育児中は「無理しすぎないことが一番大事」
── 育児に仕事にと頑張っている人に伝えたいことはありますか?
田辺さん:
とにかく無理をしすぎないで欲しいですね…。なんか上から目線になっちゃって心苦しいですが(笑)。
育児中は無理してないつもりでも気づかないうちに頑張りすぎてることもありますよね。そんなとき、SNSだけの繋がりでも誰かからひと言もらえたりしただけで、すごく心が軽くなったりすることあると思うんです。
だから、辛かったり、楽しいことを気軽にアウトプットしてみてもいいんじゃないかな。誰かが共感してくれることで、気持ちが軽くなることって絶対あるから。
── 確かに、育児中はSNSのつながりに元気づけられることもありますね。
田辺さん:
育児ってたいてい、自分のなかだけで完結してしまう世界じゃないですか。だから下手をすると「世界で自分だけがいちばん辛い」みたいな気持ちなってしまう。
だからこそ、読んで気持ちが楽になるような漫画やイラストを描いていきたいって思っています。社会問題や社会情勢に切り込んだ漫画も大事だけれど、心を無にして、気楽に読みたいときの漫画っていうのも必要だと思うんですよね。
自分の作品を家族にとっての「嫌な思い出」にはしたくない
── 育児漫画に自分の子どもを出すことに対しての批判もありますが、どう思われますか。
田辺さん:
私自身それはすごく気をつけていて、子どもが大きくなったときにマイナスな要素になりかねないことは描かないようにしています。
例えば、育児漫画のテーマとして「トイレトレーニング」ってよくあると思います。もちろん参考になる方もいると思うのですが、すごくプライベートなことなので…どこまで切り込むのかってすごく難しい。自分が描くもので、子どもの成長に悪影響が出るようなことはあってはならないと思うので、私はトイレトレーニングについて描くのは見送りました。
親の人格と子どもの人格は別なので、子どもが大きくなったときに描かれたものを見て嫌な気持ちにだけはならないように気をつけたいです。
── 家族の日常を描かれることについて、旦那さんの反応はどうですか?
田辺さん:
SNSに育児漫画を出す以前から商業誌で描いていたので、だいぶ前に「あなたが漫画になるってどう思う?」って聞いたことがあったんです。そうしたら「面白く書いてくれたらそれでいい」って言ってくれて。それでも細心の注意は払っていますが、基本的に信頼してくれているのは、とてもありがたいですね。
PROFILE 田辺ヒカリさん
漫画家。『ひとりごはん』(少年画法社)などのアンソロジー漫画雑誌で猫漫画やグルメ漫画などを連載。2017年12月女児を出産。Twitter、Instagramでも育児漫画を配信中。
取材・文/池守りぜね 画像提供/田辺ヒカリ