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5人に1人が子連れ出勤!社内風土を大きく変えた三承工業の秘策とは

仕事

2021.06.30

共働き時代に合った私らしい生き方・働き方を模索するCHANTO総研。

 

住宅メーカーの三承工業株式会社は、働きすぎの体質を脱却するため、約10年前、本格的に社内改革をスタート。現在は社員54人のうち11人が子連れ出勤をするまでに会社の風土を大きく変化させました。

 

なぜ変われたのか。また、子連れ出勤はどんな工夫のもとで実現されているのか。ダイバーシティ推進室 係長の神田純代さんにお話を伺いました。

三承工業・神田さん

SUNSHOW GROUP三承工業株式会社 ダイバーシティ推進室 係長 SDGs担当 神田純代(かんだ すみよ)さん。社会課題をビジネスで解決していく女性チーム「チーム夢子」のSDGs推進プロジェクトのリーダーを務める。各事業部とSDGsを結び付け、インディケーター(指標)と数値目標を定め、ボトムアップ型で達成に貢献。そのほか、中小企業対象のSDGsコーチング、講演活動、「2030SDGs」ファシリテーターも務める。

反対の声もある中、社内の風土改革へ

── 三承工業では大幅に残業を減らし、風土も大きく変えたそうですね。そのきっかけを教えてください。

 

神田さん(三承工業):

1999年の創業から10年以上、三承工業は忙しいのが当たり前で、有給休暇も取りにくい雰囲気の会社でした。

 

あるとき、生産性向上を目的としたアンケート調査と分析を行いました。そこでわかったのは、「職場の風土が悪い」「仕事の情報などの共有が不足している」「社員が輝くための仕組みがない」という、会社の成長を阻む3つの要素でした。

 

そもそも社員同士のコミュニケーションが図れていなかったため、認め合い、思いやることもできない。休暇制度を活用する、ダイバーシティに取り組むといった発想もありませんでした。しかも、社員のなかには「残業するのも仕事のうち」と割りきる意見もあって。

 

長時間労働が常態化し、生産性を向上する施策も打ち立てられていない現状に当社の代表が危機感を覚えて、風土を変える改革を進めました。反対の声もありましたが、それでも変えなければと決意したんです。

 

── 具体的にどんな改革を進めたのですか?

 

神田さん(三承工業):

たとえば、社員のコミュニケーションを増やすためにスポーツや勉強会の機会を作りました。スポーツは終業後に行っていたのですが、まずは有志が集まり徐々に周りを巻き込んでいきました。業務中とは違う一面が見られるので、親睦を図る機会になります。

 

また、LINEGoogleの無料アプリを使って業務や目標を共有し、理念を理解し合う時間も作りました。一つひとつの施策を積み重ねるうちに、自然と社員の意識が変わっていきました。

代表の提案で始まった「カンガルー出勤」

── 2013年からはカンガルー出勤(子連れ出勤)も始めたそうですね。詳しく教えてください。

 

神田さん(三承工業):

カンガルー出勤については、この制度が始まるきっかけになった財務部人事課課長・寺田有希実の事例をご紹介します。

 

寺田さん(三承工業):

パートで入社した3年後に正社員になり、その後、妊娠しました。当時は出産・育児で長い休暇を取れる雰囲気はなく、産後に復職しても長く働ける環境も整っていなかったので、退職を考えていたんです。

 

すると代表から「会社に子どもを連れて来ることを考えてみてほしい」と声をかけられました。とても驚いたのですが、当時の職場環境で子どもと一緒に出社するのはやはり難しいと思い、一度は断りました。

 

それでも代表は、「会社を良くしたいと真剣に考えている。みんなを変えたいから子どもを連れて来てくれないか?きっと会社の雰囲気も変わるから」と言ってくれて。

 

それから代表と対話を重ねていくうちに、私自身も可能性が見えてきたため、「やってみます」とお返事しました。そうしてカンガルー出勤が始まりました。

 

── 実際に子どもがいる環境で働くのは、他の社員への影響も含めて難しい面もありそうです。たとえば子どもがグズったり、大騒ぎするなどの心配はあったと思いますが、そのような課題はどのように解決しましたか?

 

寺田さん(三承工業):

もちろん、最初はうまくいきませんでした。子どもが大泣きすると、周囲からため息や舌打ちが聞こえてくることも。私に仕事を頼みたくても子どもの世話をしているから頼めないと、イライラしている雰囲気が伝わってきました。母親はそういったことは敏感に感じ取るので…。

 

あるとき、代表が泣いている子どもを抱っこし、あやし始めたんです。それがきっかけで、周りの社員もおむつ替えやミルク作りなど、自分にできることをサポートしてくれるようになりました。

 

代表の言動から「誰でも職場で子どもと触れ合ったり、お世話をしたりしてもいいんだ」という雰囲気が伝わったんだと思います。さまざまな立場の人が「ミルクはこの温度でいいの?」と聞いてくれるようになり、会社のみんなで子どもを育てるという雰囲気が高まりました。

 

こうしてカンガルー出勤への理解が広がり、今では社員54名中11人が子どもを連れて出勤しています。

三承工業の社員の皆さん

「まわりを頼っていい!」社員が自ら子育てをサポート

── 5人に1人がカンガルー出勤とは多いですね!その他にも、実際にカンガルー出勤をされている方の声を聞かせてください。

 

神田さん(三承工業):

ほかには、こんな声が寄せられています。

「子ども達の長期の休みでも仕事を休む必要がなく、子どもの様子を見ながら働けるので助かっています。仕事をしている親の姿を子どもが見ることもできて、とても良い環境だと思います」

「入社後、子どもを連れて出勤すると子どもがぐずって仕事がなかなか進まず困ったことがありました。でも、周りの社員が男女問わず『子どもは泣くのが仕事だよ』『散歩に行こうか?』『周りに頼っていいんだよ』と声をかけてくれて、気持ちがとてもラクになりました。子どもがいるからできないとマイナス思考になるのではなく、子どもがいても何でもできるかも!と前向きになれました」

「最初は保育園に入れなかった2歳の子どもを連れてのパート勤務でした。周りの社員には『私もそうだったからわかるよ』と言ってもらえ、安心して勤務できました。接客業なのでお客様との会話のきっかけにもなり、カンガルー出勤に助けられることばかりでした」

「子どもを連れて仕事となると、思うように作業が進まない、また時間がかかってしまうことが多いです。そういったことも踏まえて、仕事内容を検討してもらったり、リモート勤務にさせてもらったり、無理なく子どもがいながら仕事ができています。また会社では、子どもがぐずぐずしていたら『どうしたの?』と周りの社員から声をかけてもらえ、一人だと子どもにイライラしてしまう場面も会社にいることで気持ちが緩和されていると感じます」

── 親にとって助けられる場面が多い制度なのですね。逆に課題に感じることはありますか?

 

神田さん(三承工業):

カンガルー出勤をしている社員からは、「今あるキッズルームをさらに充実させ、保育士もいてくれるとありがたい」という声があがっています。やはり親としては周りに気を遣う部分があるかもしれません。そういった面もフォローできる仕組みを検討できたらと思っています。

 

── 子どもたちが機嫌よく過ごし、大人はスムーズに仕事ができるために何か工夫していることはありますか?

 

神田さん(三承工業):

子どもたちに、年齢に応じた内容の仕事を手伝ってもらっています。たとえば、資料を揃える、郵送物の準備をする、お客様にお茶出しをする、花壇の手入れをする、掃除をするなどです。そして最後には必ず感謝を伝えます。

 

また、カンガルー出勤する社員は子どもの様子や年齢に合わせて、臨機応変に場所を変えながら仕事をしています。

 

子どもの機嫌がいいときばかりではないので、そういうときはキッズルームのある部屋で仕事をしたり、時には外へ散歩に行ったり、時間を決めて体を動かしたりすることもあります。

 

電話応対中、来客中、集中したい社員がまわりにいるときなどは、子どもたちに状況説明をして協力してもらっています。

 

── カンガルー出勤の導入の後は、女性が活躍するための環境づくりも本格的に進められたそうですね。

 

神田さん(三承工業):

はい。2015年に、育児中の男女を中心に「チーム夢子」を結成しました。「チーム夢子」が先頭に立って職場の改善点を挙げていったんです。さらに、住宅メーカーとして、女性支援団体の意見を積極的に取り入れた商品“ママが住みたい家”のモデルハウスを作りました。最終的には経営にも参画したんです。

 

熊本県の震災では女性のための物資支援も行い、厚生労働省や国交省へ出向いて女性活躍事例についての講演を行ったことも。現在も「チーム夢子」のメンバーたちがダイバーシティ&インクルージョンの考えで、多様性を受け入れ合い、活躍し合う会社づくりを推進しています。

 

── 今後さらなる働きやすさを叶えるためにどんな環境づくりをしていきたいですか?

 

神田さん(三承工業):

今後も、社会課題をビジネスで解決していくことで「生きがい、やりがい、働きがい」のある企業として選ばれ続けたいですね。

 

そのためには、社内のフェーズが女性活躍推進からダイバーシティへと変わってきているのに合わせて、一人ひとりが輝ける場所・コト(強み)を見つける必要があります。その強みを高める知識や人のつながりを広げて、新たな方法で成果を出せる人を増やしていきたいです。

 

 

もともと働きやすいとは言えなかった会社の風土を大きく変えた三承工業。要となったのは、残業を減らすなど業務の効率化を進めながらもコミュニケーションの機会を増やしたこと、さらに子どもとともに働ける環境づくりを推進したことでした。今では社員一人ひとりの成長を促す強い基盤も感じさせます。今後、ここから活躍の場を広げていく人もきっと多いのでしょう。

【会社概要】
社名:三承工業株式会社
設立年月:平成18年3月3日(創業:平成11年11月11日)
業種: 建設業
事業内容:新築工事・建築工事・リフォーム工事、土木工事業、管工事業、タイル・レンガ・ブロック工事業、舗装工事業、造園工事業、水道施設工事業、産業廃棄物収集運搬業、前各号に附帯する一切の事業

取材・文/高梨真紀

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