いま気づかなかったら定年離婚になるところだった

どんなに忙しくても、ふたりで話す時間だけはとろうと彼は妻と約束しました。これからは夫婦関係が少し変わっていきそうな気がするとか。

 

「僕もそろそろ社内での立場が見えてきましたからね、もうそれほど出世することもないだろうし、下手したら数年のうちに出向などがあるかもしれない。

 

今回の妻の母親のこともそうだけど、これからは僕も妻も、心がへし折れるようなことが増えていくんだと思うんです」

 

夫婦は助け合いながら残りの人生を歩んでいくしかないのだから、よりお互いを理解する努力をしなければいけないとキヨシさんはまじめな表情で言います。

 

「いまの段階で気づけてよかったと思っています。妻と心がスレ違ったまま老後を迎えてしまったら、おそらく高齢離婚になっていましたよ…。それを考えると、怖い道を歩いてきたなあと思います」

 

必要なのは相手への想像力と思いやり。そしてお互いに素直に“自分の気持ちを言葉にすること”と、キヨシさんはやっと気がついたと苦笑しました。

 

文/亀山早苗 イラスト/前山三都里