世界的有名デザイナーの言葉が今でも励みに
── 忙しくなって、働き方は変わりましたか?
仙田さん:
想像以上に変わりました。働く前は「子どもとの時間を大切にしたい」と思っていたのに、忙しくなったら子どもと遊ぶ時間が全然取れなくて「あれ?こんなはずじゃなかったぞ」と何度も悩みましたね。
一方で、「ルカコ」を多くの方に知ってもらいたくて、いくつかのビジネスコンテストに出場もしていました。吉本興業と大阪市が主催した「ツッコまれピッチ!2015」もそのひとつです。抱っこ紐収納カバーの話では勝てないと思い、仕事の話は最初だけに。あとは前日に調べた審査員の方が興味のある話や審査員の方々のプライベートに突っ込みまくり、優勝しました(笑)。
そんな経験をするなかで、テレビに出させていただいたり、豊中市の道徳の教科書の別冊に掲載いただいたりしたので、徐々に名前が知られるようになりました。しかし、子どもは一般的なお母さんのイメージと違う母親に違和感があったのかもしれません。度々「働き方」について悩み、立ち止まりながらやってきた感じです。
── 子育てと仕事の両立で悩んでいるお母さんは多いと思います。
仙田さん:
そうですね。スタッフを募集した時に短時間勤務募集で70名の応募があったことや、店舗でお客さんと交流するなかで私もそう感じています。
でも、実際は、「働き方」で悩んでいるのはママだけじゃないんですよね。というのも、その後にさらに 「縫製できるママ」を募集したところ、80歳近い男性から応募がありました(笑)。
以前はオーダーメイドスーツの縫製の仕事をしていた方で、非常に高い技術があるのに、年齢など条件面でなかなか難しかったと。 応募があったときは私たちも驚いたのですが、いざお願いしてみると大活躍!
ママだけではなくて、「多様な働き方」を求めている人ってもっといると気づかされました。私も「手作りが好き」「パソコンが好き」「人と接するのが好き」からスタートしたので、 一人でも多くの方が「自分の得意を生かして働く」という生き方が広まるお手伝いができたらいいなと思っています。
── ご自身の「働き方」について、今も悩んでいますか?
仙田さん:
今はもう吹っ切れました(笑)。ご縁から世界的ブランドデザイナーの方にお会いする機会を頂き、「子どもの育児に関わる時間が減って後悔したことは?」という質問をさせて頂きました。
その時に言われたのが、「私は世界中を回ってきたし、好きなことをさせてもらっている。他のお母さんと違うかもしれないけれど、美について誰よりもこだわった私の人生。今、子どもたちは『お母さんかっこいい』と言ってくれている。それが答えじゃない?」と。
当時80歳の一人の女性の言葉は、私の迷いを一蹴してくれ、これでいいんだと思えました。自分の人生は子どものためでも誰かのためでもない、と。
これまでは、悩んだらまずは家族や周りの友人に相談していましたが、身近な人だからこそ、大切に思ってくれて心配したり、反対されがちだなと。自分がやりたいことの先を行く人生の先輩や尊敬する方にアドバイスをいただくほうが、解決方法のヒントをもらえて、先に進めることを実感しました。
今では自分らしく過ごせる毎日が幸せです。家族を含め、関わってくださるすべての方に感謝と恩返しが少しずつできたらいいなと思います。
取材・文/酒井明子 写真提供/株式会社ルカコ