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ジェンダーギャップの解消で、若者が戻るまちへ。兵庫県豊岡市の取り組み

仕事

2020.11.06

2020.12.18

共働き時代に合った私らしい生き方・働き方を模索するCHANTO総研。

 

兵庫県豊岡市。城崎温泉などの観光地を擁する風光明媚なこのまちで、ジェンダーギャップの解消を主軸としたワークイノベーションが進んでいます。

 

それは、豊岡市ワークイノベーション推進会議の参画事業所を中心に市が行う「豊岡市ワークイノベーション推進事業」。セミナーやワークショップの開催、表彰制度の創設などを行っています。取り組みの様子について、豊岡市役所ワークイノベーション推進室の手塚さんにお話を伺いました。

 

まちの「あたりまえ」を変える、豊岡市のワークイノベーション推進事業

制度名称: ワークイノベーション推進事業(セミナー、ワークショップの開催、表彰制度の創設)

導入開始時期: ジェンダーギャップ解消の取り組みは201810月より実施中、ワークイノベーションの推進は20194月より実施中

対象者: 豊岡市内の事業所およびその経営者、従業員

今までに利用した人数: のべ145事業所235人 (ワークショップ等の参加人数/累計)

 

豊岡市 総務部 ワークイノベーション推進室 手塚淳志さん

豊岡市出身。県外の大学卒業後、地方銀行勤務を経て2016年に地元豊岡市にUターンし、豊岡市役所入庁。エコバレー推進課(現環境経済課)を経て、2020年よりワークイノベーション推進室。

 

——豊岡市といえば、2018年度から始まったジェンダーギャップ解消のための取り組みが全国的にも知られています。その課題認識は、どこから来ているのですか。

 

手塚さん(豊岡市):

「若者回復率」という指標をご存じですか?進学等で市外に転出した10代の人数に対して、就職等で市内に転入してきた20代の人数が占める割合のことです。豊岡市の若者回復率は、男性が52.2%なのに対し、女性は26.7%。女性は、男性の約半分しか豊岡に戻って来ていないということになります。まちの存続自体が危ぶまれている状況です。

 

——若者回復率が女性は男性のおよそ半分になるとは、大きな違いですね。豊岡市は城崎温泉があるなど人気の観光地でもありますが、地元に暮らす人が支えてこそだとも思います。何が原因なのでしょうか。

 

手塚さん(豊岡市):

豊岡は長く男性中心の社会を形成してきました。社会や経済分野において、女性は補助的な役割を負っており、居場所も出番も少ない。性別役割分担意識が強いんです。

 

大都市に比べて、女性が働きやすい職場づくりへの取り組みもあまり進んでいません。若者回復率の低さは、豊岡が「暮らしの場」として若者に選ばれていないこと、特に若い女性たちに選ばれていないことを示しています。この男性中心の社会のあり方を改善して、「豊岡に暮らす価値」が高いまちを築いていくことが、事態改善のためには不可欠だと考え、ジェンダーギャップの解消に取り組み始めたのです。

 

誰もが働きやすい会社づくりのために、自ら1か月の育休取得した男性経営者も

——なるほど。男性中心の社会であることをまちが認識して、男性も女性も関係なく活躍でき、「豊岡市で暮らしたい」と思えるまちづくりを進めることはとても先進的だと思います。推進事業として、どのようなことをしているのですか?


手塚さん(豊岡市):

市内事業所の経営者や従業員の意識・行動改革や、女性従業員のキャリア形成支援に繋がるようなセミナーやワークショップを行ったり、少日数・短時間勤務を希望する子育て中の女性が採用ニーズのある企業から直接話が聞ける“お仕事大相談会”を行ったりしています。

 

少日数・短時間勤務希望者と企業との“お仕事大相談会”の様子。働きたいのに働けない子育て中の女性に向けた就労支援を進めている。

 

——参加者が新しい価値観に触れられたり、想いを叶えたりするための機会をつくっているのですね。まち全体の意識変容をはかる上で、どんなことを重視していますか。

 

手塚さん(豊岡市):

ワークショップ参加者からは、「ほかの事業所の目的意識の高い女性との交流に刺激を受けた」、「会社、職種が違ってもみんなが同じような悩みをもっていることがわかった」など、他事業所の従業員との交流に関する評価が多く寄せられています。自分のところだけだと見えてこないものが、他の事業所との交流で見えてくる。変化のきっかけになることを期待しています。実際、少しずつ何かを変えていくというような機運が高まりつつあるのを感じています。

 

——参加者自身が変化を感じているのですね。それは大きな一歩ですね。

 

手塚さん(豊岡市):

ある事業所では、若い女性を中心とした海外戦略チームが設置されました。また、「誰もが働きやすい会社」をつくるにはまず自分自身から動こうと、男性経営者自らが1か月の育休を取ったんです。女性の仕事が補助的な内容に限定されたり、家庭のことは妻任せといった状況改善への取り組みがあまり進んでいなかった豊岡では、これは確実な変化です。

 

育休を取得した経営者。わが子と一緒に。(写真提供:中田工芸株式会社

 

市役所でも男性職員の育休取得を推進していますが、少しずつ「男性の育休は当たり前」という雰囲気が醸成されているように感じます。

 

育休を取得した市職員(写真右・左)。市長から辞令交付と応援メッセージが送られる。

 

手塚さん(豊岡市):

とはいえ、スタートして日も浅く、積極的な取り組みのある事業所はまだ少ないです。今後は、表彰制度などにより優れた取り組みを可視化したり、従業員意識調査を実施し、各事業所の課題把握に生かしてもらったりしながら、まちの課題解決を図っていきたいと思っています。

 



日本の多くの自治体が抱えている「若者離れ」に対し、具体的な取り組みを始めた豊岡市。「文化」や「意識」に切り込むという選択にはきっと困難もあるのでしょう、しかし、様々なアプローチの先には、若者が笑顔で戻ってくる未来があるはずです。まちを巻き込んでの豊岡市のチャレンジは、本当の働きやすさを実現するためのヒントが詰まっているのかもしれません。

 


【組織概要】

組織名:豊岡市ワークイノベーション推進会議

参画数:市内38事業所

設立年月日:2018年10月

事業内容:ワークイノベーションの推進、ジェンダーギャップの解消に関するセミナー、ワークショップ

 

 

取材・文/八田 吏(mugichocolate株式会社)

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