱があるからこそのぶつかり合いと言いますか。

 

中野さん:熱かったですね。でも、1日1日、必ずその日で終わるので、終わりが見えないわけではないんです。毎日がゴールを目指して進んでいけばいい感じではありました。

滑りながら、笑顔を作りながら「忙しかった」

秒単位で計算していたと語る中野さん

── スケートをやっていたからこそ、いかせたことはありますか?

 

中野さん:生放送なので、途中でどんなニュースが飛び込んでくるかわからないんです。Aのパターンで番組の構成を進めていても、放送中に新しいニュースが入ったら急きょBのパターンに変更。さらに新しい情報が飛び込んできたらCパターンに。PD(プログラムディレクター)の采配で、急いで尺を計算して調整していくんですが、そこはスケートと似ているかもしれないですね。

 

スケートも、競技中にミスが起きてしまったときは、時間内にカバーしないといけない。AパターンからBパターン。そこでも修正できなかったらCパターン。どんどん頭を切り替えていかないといけないんです。

 

── あんなにたくさんの観客がいるなかで、ものすごい速さで滑りながら計算されていたとは…!

 

中野さん:滑りながら、笑顔作りながら、演じながら…忙しいんです。スケーターって(笑)。

 

── しかも、かなりのプレッシャーがあるなかで。

 

中野さん:大忙しなんですよ。

 

── 競技中に急遽プログラムを切り替えるのは、慣れなどもあるのでしょうか?

 

中野さん:日々の訓練で、慣れておかないといけない。競技中にミスや取りこぼしがあったものは、すぐに挽回する練習はしていました。私の場合は滑りながら、今何点失ってしまったから、どこかで何点補充しなきゃいけないって、頭の中で計算するタイプ。人によっては、自分のなかに染み込んだ感覚でやる人もいますし、いろいろですね。

 

── そういった経験を経て、ニュースの現場でもイレギュラーなことに対して落ち着いて対応できましたか?

 

中野さん:本音は落ち着いてないです。ただ、私がパニクってたら、演者さんもアナウンサーもパニックを起こしてしまうので、なるべく冷静さは保つようにしていましたね。

中野がいると、尺を押しちゃいけない!

ソチ五輪の取材に備える中野さん

── 尺は決まっているし、その日に伝えるニュースもありますし。

 

中野さん:アナウンサーから、「中野がスタジオにいるときに時間が押したら、すごい圧がかかる…!」って言われたことはあります(笑)。「中野がいると、押しちゃいけないって思う」って。おまけに、私は声もすごく通る方なので、「中野の声が聞こえるとシャキッとしなきゃいけない気分になる」って他のスタッフから言われたこともあります。それは褒め言葉だと思うので、とても嬉しかったですね。

 

── 中野さんの存在感がいい流れに。

 

中野さん:テロップ出しも、誰が一番向いているかって話になったときに「やっぱり中野だよ」って言ってくれたスタッフが何人かいたので、それもありがたかったです。

 

── すぐに指示を出すとか、頭を切り替えるコツとかあるのですか?

 

中野さん:たくさんの目があるかどうか。周りを見て、確認と瞬時に判断ができるか、でしょうか。今、しゃべっているタイミングで適切なテロップを出さなきゃとかいけない。ニュースを切り替えなきゃいけない。間違ってないかどうか、瞬時の判断が大切で、いろいろなところに意識が向けられるかだと思います。

 

結果的にフィギュアスケートしかり、今までの一つひとつの積み重ねのおかげなのかもしれません。

 

PROFILE 中野友加里さん

1985年生まれ。愛知県出身。3歳でフィギュアスケートと出会い、24歳で現役引退。2010年に株式会社フジテレビジョンに入社。2015年に結婚、現在は二児の母。2019年3月でフジテレビを退社し、メディアでスポーツコメンテーター、講演活動等を行っている。

 

取材・文/松永怜 撮影/阿部章仁