駐在先のエジプトの郊外では今でも馬が荷物を運ぶのに活躍している

現在も不安定な世界情勢。戦争までいかなくとも、海外生活では日本であまり起きないトラブルに巻き込まれることも。海外駐在経験を持つ伊藤美穂さん(仮名・53歳)は現地で暴動に遭遇しかけた経験もあるそう。一方で、文化の異なる国での生活では楽しみも多かったと語ります。

雇ったメイドとの関係性に悩んだ経験も…

これまで駐在地としてインドネシア、ケニア、エジプトなどで暮らした経験を持つ伊藤さん。はじめて駐在生活を経験したのは1994年のこと。赴任先はインドネシアでした。

 

「交際時から夫は海外赴任の多い仕事だと理解していました。でも、結婚当初は私も働いていたため、同行は考えていませんでした。単身赴任してもらうつもりで、夫からも了解を得ていました。

 

でも、考え方が変わったのは妊娠してから。そのとき夫はインドネシアに駐在中で、私が住んでいたのは日本。別居状態で子育てをするのはどうなんだろう?と疑問がわいてきました。

 

夫にも子どもの成長をそばで見てもらいたいし、夫婦で子育てしたい気持ちが芽生えてきて。そこで、出産後、長女が生後1か月になったタイミングで、駐在先のインドネシアで暮らすことにしたのです」

 

日本を離れたことのなかった伊藤さんにとって、異国での生活はわからないことだらけでした。

 

とくに、日本ではごく普通の生活を送っていた伊藤さんは、「はじめての海外の生活はどんな感じだろう」ととまどいが大きかったそう。

 

「当時のインドネシアは、ものすごいお金持ちか、生活に困っている人かの両極端な人しかいない印象でした。日本のような一般的な庶民がほとんどいないのではないかとさえ思えました。

 

そのなかで駐在員はメイドさんを雇うのが当たり前。それになかなか慣れませんでした。

 

家事は全部、自分でするのが当然だったから、メイドさんにはどう接していいのかわかりませんでした。

 

最初は、何かをお願いするのは申し訳なくて、お客さん扱いしていました。家にずっと家族以外の人がいることにも慣れず、気疲れしたことも…」

 

メイドとの関係や距離感に悩んでいたときに、助けになったのは夫のひと言でした。

 

「“会社の上司と部下だと思ったら気が楽になるよ”と言われ、とても腑に落ちました。そこからは、私は指示をする立場、メイドさんは仕事を行う立場、と自分のなかで役割分担が明確になりました」