「家庭での居場所を取り戻さないと」
── 情報の共有と属人化の解消、また長期休暇の推奨を進めて、社内に何か変化はありましたか?
石井さん:
ベテラン社員になるほど有給休暇を取って仕事を休む文化がなかったようですが、少しずつ休みやすい風土になってきているのを感じます。先日は、5日連続で休みを取った社員から、「働き始めてこんなに休んだのは初めてです」といったことを言われました。「気持ちに余裕をもって家族との時間を過ごせました」といった声もありました。
また、たとえば石井食品は年末になるとおせちの製造で繁忙期に入りますが、近年はクリスマスシーズンでもだいぶ休めるようになったと思います。
「初めてクリスマスを家族と過ごしました」と話してくれた社員もいますね。その社員は「これまでは肝心なイベントに家にいなくて自分の居場所がなかったから、取り戻さないと」と半分笑い話にしていました。僕にとっては衝撃的な話でしたが、家族との時間をそれまで以上にもてるような改善はもっと進められるかもしれません。
また、長期休暇の推奨については、チームメンバーたちのスキルアップを促すチャンスにもなっています。特に、若手社員は自律的にスキルを取りにいっていると感じます。
1人で悩んでいたことを2人で分け合う仕組みづくり
── 今、そのほかに注力している取り組みはありますか?
石井さん:
新しい取り組みは社長就任後からいろいろ進めていますが、そのなかでも注力しているのは、チーム力を上げるための「ペアワーク」です。
当然、業務の内容によってペアが可能かどうか、また分担内容など課題はありますが、1日のうち何時間ほどペアで作業すると効率的なのか、各部署でいろいろトライしながら事例を蓄積しています。
ペアを組むことで、1人で悩んでいたことも2人で考えることができるのでアイデアが出やすくなるし、誰かが休んだときにもう1人がカバーできます。効率の面でどれだけ実績を出せるか、各部署でまず現状を把握して課題を洗い出していくまでが今年のひとつのチャレンジです。現在、勤務体制はオフィス勤務とリモートワークのハイブリッドですが、オンラインでも可能になるように業務体制を整えているところです。
PROFILE 石井智康さん
石井食品株式会社 代表取締役社長執行役員。1981年生まれ。2006年6月にアクセンチュア・テクノロジー・ソリューションズ(現アクセンチュア) に入社。2014年よりフリーランスとして、アジャイル型受託開発を実践し、ベンチャー企業を中心に新規事業のソフトウェア開発及びチームづくりを行う。2017年、祖父の創立した石井食品株式会社に参画。2018年6月、代表取締役社長執行役員に就任。地域と旬をテーマに農家と連携した食品づくりを進めている。
取材・文/高梨真紀 写真提供/石井食品株式会社