子どもを車内に残さないよう、親が用事を済ませている間に一時的に預かる「託児バス」(撮影/大竹央祐)

引退したバスをサウナに改造した「サバス」を企画したベンチャー企業「リバース」代表の松原安理佐さん(29)。元々は地元・兵庫県姫路市のバス会社「神姫バス」で働いていましたが、サバスを実現するために私費を投じて、社員が出向の形で会社を設立する「出向起業」に踏み切りました。職場を離れて起業しようと思った理由や現在構想を進める「託児バス」について話を聞きました。

「バスには興味がなかった」のにバス会社に新卒入社

── そもそも就職活動でバス会社に興味を持ったのはどんな理由でしょうか?

 

松原さん:
元々、就活の軸としては業種を問わず、企画や新規事業の立ち上げができる会社を探していたんです。たまたま地元の会社説明会に行ってみると、「神姫バス」がバス事業だけでなく、不動産や農業、飲食などいろいろな事業を展開していることを知りました。

 

ただ正直、バスにはまったく興味がなかったので、配属先も「バス事業部以外にしてください」ってずっと言っていたんです(笑)。バスが好きで入社した方も多いので「なんでバス会社?」という反応でした。

 

── バス事業以外となると、入社後はどんな仕事をしていたのでしょう?

 

松原さん:
最初の3年間は不動産事業部にいましたが、入社4年目に希望していた事業戦略部に配置されました。ただ、自分たちで事業を作るというよりは、社員から新規事業を生み出しやすい制度設計や研修を行う運営ポジションだったので。自分で新規事業を立ち上げるという目標とはまた別な角度の仕事をしていました。

 

サバスの停車順表示は「サウナ→水風呂→外気浴→ととのう」とユーモアに富んでいる

── そこからなぜ、みずからサウナバスを企画することに…?

 

松原さん:
新規事業を募集するコンペを運営するも、手を挙げてくれる社員が少なくて。応募がまったくなくなったタイミングで「誰もやらないなら私がやってみよう」と考え始めました。

 

ただ、ちょうど新型コロナが流行した時期だったので、神姫バスの売り上げが下がり、新規事業のハードルも上がってしまって…。そこで、いちから新しいものを始めるのではなく「会社で有効活用できるものを使おう」と思い、廃バスの利活用に着目しました。