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保護者の費用負担ゼロ 千葉県に「荷物のいらない認可保育園」が誕生した理由

仕事

2022.04.12

今回は、千葉県内で認可保育園13園を展開する、株式会社ハイフライヤーズ(日向高志社長・千葉県千葉市)の「荷物のいらない保育園」を取り上げます。保育園で毎日必要な、おむつ、お尻拭き、エプロン、手口拭きタオル、歯ブラシ、お昼寝用布団などの荷物を、保護者の費用負担無く、園側で用意する取り組み。その目的や、達成したいビジョンなどについて、同社広報部の石井渚さんにお話を伺いました。

 

石井渚さん

保護者の費用負担ゼロ 手ぶらで通える「荷物のいらない保育園」

──「荷物のいらない保育園」について、詳しく教えてください。


石井さん:

まず、保育園に通うためには、おむつ、お尻拭き、エプロン、手口拭きタオル、歯ブラシ、お昼寝用布団などなど…多くの荷物が必要ですよね。「荷物のいらない保育園」は、これらをすべて園側で準備するというものです。園に預けていただいているお着替えを使ったときだけ、替えを持ってきていただく必要はありますが、基本的には毎日「手ぶら」で通えます。

 

これまで保護者が用意していた荷物

 

石井さん:

実はこの「荷物のいらない保育園」、まだ運営園がひとつだった10年前から構想していたものなんです。

 

当時は「保育園の準備を無くすのは、 保護者を甘やかしているだけだ」 という厳しい評価を受けたことも…。しかし、「保護者の方が子どもと向き合う時間を最大限確保することが、子どもたちの最大の幸せ・笑顔につながる」という強い想いがあり、取り組みを進めました。

 

そして、たくさんの困難を乗り越え、今回サービスの提供開始まで辿り着くことができました。

 

──この取り組みを始められた、きっかけを教えてください。

 

保育園に子どもを預ける保護者の方の多くは、お仕事と子育ての両立をされています。

 

お仕事が終わって迎えに来られて、帰宅すれば食事づくりやお風呂などの家事・育児が待っています。「保育園の荷物の準備」もそのひとつでしょう。

 

一つひとつの準備に、それほど時間はかからなかったとしても「やらなければならないこと」が頭の片隅に残っている状態で、子どもと真正面から向き合うことは難しいのではないか…と考えました。

 

実際に、保護者の方との面談では、帰宅後に子どもとゆっくり会話する時間が取れていない様子を見聞きしてきました。

 

保護者の方に荷物を持ってきていただいていた頃、いちばんの負担になっていたのが「お昼寝用布団」。毎週金曜日に持ち帰り、土日の間に洗濯・天日干しをしてから、月曜日に再び持参する…。ただでさえ大きな荷物なのに、天気の悪い日にはより負担が増します。

 

そこで昨年から、「荷物のいらない保育園」に先駆けて、布団を園側でご用意する取り組みをスタートしました。

 

「荷物のいらない保育園」イメージ画像

 

──保護者にとっては、本当にありがたいサービスですね。他の園でもおむつの定額制や、お金を払えば園側で荷物を準備いただけるサービスも出てきています。費用面については、いかがでしょうか?

 

石井さん:

当社では、保護者の方の費用負担は「ゼロ」です。目指しているのは、保護者のストレスや不安を軽減することなので、荷物の準備の手間は省けても、金銭的な負担が増えてしまっては意味がないと考えています。

 

──園側で荷物を準備するとなると、保育者の方々の負担も気になります。

 

石井さん:

おっしゃるとおり、保育者の負担の軽減や待遇の改善は、社会問題になっていますよね。当社では、例えば布団は専門のクリーニング業者に完全委託しています。また、エプロン、手口拭き、歯ブラシもすべて使い捨てのものを使用しており、洗濯・洗浄の必要がありません。

 

むしろ個別の管理やご返却忘れなど、お持ちいただいた荷物の管理をしなくて済むようになったので、保育者側の負担も減らすことができたと実感しています。

 

──今年1月からスタートされたとのこと。利用された保護者の方からは、どんな声が届いていますか?

 

石井さん:

保護者の方からは、毎日のように「ありがとう」「助かりました」と感謝の言葉をいただきます。「荷物を準備するストレスから解放されました!」と、とても喜んでいただいていますね。

 

また、これまではたくさんの荷物があったため、保育園から家まで直帰していた方も、公園に寄って遊んで帰れるようになったそうです。荷物のために車で送迎されていた方も、徒歩通園に変更し、子どもと一緒に手をつないでゆっくり帰れるようになった…という嬉しいエピソードも届いています。

 

ご自宅でも、直接目を見ながら話す機会が増え、子どもの愚図りが減ったというご家庭も。保護者の方から「子どもが、私との会話を楽しんでしてくれるようになった」と聞いたときは、私も本当に嬉しかったです!

向き合って笑顔で食事する親子

「仕方なく預ける場所」ではなく「子どもが幸せになれる場所」に

石井さん:

現在「荷物のいらない保育園」は、お着替えが必要なときだけ保護者の方にご用意いただいています。今後は、それも保育園で準備し、完全に手ぶらで通える保育園を目指しています。

 

ただ、「荷物をなくすこと」がゴールではありません。

 

当社が目指しているのは、保育園を「子どもが幸せになれる場所」にすることなんです。

 

──詳しく教えてください。

 

石井さん:

保育園では、預かり時間の長い子だと朝7時から夜の8時まで保育園で過ごします。懇談会などで保護者の方とお話していると、しばしば、子どもに対して「保育園に預けてしまって、申し訳ない」というお気持ちを抱いていることを感じます。

 

登園の準備中に一人で食事する子ども

 

でも、保育園ってご自宅では体験できない遊びができたり、たくさんのお友達や保育者と関わったりするなかで、思い切りのびのびと笑い合うことができる、子どもにとって「すごく楽しい場所」なんです。

 

当社では「保育園」は「福祉をも包括する究極のサービス業」でありたいと考えていて。利用者である保護者の方々の満足度の向上や、子どもたちが「楽しい!」「幸せだ!」と感じられる場所の提供に尽力したいと思っています。

 

保育園を「仕事があるから仕方なく預ける場所」ではなく、子どもたちが成長できるから、幸せになれるから通わせたい、そういう場所にしたいと思っています。保護者の方には、何の後ろめたさも感じずに「楽しいから、行っておいで!」と子どもを送り出してほしいですね。

 

──最後に、今後のビジョンについて教えてください。

 

石井さん:

少し大きな話になりますが、私たちが目指す「hoiku」、つまり「子どもたちが幸せになれるサービス」が、世界の共通語になってほしいなと思っています。この考え方や目指す方向性が、文化として保育のスタンダードになれば嬉しいですし、そこを目指していきたいと思っています。

石井渚さん

取材・文/三神早耶 写真・イラスト提供/株式会社ハイフライヤーズ

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