── この写真をきっかけに、「立ち猫(R)」の写真を撮り始めたのですね。
山本さん:
そうなんです。Instagramに「立ち猫(R)」の写真を投稿したら、写真を見て「励まされます」とか「癒やされます」というお声をたくさんいただいて。
たしかに、「立ち上がる」という行為はとてもポジティブで元気パワーを秘めています。私もその写真を撮った瞬間も、撮った後も、その猫ちゃんから元気をたくさんもらえた気がします。
仕事を辞めた3日後に、写真集出版の話をいただいたときはびっくりしました。きっとあのときに「立ち猫(R)」の写真を撮らせてくれた猫ちゃんが導いてくれたんでしょうね。
──「立ち猫(R)」は海外でも紹介されたそうですね。
山本さん:
イギリスの新聞『タイムズ』のクライアントの方からInstagramに英語でメッセージが届いて、慌てて友人に訳してもらいました。でも、いまだに実感がなくて自分のこととは思えなくて。『タイムズ』に載った3匹の猫ちゃんたちは、僕を置いて海の向こうへ旅立っていってしまったんだなぁと思っています(笑)。
僕自身は英語もできないし、もともと人前で話すのも苦手です。
そんな僕が海外のメディアに掲載されたり、大勢の人の前に出てトークショーをさせていただいているのは、猫ちゃんたちのおかげでしかありません。猫ちゃんたちが「人生は1回しかないんだから、挑戦してみろ」と背中を押してくれているんだと思います。
── Instagramの写真に添えられている短い言葉も心にしみますね。
山本さん:
それも猫ちゃんのおかげです。写真を見ていると自然に言葉が浮かんでくるんですよ。
猫ちゃんが隣の猫ちゃんに手を置いている写真なんて、「大丈夫、気にすることないよ」と言っているようにしか見えないですよね(笑)。
「どんなときでもあなたの味方だよ」とか、「あなたならできるよ」とか、自分が友達に言われて嬉しかったことを猫ちゃんの言葉として発信することもあります。
── 初対面の猫と仲良くなる秘訣はありますか。
山本さん:
視線を低くして、やわらかい声で話しかけることでしょうか。「暑いよねぇ」とか「どうしたん?」とか。「みゃーん」と猫語で話しかけることもあります(笑)。
猫ちゃんって正直だから、興味がないときは絶対に近づいてこないです。
「しょうがないなぁ」という感じで近づいてきてくれた猫ちゃんとは、頭をごっつんこしたり、マッサージをしてあげたり。僕は「ネコミュニケーション」と呼んでいます。
近所に住んでいる猫ちゃんはもちろん、瀬戸内海の島やタイにも好きな猫ちゃんがたくさんいて、定期的に会いに行っています。
これまでに何千匹の猫にマッサージをさせてもらってきたから、ツボがわかるんです。顔なじみの近所の猫ちゃんたちは僕のことを「マッサージの人」だと思っているから(笑)、近づいてきて、ごろんと横になる。途中でマッサージをやめると怒られて、この間なんて足で顔を蹴られました。「さすがにそれはやめて」って言いましたよ(笑)。