「脅かさない」ために心がけていること

──「脅かさない」ために、心がけていることはありますか。

 

こど看さん:
子どもの話を受け止めることです。

 

子どもはあえて大人が困ることを言い、試すことがあります。無理難題を言って「どうせあなたは反対するんでしょ」と投げやりな態度をとることも。だからまずは反発しないようにしています。

 

暴言があれば「そんなことを言ったら退院できないよ」ではなくて「そういうことを言いたくなってるんだね」と相手の今を受け入れる声がけをします。

 

声がけだけではなく、その子を受容している姿勢を、態度や行動で示すことも大切です。

大人の葛藤は子どもに伝わっている

── 子どもの行動を正したいときもありますよね。その場合は、どうしていますか。

 

こど看さん:
相手の行動を変えることは本当に難しいのですが、そのときの気持ちをそのまま伝えるようにしています。 

 

たとえば、食事を全然とってくれないとき。「ごはん食べないないなら、おやつなしだよ」などと言いがちですが、グッと気持ちを切り替えて、「ごはん食べてないんだね。今日のおやつ楽しみにしてたよね、このままだと食べられないかなぁ。ちょっとどうしようと思っているんだよね」といった具合です。

 

── それだけで子どもは、ごはんを食べてくれるようになりますか?

 

こど看さん:
いや、食べてくれないことのほうが多いです。でも無駄ではなくて「明日、また頑張ろうと思ったら協力するからね」と伝え、次につなげるようにしています。

 

子どもの精神科看護師さんのTwitterより

自分に関わろうとしている大人の葛藤は、子どもにも伝わっています。積み重ねによって「あの人、悩みながらも自分と関わろうとしてくれたんだ」と思ってくれているはず。すぐに変化はないかもしれませんが、続けていくことに意味があります。

 

子どもとの関わりには長期的な目線が必要。僕がこの仕事を通じて学んだことです。

取材・文/夏野久万