自社らしい制度で「自分でもできる」と思える事例を作る

──今回のコロナ禍で全社員が在宅勤務をすることで、社員が仕事と育児の両立の問題を抱えていることに改めて気付いた企業も多いです。これから制度を整えていく企業は、何から始めれば良いと思いますか?

 

上村さん:

企業カルチャーに合わせることが一番大切だと思います。例えば弊社の施策が上手くいっているからと言って、他の企業さんが全く同じものをそのまま真似して導入しても合わない面は多いのではないでしょうか。

 

まずは会社の中を見て社員の声を聞いて、障害となっていることは何なのか、その障害はどう取り除けばいいのか、企業文化や働く人のカラーに合わせてカスタマイズした制度設計が大切だと思います。

 

あとは、事例を作ることも必要かも知れません。

 

社内報に公開されたCAramel関連のコンテンツ。キャリアの長い女性社員を複数人掲載することで、多様性を伝える

 

──事例、ですか?

 

上村さん:

「制度は作ったからこれでいいでしょ」ではなく、その制度を使っている人の事例を作っていくことが大切です。もちろん偏ったペルソナではいけません。色んな働き方の選択肢があって、会社のできるサポートが可視化されていて、多様な社員が活躍できる会社が理想ですよね。

 

サイバーエージェントで言えば、私も時短管理職ですし、二人の子育てをしている執行役員や、入社一年目で新規事業や子会社の責任者に抜擢された社員もいます。もちろん家庭と仕事のバランスを図りながら活躍している社員もいます。「自分でもできる」と思ってもらえる事例をたくさん生み出すことが大切です。もしかしたら、ときには意図的に事例を作ることも必要かもしれません。

 

絵に描いた餅で使われない制度では意味がないので、企業カルチャーに合わせて働く社員のカラーに合わせた制度を作っていくことが重要だと思います。

 

 

覚えやすくてキャッチ―なネーミング、特定の人だけに偏らないようにする配慮、社員同士の横の繋がり。「しらけ」という言葉からも伝わるように、対象外になる人を生まない工夫が強く感じられる取材でした。社内の働き方に関する制度設計をするためには、まず自社の特徴や社員を知ることが大切です。今回のサイバーエージェントの事例から、学べることは多いのではないでしょうか。

 

取材・文/秋元沙織