子どもと関わるときに意識していることを「お寿司最高かよ」と表現したツイートがバズり、3.2万リツイート、18.5万いいねの大反響を呼んだ、子どもの精神科看護師さん(以下、こど看さん)。

 

「お寿司最高かよ」誕生の経緯や子どもと接するとき大切にしていることを伺いました。

 

子どもの精神科看護師さんのTwitterより

「お寿司最高かよ」に込めた思い

── 現在子どもの精神病院で看護師として働いているこど看さん。子どもと関わるときに意識している9つのことを「お寿司最高かよ」と表現したツイートは大きな反響を呼びました。内容を教えてください。

 

こど看さん:
具体的には、「お=脅かさない」「す=すぐに助言しない」「し=叱責しない」「さ=最後まで話を聞く」「い=(子どもの)意向を無視しない」「こ=子どもが使う言葉を使う」「う=疑わずに一旦信じる」「か=感情を否定しない」「よ=余計な一言を言わない」の9つです。

 

子どもの精神科看護師さんのTwitterより

── どのようにして「お寿司最高かよ」に落とし込んだのでしょう。

 

こど看さん:
自分はどんなことを意識して子どもに接しているか考えたときに、「これをしよう」ではなく、「これはしないぞ」を大事にしていると感じたんです。それをまとめてツイートできたらと思い、マインドマップに書き出していきました。

 

いくつか浮かんだなかから「頭文字の順番を変えたらどうなんだろう」とやってみたら、「お寿司最高かよ」ができたんです。

 

軽い気持ちで投稿したら、もう一生ないんじゃないかっていうぐらい反応をいただいて驚いています。

 

── 確かにこれができたら間違いないですが、実際は難しいですよね…。

 

こど看さん:
そうなんです。今までの経験、保護者からの言葉などを受けて「これができたら、間違いないよね」でも「なかなか難しいよね」というものを入れています。

 

これが常に完璧にできる人は少ない。だからこそ「子どもと丁寧に関わる」ことを意識するようにしています。自戒のための「お寿司最高かよ」ですが、みなさんが子どもと関わる際の手助けになれば嬉しいです。

いちばん大切なのは「脅かさない」

──「お寿司最高かよ」のなかで、しいていちばん大切なものをあげるとしたらどれになりますか。

 

こど看さん:
もちろんすべて大切ですが、僕が特に意識しているのは「脅かさない」ですね。

 

大人は、いつでも子どもを「脅かせる存在」で、無意識のうちに脅かしていることが多いんです。「それをしたら、あれができなくなるよ」などは典型です。

 

── 思い当たります!「お菓子食べたら、ご飯食べられなくなるよ」「勉強しなかったら、 進学できないよ」など…。

 

こど看さん:
仕事柄、不安を抱えた子どもに多く接しています。その際「僕はいっさい君を脅かさないよ」という雰囲気を、とにかく出すようにしています。

 

脅かされないとわかれば、子どもは安心して感情を出せるし、話せるし、眠れる。それは治療だけでなく、いろいろなところにつながっていくんです。

 

── そもそも今、働いている精神病棟の子どもたちは、どんな理由で入院しているのでしょうか?

 

こど看さん:
子どもたちが精神病棟に入院する理由は、大きくわけて3つあります。

 

1つ目は、家族の養育機能が破綻している場合。適切な食事や教育が与えられない家庭にいる子にとって、その家庭にいることはいい状態ではない。そういう子どもが入院する場合もあります。

 

2つ目は精神症状が悪化した場合。 たとえば統合失調症の子に幻覚や妄想が現れると、その子はそれらを打ち消けそうと暴言を吐いたり、壁を殴ったり、ときには一切食事をとらなくなるなど、命に関わる行動が増えたりします。そうなると自宅で見るのは難しいので、入院します。

 

3つ目は精神疾患は認められないものの問題行動が多い場合。精神症状の悪化と同じく、一度入院して様子を見ましょうとなります。

 

── 子どもの精神病院は、子どもを支える役割を担っていると感じます。

 

こど看さん:
精神科に通っているというと、その子の心に問題があるという見方をされがちですが、違います。精神科がみるのは脳の器質、脳の疾患です。もちろん親の育て方が悪いなどということもありません。

 

診断名は、現状や生育歴などを丁寧に聴取し、総合的に判断して出されますが、あくまで仮のものであるということも知ってほしいです。子どもは昨日できなかったことが、今日できるようになることもあり、この瞬間も育っているわけですから。

 

子どもの精神科看護師さんのTwitterより

── 成長の途上だからこそ、子どもの診断名は確定的なものではないんですね。

 

こど看さん:
その通りです。こうした話の認知度はまだ低く、当事者は大きな不安を抱えています。だから僕は、「脅かさない」をとても大切にしています。