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傘の老舗 小宮商店に女性後継者が増えた理由

仕事

2021.08.19

共働き時代に合った私らしい生き方・働き方を模索するCHANTO総研。

 

山梨の甲州織を使った手作りの洋傘を製作、販売する小宮商店(東京都中央区・従業員15人)は創業91年目を迎える老舗です。

 

古くから続く伝統工芸の分野で、男性従業員が多く、女性が働き続ける制度は以前は整っていませんでした。後継者確保にも頭を抱える中、さまざまな施策をとり女性従業員が増え、技術の継承に繋がったそう。

 

小宮商店で女性活躍推進を担当する伊藤裕子・管理統括本部部長に話を聞きました。

小宮商店 傘 左から3番目が伊藤さん

求人を出しても女性が集まらない

── 改革が順調に進み、令和2年度東京都女性活躍推進大賞も受賞しています。どのように変えていかれたのでしょうか。

 

伊藤さん:
2013年、男性従業員が6人、女性従業員が私を含めて2人という状況でした。これまで専門店などへの卸売りを中心にやってきましたが、だんだん衰退していき、売り方を変えなくてはいけない、お店を構えて小売をして活路を開こうとなったのがその頃です。

 

また、弊社は腕のいい職人が作る傘が売りなのですが、当時は70代後半の男性職人が2人だけ。高齢化していたので、後継者がいなくなっては困るとも思っていました。

 

そんなとき、一人の20代女性を採用したところ、段ボールだらけの店舗を片づけ、ショーウインドウを整えてくれました。小売には女性のきめ細やかさも重要だと気づいたのですが、その後、求人を出してもなかなか女性が集まらず…。

 

── 転機はなんだったのでしょう。

 

伊藤さん:
そんな悩みがあるなか、東京都の女性活躍推進人材育成研修というものがあると知り、社長に参加を申し出ました。

 

研修では、一般事業主行動計画の立て方、自社の傾向を分析してパターン別にどういった数値目標を盛り込めばいいか、などを学ました。そして課題として一枚のシートが配られました。

 

受講する前の会社の姿、気づいたこと、気づいたことから起こそうとするアクション、自社の課題をまとめるA3の紙です。

 

自宅に帰ってから覚えているうちにやろうと書いてみると、自分の中でもやもやと考えていたことがシートで整理できて、会社の良さや改善点が明確化されたんです。

社内の無記名アンケートで実現した女性専用トイレ

── 研修内容が伊藤さんご自身の転機にもなったようですが、社内にはどう還元したのでしょうか。

 

伊藤さん:
何回か研修があり、自分だけがわかっているのではもったいないと思い、社長に「社内で勉強会を開いていいですか」と頼みました。

 

まだまだ当時は女性は家事、育児といった発想の社員も多く、年配の人も「こんな時代になったんだねえ」「男性も家のことをやる時代だね」と興味深く聞いてもらえました。

 

2016年冬には、女性活躍を推進するために計画期間、取組内容、具体的な数値目標を策定した一般事業主行動計画を作成し、労働局に届け出。女性活躍推進データベースで公開しました。当時は女性管理職1名でしたので2名にするといった、登用目標などを盛り込みました。その後、2019年には第二期の行動計画を策定しました。

 

── 女性の雇用問題を改善するために、他にはどんな取り組みをされましたか。

 

伊藤さん:
効果的だったのは定期的に社内で実施した無記名アンケートです。「女性活躍推進法を知っていますか」に「はい・いいえ」で答えてもらったり、「現在の当社の社内環境をどう思いますか」と聞いたりしました。

 

当時、女性が少なくて1階も2階もトイレは男女兼用だったんです。アンケートでは「女性用トイレがあった方が良い」という声が多くて、集計結果をまとめて説明会をしたら「それはそうだ。今から1階は女子トイレ、2階は男子トイレにしよう」と。

 

── トイレの改革も行ってきたんですね。2016年当時は女性従業員4人だったとのこと。今は、女性が9人、男性が6人と逆転するまでにきたのは、どうしてでしょう。

 

伊藤さん:
一般事業主行動計画を公表したことで、責任を感じるようになりました。データベースやホームページを見て働きやすい会社なんじゃないかと求人に女性からの応募が増えてきました。

そして女性の傘職人が生まれた

── 女性の傘職人も生まれたのですか。

 

伊藤さん:
はい。社員が1人、業務委託が4人います。職人の女性社員は今、育児休業中です。テレワークの仕組みもあるので、復帰後活用できます。

 

小宮商店 職人

女性の傘職人

社会保険労務士に相談して、店舗での小売を始めたときに育児介護規定も作ってもらいました。

 

社内で周知しており、すでに育休から復帰した女性社員からも「安心して長くやりがいがある仕事ができると思った」と言われ嬉しく感じました。

 

職人の世界は背中を見て覚えろとかつては言われてきたのですが、新しく入った方からは「ベテラン職人の手元の動きが早すぎて見えません」と言った声もありました。

 

そのため、すべての工程をマニュアル化し、動画でも撮影。社内の人間だけが閲覧できるようにパスワード管理したうえで、ウェブで見られるようにしました。その結果、在宅で練習もできるようになりました。

 

── 女性の視点はいきていますか。

 

伊藤さん:
女性社員が発案した遮光率が高い晴雨兼用傘は毎年、売り切れるほどです。

 

また、明るくおしゃれな色合いの生地の傘を商品化したことで、若い世代のお客様が増え、これまで50〜60代だった購買層が20〜70代までに広がりました。ショップバッグやギフトボックスをつくったことで、ギフトの需要も増えています。

小宮商店 話し合い

── 成功の秘訣はなんですか。

 

伊藤さん:

アンケートを定期的に無記名で行ったことで、何を変えたらいいかが拾えるようになり、改善しやすくなりました。

 

また、都の女性活躍推進企業交流会やワークライフバランスに関する研修というものがあり、そこに参加すると、パネリストとして登壇する企業のお話を聞き、各社の女性活躍推進担当者という同じ立場の人たちが、グループ別に話し合いができたり、パネリストの方に質問ができました。

 

私は、交流会のパネリストの方や同じグループになった方と名刺交換をして、研修後もメールで交流させていただいたことがとても励みになりました。

 

そして、実は、あんまり女性活躍と言いすぎないよう気をつけました。「進んでるね」と言ってくれる人もいれば「女性びいき」と思っている人もいると感じたので、女性ばかり有利に見ていると思われないよう、途中からは「ワーク・ライフ・バランス」という言葉を中心に男女ともに働きやすいということを心掛けました。

 

結果、仕事が属人的にならず、複数人で共有する形をとることになり、男女ともに休みやすくなり、メリットを働いている人全員が感じられるようになったと思います。

小宮商店 かさね

 

 

小規模事業者も工夫と意欲があれば、女性、男性ともに働きやすい環境が作れるのだと改めて感じました。定期的な無記名のアンケート実施と、諦めずに改善を続けていく姿勢は小宮商店の傘の品質向上にも繋がっているのだろうと思わされました。

取材・文/天野佳代子 写真提供/小宮商店

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