マーケッターの極意は人たらしに尽きる
── 本のタイトルにもなっている「まわりを巻き込む力」は、マーケティングでは重要な能力だと思います。小林さんは、特に意識していることなどはありますか?
小林さん:
たとえば新商品を作るのであれば、この商品が出ることで世の中がこんなふうに変わる、とゴールに到達したときのイメージを周囲に伝えるようにしています。世の中がどう良くなるのかがはっきり伝わると、周囲も力を出してくれますから。
リスクばかりを列挙して「自分のせいじゃない、できない」と言う人もいないわけではないですが、そこは、マーケッターの腕の見せどころなんです。
マーケッターは良い意味で人たらしでないといけません。人たらしで周りを巻き込みます。そのためにも自分のなかで成功したときのイメージをしっかり持つようにします。
── マーケッターは人たらしですか。
小林さん:
ええ、生まれていない商品をみんなに信じこませて全力を出させる。「このマーケッターが言うなら面白いかもしれない」と思わせる力が大事です。
そのためには、ひとつはストーリー、物語を語る力が必要です。そしてもうひとつ大事なことは、小さい約束を守れることです。
締め切り、ルール、時間を守るなど、日頃の信頼ができていない人の企画にはのってくれません。普段からちゃんとしているからこそ、周囲は企画に賛同してくれるわけです。
マーケッターはひとりでは何もできません。パッケージを作ることも、広報することも、売ることも、製造設備の設計もできません。その道のプロに全力を出してもらわないといけないので、本当に人たらしである必要があります。
また、私の場合は当時のメンバーにも恵まれました。マーケッター、研究所、製造部、製造ラインの技術開発部の4人がタッグを組んで商品開発をしましたが、メンバーに恵まれた面も大きかったです。
マーケティングの仕事はやってみたら、こんなにしんどいのかと思うけれど、上手くいったときの未来図を持っていれば頑張れます。自分の企画した商品がどうなったらいいかビジョンを明確にして、誰に、どんな価値を提供するのか、それはなぜかを決めれば迷うことがなくなります。
── 今後の展望はありますか。
小林さん:
宅飲みは明日への活力だと考えています。そのため、毎日食べても身体への負担がなく、安心して宅飲みを楽しめるスナックを作りたいというのが今後の目標です。そういった狙いから、今年は「糖質オフ」
取材・文/天野佳代子 写真提供/江崎グリコ