視覚障がいのある妻と聴覚障がいのある夫の高田夫妻が見せる爽やかな笑顔

パラアスリートで走り幅跳びの日本記録保持者の高田千明さん(38歳)。デフリンピック陸上競技選手で生まれつき耳が聴こえない高田裕士さん。おふたりの出会いから結婚、子育ての日々を伺いました。夫妻はどのようにコミュニケーションをとって、関係を深めてきたのでしょうか(全3回中の2回)。

「外出も外食もラク!」聴覚障がいの彼となら補い合える

盲目の陸上選手・高田千明さんが、夫である裕士さんと出会ったのは、手話がきっかけでした。

 

「私は目が見えないので、音を頼りに生活をしています。社会人になってから、陸上競技会などで耳が聞こえない人たちが楽しそうにしている雰囲気を感じることがありました。

 

自分とは違って、“耳が聞こえないけれど目が見える人”はどんな世界で生きているんだろう、と興味を抱きました。

 

“手話を習いたい”と周囲に言ったところ、紹介されたのが現在の夫である裕士でした。

 

2006年、私が視覚障がい者代表で出場した障がい者国体に、夫は聴覚障がい代表で出場していました」

 

いつも笑顔で明るい高田千明さんとご家族「家族とは固い絆で結ばれています」

高田さんが驚いたのは、裕士さんが先天性の聴覚障がいを持っているにも関わらず、発語がきれいだったこと。

 

一般的に、耳が聞こえにくいと発声が苦手な場合が多いといわれています。裕士さんは、母親に子どものころからスパルタ教育を受け、はっきりと声を出し、話ができました。

 

「裕士の声は聞き取りやすいので、私は彼の説明を聞き、手の形を触りながら手話を教えてもらいました。

 

現在は私が裕士の言葉を聞き、裕士は私の唇の動きと手話を読む形でコミュニケーションをとっています」

 

裕士さんと一緒にいると、おたがいを補い合える居心地のよさを感じたそう。外を歩いているとき、前から来る車を裕士さんが目で確認。後ろからの車は千明さんが音で気づきます。

 

外食をする場合も裕士さんがお店を探してメニューを読み上げてくれます。店員に注文をするのは、耳が聞こえる千明さんです。ごく自然な流れで、ふたりの交際は始まりました。