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流山市、全国有数の転入超過数 戦略のコツは

仕事

2021.05.14

2021.07.30

共働き時代に合った私らしい生き方・働き方を模索するCHANTO総研。テレワークで地方と都市部の垣根がなくなる中、地方、郊外での働きやすさを探ってみます。

 

今回は、「母になるなら、流山市」のキャッチコピーと巨大な家族連れのポスターが数年前、首都圏のあちらこちらの駅にお目見えした千葉県流山市。

 

政令指定都市以外で、全国1位の転入超過数を記録した自治体の施策とは──。

子育て世代の転入が特徴

総務省統計局の資料によると、2020年の全国市町村の転出者を転入者が上回った数の調査で、流山市はトップの大阪市、2位の東京都特別区部などに続き、堂々の9位にランクイン。上位にいる福岡、横浜などの政令指定都市を除けば全国1位で、子育て世代の転入の多さが特徴となっています。

 

転機は2005年のつくばエクスプレス開業でした。当時の流山市の人口は約15万人。それが3年後の12月には19万人を突破します。それだけではありません。子育て世帯を惹きつけた街のPR方法、そして、人口急増に伴って新たにうまれた課題、ママたちの活動促進など、当時の地方自治体には珍しいマーケティング施策の導入が成果に繋がっていたと言います。

住民モデルの巨大ポスターで注目度アップ

お話を伺ったのは、流山市総合政策部マーケティング課の河尻和佳子課長。民間のマーケティング職から2009年に流山市役所に転職され、人口増加に向けた数々の施策を打ち出してきました。

 

 

ただ、最初から順風満帆だったわけではなかったそうです。

 

「自治体のマーケティングといっても前例が何もなかったので。都市部に流山市が発展していること、商業施設や住宅が増え、緑豊かであることを知らせようとしても、ツテも方法もわかりませんでした」。

 

成果が出ない焦りの中、「失敗してもいいから挑戦してみよう」と2年目の2010年に広告代理店と取り組んだのが、都市部で話題になったキャッチコピー「母になるなら、流山市。」が書かれたポスターです。

 

流山市のポスター

写真に登場するのは流山市在住の一般の方々。制作にあたっては市職員と代広告理店の担当者が一緒に駅前に立って、「流山に住んでいますか?どちらからお引っ越しされましたか?」とモデル集めをしたそうです。

 

結果、口コミが広がって参加者も増え、住民が自ら住んでいる街をPRするという、印象的な宣伝が実現できました。

住民がPRするポスターが生んだ2つの効果

ちなみに、このポスターのマーケティング的なメリットは予想外にも2つあったそう。

 

1つ目はクチコミ効果です。このポスターは首都圏の駅に巨大なパネルで掲示されました。すると、ポスターのモデルを務めた方の旧友たちらが「見たよ。流山市ってところに住んでるの?どうなの?」と聞くようになったそう。こうした会話の輪が広がり、流山市の口コミ宣伝に繋がりました。SNSでも情報が拡散され、なかには移住する人も出てきたそうです。

 

2つ目はポスターのモデルがきっかけとなり、市内の母親たちの活動が活性化したことです。今では市内で起業し、シェアサテライトオフィスを運営したり、フリーランスとしてワイン講師を務めたりと、さまざまな母親の活動が生まれています。

また、河尻さんらは移住者誘致のため、多数のイベントも開催してきました。

 

2010年からは市内の飲食店が駅前で店を展開する「森のマルシェ」を。2014年には「mo-rink(モリンク)」として、駅前に氷のスケートリンクを作り、他の地域に住む人々が流山市を訪れ、その魅力に気づくきっかけを作っていったそうです。

 

人口が増えすぎて、小学校の学区変更も

常住人口の推移(毎年4月1日)

一方で急速な人口増加によって、新たな課題も生まれてきました。その一つが小学校の不足です。年少人口増加率が市で全国2位など、子どもの数が増えた結果、小学校の1学年を10クラスにしても教室が足りなくなる見込みとなりました。市内の小学校の数を2005年の14校から現在までのあいだに3校増やして対応しましたが、新たな学校建設により学区変更が必要になりました。河尻さんの長女もその影響を受けた一人。小学4年生のときに、新設小学校に転校することになりました。

住民交流イベントも開催

こうした課題に対してネット上などでは批判の言葉が出ることもありました。そこで、2013年頃からは「人をどう集めるか」に加え、「住んでいる人たちにいかに幸せを感じてもらうか」に注力し始めます。

 

例えば、ママたちが飲みながら夢を語れる「そのママ夜会」を2014年に開催。2016年にはママだけでなく、パパたちの話を聞く会も催しました。女性向け創業セミナーも市商工振興課主催で2015年からスタート。当初は人を呼び込む目的で始めた「森のマルシェ」も、開催から10年以上が経ち、市内で起業した人が出店する姿も見られるようになりました。

 

「流山市は今まさに伸びている未知の街です。起業セミナーや地域活動に参加する人たちのように、街に課題があれば自分たちで変えていこうとするベンチャー精神があります。住んでいる人たちもそんな街が好きだという人が選んでくれているのかもしれません」

自治体のマーケティング戦略は「人口を増やしたい」で始めると失敗する

住民基本台帳に基づく人口動態調査によれば、日本の人口は前年比で50万人以上も減少。1968年の現行調査開始以来、最大の減少数だったそうです。

 

そんななか、各自治体も移住者の誘致は課題になっているはず。ですが、「『人口を増やしたいから何かをやる』」という発想で取り組むと失敗すると河尻さんは断言します。

 

「まずは自分たちの街のよさが何なのか。それを徹底的に掘り起こすことが大切です。また、『子育て世代を呼び込みたい』と言っても、実際はその世代のなかに、多様な人たちが含まれています。具体的に、どういった人に興味を持ってもらいたいのか、分析することも必要ではないでしょうか」

取材・文/天野佳代子

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