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「新入社員の勤務地を希望通りに」住友生命保険が進めるウェルビーイングな異動の在り方

仕事

2022.03.23

これまでの時代、会社員にとって「転勤」は当たり前のものとされてきました。それが、働き方改革がクローズアップされるなかで、大きく変わろうとしています。

 

大手保険会社・住友生命保険は、全国転勤を前提に採用した2022年度入社の新入社員の初任地について、原則として本人の希望した地域に配属することとしました。さらに、23年度からは勤務エリアを選択可能なコースの総合キャリア職採用も新たに始まります。

 

柔軟な人事制度を始めるに至った背景や目指すべき在り方について、人事部長の川口謙誠さんに聞きました。

インタビューに答える川口さん

「親の転勤は子育てに大きく影響」全国転勤させない人事制度の仕組み

── 新入社員の初任地を原則希望通りとした背景を教えてください。

 

川口さん:

1年前から総合キャリア職の社員を対象に、希望すれば全国転勤を止められるというコース変更の制度が始まりました。家庭の事情や親の介護、総合キャリア職同士の社内結婚ですと、片方が転勤になれば、子育てなどに大きく影響します。コース変更の運用が始まると、社内でニーズがかなり高いことに気づきました。

 

来年度に入社する新入社員については全国転勤を前提にしておりましたが、コロナの影響が長期化しており、遠方に配属してしまうと実家などに帰るのが難しくなってしまう。東北や九州など配属を希望する地方を選んでもらい、実家に近いエリアで勤務できるように考慮することになりました。

 

── 現職の社員を対象に、すでに全国転勤を絶対としない新たな人事制度が始まっていたのですね。どういった仕組みなのでしょうか?

 

川口さん:

制度変更前は、全国転勤を前提とした「総合職」と、転勤のない総合職である「業務職」に大きく分かれていましたが、両者を「総合キャリア職」として合体しました。そのなかで全国転勤のある「Gコース」、勤務地を限定した「Rコース」、希望したエリア内で働く「Aコース」の3通りの働き方を用意しました。

 

現在は年に2回ある異動の前にコースの希望を取り、その申告に応じて勤務地を決めています。家庭の事情などが落ち着けば、全国転勤のコースに戻ることも可能です。23年新卒からは各コースごとの採用を始めます。

 

── 適用されるのは新入社員全体のうち、何割程度でしょうか?

 

川口さん:

新入社員400名のうち、全国転勤を前提として採用した60人(15%)です。勤務地については、昨年12月にアンケートを取り、今年1月下旬に面談をして決めました。全国転勤を前提として採用したこともあり、一つのエリアに偏ることはなく、全員が希望のエリアに収まっています。

希望部署を決めるジョブフェアを開催

── 新入社員の場合は、何年くらいで転勤があるのでしょうか?


川口さん:

所属によりますが3年程度ですね。異動の時期が来れば、昨年から始まった人事制度により、コース変更も可能です。ただ最初の配属が支社だと、本社や他の支社の仕事内容や雰囲気が分からない、もっと知りたいとの声が若手社員から多く寄せられていました。

 

そのため、3年前から、各部署で活躍する若手〜中堅職員が仕事内容について説明する「ジョブフェア」を社内で実施し、希望部署を見つけてもらう機会としています。過去2回の異動では、「マイキャリア」を登録している職員は希望通りの職務に配属できました。

住友生命東京本社

住友生命保険東京本社ビル

── 勤務エリアを選べることで、会社と社員双方にどんなメリットが想定されますか?

 

川口さん:

会社から見たら生産性の向上であり、社員にすれば働きがいにつながり、両者のエンゲージメントが高まると思うんですね。家庭に目を向けると、我々の世代は圧倒的に専業主婦が多いのですが、若い世代だとそうしたケースはほとんど見られません。

 

私生活の価値観が変わる中で、企業が従来の価値観のまま停滞してしまうと、職員の生産性が落ちかねない。職員の人生も含めてウェルビーイングを高めていくのは、双方にとってメリットがあると感じています。

女性管理職を増やすきっかけになるエリア採用

── 来年度からエリアを絞った総合キャリア職採用が始まるとのことでした。採用段階から勤務エリアを固定するメリットは何でしょうか?

 

川口さん:

全国転勤を前提にすると、どうしても応募の男女比率が圧倒的に男性側に偏ってしまいます。来年度の新入社員も女性の割合は25%にとどまりました。ダイバーシティを進めていくなかで、弊社は女性の管理職比率5割、女性役員3割を目標に掲げています。

 

実現するには少なくとも総合キャリア職の入社で女性の割合を増やさなければなりません。エリア採用を実施することで、女性の応募が増えてほしいという思いがあります。

 

── 今後、さらにウェルビーイングな働き方を進める上で、想定しうる改革はありますか?

 

川口さん:

会社がキャリアを決めるのではなく、社員が自立的にキャリアを決めていく「マイキャリア」が大きなテーマです。最近は、部署やポジションの応募をかける「公募」のメニューや人員を増やしています。シニア向けの公募や、社外のベンチャー企業にレンタル出向可能な公募など、さまざまな公募を行っています。クラシックの公演に使われる大阪の「住友生命いずみホール」の職員出向の公募は、意外と人気が高かったですね。

 

人事が絶対的な異動の権限を持つのではなく、あくまで社員の働き方のサポートを担いたい。社員が働きがいを深めることで生産性が上がれば、会社としてもプラスになるだろうと思っています。

取材・文/荘司結有 写真提供/住友生命保険

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