コピーしました
お使いの端末は
この機能に対応していません

CHANTO総研2020年白書から読み解く私たちの「生きやすさ」

仕事

2020.12.18

働く女性の生きやすさにコミットする」というブランドミッションを掲げるCHANTO WEBでは、CHANTO生活総合研究所として、働く女性の仕事や暮らしに関する調査・分析をおこなってきました。2020年は私たちにとってどんな年だったのか、2021年をより生きやすい社会に変えるためには何ができるのでしょうか?

 

働く人たちの声をもとにCHANTO総研が作成した年間白書の内容を解説していきます。

2020年を表す10大キーワード

CHANTO総研では、生活者846人に対して2020年の生きやすさに関するアンケート調査を実施しました。働き方と暮らしがどのように変わったのか、生活者とともにその変化を分析していきたいと思います。

 

調査のなかでは、まず今年を象徴するようなキーワードについて聞いています。その結果、次の10のキーワードが見えてきました。

2020年は新型コロナウイルスによって、暮らしに大きな変化を求められる一年でした。そのため「マスク」「ソーシャルディスタンス」「新しい生活様式」など、テレビやインターネットでもよく目にしたキーワードを挙げる人が多かったようです。特に緊急事態宣言が発令された時期はマスクの買い占めが問題になり、ドラッグストアやネット通販でも品切れが相次ぎました。

 

また、「在宅勤務」や「オンライン会議」など、新しい働き方に関するキーワードをピックアップする人も少なくありませんでした。テレワークに切り替わったことで出勤時間が減少し、自宅で過ごす時間が増えたことで、働き方だけではなく生活そのものが大きく変わったという人が多いようです。

 

緊急事態宣言中は保育園や学校が休園・休校になったため、このキーワードを象徴的なものとして回答する人も多く見られました。自宅で仕事をしながら同時に育児をするという、今までにない状態を経験したという人も。子どもと過ごせることに喜びを感じつつも、仕事と育児の両立に関する悩みが表出してきました。

 

2020年を象徴する10のキーワードからは新型コロナウイルスを原因で生き方や働き方を急激に変えざるを得なかったという事実が見えてきます。この急激な変化にはプラスの効果もありましたが、生活者にとってはマイナスの効果の方が多かったようです。「2020年の生きやすさ」に関する回答には生活者のリアルな声が反映されています。

2020年は「生きやすい社会」になったのか?

続いて、「2020年は誰もが生きやすい社会の実現に近づいたか」という質問に対し、「はい」と答えた人は16%、「いいえ」と答えた人は66%という結果に。新型コロナウイルスによって生じた変化に適応できなかったり、生活者個人に求められる我慢や努力などが大きな負担になっていると感じさせられる数字です。

 

前向きな変化を感じた人もいますが、16%という数字はけっして多いとは言えません。新型コロナウイルスという不測の事態によってさまざまな制約が生じてしまった2020年は、その制約を受け入れ適応することに追われる年となました。来年以降も急激に事態が好転するとは考えにくいため、変化を柔軟に受け止めていく必要があります。

 

ただし、数は少ないとはいえ、前向きな変化は確かに生まれています。この変化を来年以降加速させ、2021年を誰もが生きやすい社会により近づけるためには、どうしたらいいのでしょうか?さらに詳しく調査結果を見ていきます。

テレワーク元年となった2020年

2020年の仕事の変化についての質問に対しては、ポジティブな変化を感じた人が23%、ネガティブな変化を感じた人が2倍の46%となっています。

 

それぞれの回答に対する主な理由は、ポジティブな変化があったと回答した人はプライベートな時間の増加や、通勤ストレスの軽減などを挙げています。ネガティブな変化があったと回答したは、収入問題を理由に挙げるケースが多く、そのほかにも健康問題やテレワークによるコミュニケーション不全を挙げています。

上の画像にある具体的な理由をさらに掘り下げてみましょう。

テレワーク導入でプライベート時間が増え、ストレスから解放された

2020年は「テレワーク元年」と言ってもよいほど、多くの企業がテレワークを導入しはじめました。東京都の調査では、令和元年に比べてテレワーク導入率が2.3倍に上昇したというデータもあります。今回の調査でも「通勤の必要性がなくなったことでストレスが減った」「通勤の時間がなくなった分、睡眠時間が1時間増えた」とポジティブな変化を喜ぶ回答が多く見受けられました。

 

しかし、今年テレワークをしていた人の約半数は、初めてテレワークを経験したという人たちです。企業も新型コロナウイルス対応として何の準備もなく在宅勤務に切り替えざるを得なかったというケースが多かったため、ソフト・ハード両面でさまざまな不具合が生じています。生活者からは自宅に在宅勤務ができる環境がなく、私物のPCを使って作業をしていたなどという声もあがっていましたが、何よりも多くの人が課題を感じていたのがコミュニケーションの難しさです。

 

とくに、テレワーク下では雑談をする機会が減りました。これまでは職場で顔を合わせたときに何気ない会話を交わすことができていたため、「わざわざミーティングをセッティングしてまで質問することではないけれど、ちょっと気になる」というような問題をその場で解決することができていましたが、テレワークによってちょっとした疑問を解決することに対するハードルが上がっています。

 

また、顔を直接合わせないことで、新入社員や部署異動をしてきた人の人となりがわからないという回答も多くあがっています。出社をベースとしたコミュニケーションはそのままに、突然テレワークに移行した企業が多いため、社員同士のコミュニケーションやマネジメントが行き詰まってしまっているというケースが増えているようです。

出社ベースから、オンラインベースで働き方を考える

こうした課題に対し、これまでの取材した企業の取り組み事例や生活者の調査をもとに、CHANTO総研が考察する解決の糸口が「オンライン本社」という発想です。

 

今年はテレワークへ移行しても出社が前提となっている業務が山積していました。それが、社内プラットフォームの拡充により徐々にオンライン化されることで、オンライン上でのコミュニケーションもさらに活発化し、課題解消の一助になるのではと推察しています。

 

また、新入社員や人事異動に伴う新しいメンバーの人となりがわからないという問題は、「Intra Network Servise(社内専用SNS)」の普及によって改善できる可能性があります。すでに従業員数の多い企業やテレワーク中心の企業で導入されていますが、従業員のプロフィール、いつどんな場所で働いているのか、希望するキャリアなどを社内サイトで公開することで、直接顔を合わせなくてもその人の人となりがわかるようになります。

 

日常のコミュニケーション不足はビジネスボイスチャットの導入が解決策になるかもしれません。テレワークの導入にあたり、オンライン会議やチャットツールを利用しはじめた企業は多いのですが、それぞれ一長一短あり、気軽に短時間でまとまった情報量をやり取りするのが難しくなっていました。そこで、これまでのツールと並行し、部署ごとに常時接続状態にあるチャットルームを設け、話したい時に気軽に声をかけるというような文化が根づけば、現在多くの人が抱えているテレワークならではのコミュニケーションの薄さの解消につながるかもしれません。

 

またテレワークは、新型コロナウイルス対応のための一時的なものではなく、今後広く定着していくと予想されるので、オフィスのあり方も変わっていくはずです。テレワークが普及したとしても、顔を合わせたミーティングや会議などが一切なくなるということはおそらくないでしょう。しかし、今年テレワークやオンライン会議を経験したことで、会社の一室に全員が集まって話し合いをしなくても、十分コミュニケーションは可能ということが明らかになりました。今後は例えば、企業と提携したカフェなどの飲食店をサテライトスペースとして打ち合わせに利用するなど、場所にとらわれない働き方がさらに進化していくと考えられます。

副業や趣味の充実に対する関心度が高まる

働き方の変化は、仕事への向き合い方にも大きな変化をもたらしたようです。

 

今回の調査では、本業とは違う仕事に興味を持つ人や、趣味やボランティアに時間をかけたくなったと回答した人が数多くいました。この背景には新型コロナウイルスなど不測の事態において、本業だけで生計を立てていくことの不安定さを実感したり、働き方が変わったことで生まれた「自分の時間」を自己実現のために使いたいと思った人が増えたことがあると考えられます。

 

しかし、勤務時間帯を固定化し、副業・兼業を解禁していない企業はまだまだ多く、現実的にはパラレルワークやプライベートを充実させたいという望みが叶えられないというケースが多いようです。ここ数年の「仕事が人生のすべてではなく、一つの会社に定年まで勤めることしか選択できない時代ではない」という考え方は、今後さらに加速していくでしょう。それを踏まえると、将来的には仕事を選ぶ一つの基準として、多様な人生を設計できるかどうかが重要な分岐点になるでしょう

従業員の多様な働き方を支える制度の必要性 

この考え方の変化は2021年以降「ライフ・ダイバーシティ」という発想につながっていくと考えられます。ダイバーシティ(多様性)とは、性別や人種、年齢や学歴などにこだらわず、多様な働き方を受容する概念として用いられています。今後はより広義に、仕事も含めた生き方そのものの多様性が認められる時代になるのではないでしょうか。

 

働くすべての人の多様な生き方を実現するためには、働く場所だけでなく働く時間の柔軟性も求められます。すでに多くの企業で取り入れられつつあるフレックス制度は、今後さらに注目される制度の一つとなるでしょう。

 

また、副業や複業が増えていく過程で、社内で公募された業務を希望者が行える「イントラソーシング(社内複業)」も普及していく可能性があります。成果報酬が支払われる業務であれば、企業は社内リソースの活用、従業員は収入増や自身のキャリアアップに繋げることができ、多様な人材育成の一つのステップになるのではないでしょうか。

 

さらに、今回の調査では、社会貢献に対して興味を持っている生活者がいることも見えてきました。企業によってはボランティア休暇などを設けているところもありますが、現地に行ってボランティア仲間と作業にあたるというタイプのボランティアをするには、時間的・体力的余裕がないというケースも珍しくありません。

 

2021年以降もすぐに新型コロナウイルス流行以前のような生活に戻ることはないと予想されるため、都道府県を超えた移動や、大人数で集まってボランティアに取り組むことは難しいかもしれません。それでも社会貢献のために何かしたいと考える人にとっては、在宅でできるボランティアへの注目度が高まるのではないでしょうか。

 

▶︎フレックスのヒントになる制度

コアタイムのないフレックスが「これまでと同じように働きたい」ママの気持ちを救ったーユニ・チャームの取り組み

▶︎イントラソーシングのヒントになる制度

育休中でもクラウドソーシングで社会との繋がりを!三井住友海上が取り組むワーママ支援

テレワークが労働時間の増加につながる?

テレワークの導入によってポジティブな変化があったと回答した人は多かったものの、準備なくテレワークに移行したことで、かえって仕事の時間が増えたという回答が多かったのも事実です。ソフト・ハード面の整備が追いついていないために作業効率が落ち、これまでよりもサービス残業の時間が増えたと嘆く人も少なくありません。

 

ただ、今年のテレワークへの移行はコロナ禍によるもので、準備が不十分であったことは否めません。逆にいえば、企業内制度改善やツールの導入なども含め、アップデートが実現できれば、業務の効率化の余地は十分にあるはずです。

 

求められるのは「オンライン適応力」

そのため、企業も従業員も、2021年はテレワークを前提とした働き方改革、「オンライン適応力」の強化が求められることは間違いないでしょう。これは、単純に働く場所を社外に置けばいいということではなありません。業務の進め方や働く人のマインドセットの変化も旧来の働き方から脱却する必要があるのです。

 

なかでも、これまでも強く求められてきたサービス残業の撲滅は急務でしょう。テレワークの場合は従業員がいつどんな働き方をしているかが見えにくいため、キャパシティを大幅に上回る業務を担当させてしまったり、「手の空いてる時にやってくれればいい」と気軽に作業を任せてしまったりしがちです。2020年はテレワークでの「隠れ残業」がニュースにもなりましたが、作業効率低下のしわ寄せを従業員が受けている可能性が既に多く指摘されています。現在、企業は職場でのハラスメント防止対策を積極的にとっていますが、サービス残業もハラスメントであり違法であるという風潮がさらに浸透することで、現状が改善する可能性は十分にあるのではないでしょうか。

 

同時に、出社前提の働き方を見直し、テレワークでの作業効率そのものを改善する改革も必須です。今年取りざたされた押印やファックスの問題はもちろんですが、業務プロセスや課題を可視化できるツールの導入することで、さらなる作業効率に一役買ってくれるでしょう。テレワークが主流になる以前から業務における「見える化」が重要と言われてきましたが、今後はより意識的に「見える化」を図る必要があります。

 

ただし、ツールの導入だけでは作業効率は上がりません。従業員個人のモチベーションも作業効率に大きな影響を与えます。テレワークによって個人作業が増えると、個人のモチベーションの変化も見えにくくなります。業務のエンゲージメントを数値化し、問題がある場合は早急に対応できる体制を整えておくことも、作業効率改善のためには必要になりそうです。

▶︎エンゲージメントのヒントになる制度

社内エンゲージメントを向上させて「誰もが働きたい会社」へ!マニュライフ生命がコロナ禍で取り組む新施策

対面必須の仕事にも働き方改革を

2020年の仕事に関する大きな変化としてテレワークが挙げられますが、対面が必須でテレワークに切り替えられない仕事に就いている人も数多くいます。しかし、「テレワークを導入すれば働きやすくなる」という話ばかりが先行していて、テレワークができない人の働きにくさが置き去りになってしまっているのが現状です。今後はテレワークだけではなく、より多様な働き方を議論していかなくてはなりません。

社会全体で働き方を見つめ直す段階に

テレワークができないエッセンシャルワーカーを中心に、仕事の総量を減らす、休暇を取得しやすくするなどの試みがさらに進むことが予想されます。2019年に導入された軽減税率のように、仕事に対しても働き方によって、負担を軽減するという考え方が定着するかもしれません。

 

例えば、労働時間の一律化をやめるという方法があります。現在では「1日8時間週40時間」という考え方が前提とされており、働き方を変える場合もこの労働時間を基準に議論がなされます。しかし、仕事内容が異なる以上、全ての仕事にこの労働時間を当てはめた議論では、負担の減らない人が出てきてしまうことは間違いありません。この溝を埋めるためにも、エッセンシャルワーカーを中心に、業務内容にあった労働時間を細かく設定していく必要があるのではないでしょうか。

 

また、一つの職場に紐づく労働者だけではなく、店舗をまたいで業務にあたる「サテライトワーカー」という存在も普及していく可能性があります。すでに飲食業や小売業など店舗で接客するタイプの業界では、サポートメンバーを設けて従業員の休暇などに対応している企業があり、従業員のライフワークバランスを後押ししています。

 

サテライトワーカーをはじめとする対面必須の仕事に就く人が、自己犠牲を強いられているという現実が浮き彫りになった2020年。より多くの人にとって働きやすい社会になるように、場所だけではなく、時間や人もより柔軟に変化していかなくてはならないでしょう。

 

▶︎「サテライトワーカー」のヒントになる制度

飲食業でも年休120日!スープストックトーキョーの働き方「開拓」

家族との時間が増えた2020年

2020年は在宅時間が大幅に増えた年となりました。その結果、家庭にも多くの変化が生まれています。

 

ここからは2020年の家庭の状況について振り返ってみましょう。

「家庭に関してどのような変化がありましたか?」という質問に対して、ポジティブな変化が起きたと回答した人が31%、ネガティブな変化が起きたという人は27%となりました。大きな変化が見られないと回答した人が38%と最も多いですが、ポジティブな変化を実感する人のほうがネガティブな変化を実感した人を上回っています。

 

とくに在宅時間が増えたことによって家族との付き合い方がこれまでと変わったと回答した人が多く、家事や趣味にかける時間が増えたことを喜ぶ回答が多く見られました。一方で、在宅時間が増えたことによる家族トラブルや、ストレスに悩んでいる人も少なくありません。それぞれの項目を詳しく見ていきましょう。

家族との距離がこれまでになく近くなった

在宅勤務により家族と過ごす時間が増えたことをポジティブな変化ととらえている人が多く、回答者の多くが子どもの成長を近くで見守れる喜びや、パートナーとの会話が増えたことを具体的な変化として挙げています。しかし、一日中家族と同じ空間で顔を合わせるという日々が長く続いたことによって、一人時間が不足し、家族とトラブルになってしまうというケースも増えてきているようです。

家族が幸せに暮らすための「ファミリー・ディスタンス」 

今後もテレワークの普及が進み、家の中で家族が同じ時間を共有する機会が増えていくと予想されるので、「ファミリー・ディスタンス」という考え方が重要視されるでしょう。家族であってもほどよい距離感を保ち、ときには一人になれる時間を作ることが、家族関係を安定させることにつながります。

 

そのためには物理的に距離を取るということが最も簡単な方法になります。しかし、住宅環境によっては、家族それぞれが自室を持つことが実現できないケースも多いと考えられます。そのため「一畳リノベーション」という形で、部屋の一角に1畳ほどの個人スペースを作る人が増えるかもしれません。最低限のスペースであっても個人の占有空間があれば、その場所にいるときは周囲も配慮がしやすくなり、同じ空間にいながらも距離を保つことができます。

 

また、自宅の近所にフリースペースを持つということがより一般的になるかもしれません。従業員の在宅勤務によって空いたオフィスや日中のホテルなど、歩いて行ける距離に仕事や趣味に使うスペースが増えていく可能性が考えられます。

 

これは「デュアライバー(二拠点生活者)」という考え方にもつながります。これまでは生活の拠点を増やすというと、都市部に住みながら地方にも家を持つというような考え方を指していましたが、2021年以降はシェアオフィスやシェアハウスなど、自宅近くに拠点を増やすという考え方に変わっていき、生活空間の幅がより広がっていくと予想されます。

家事が女性だけのものではなくなりつつある

長い間「家事=女性の仕事」とされ、共働きが進む中でもなかなか夫婦の家事分担率は変わりませんでした。それが今年は、在宅勤務によって男性の在宅時間が増えたことをきっかけに、夫が担当する家事の量が増えたという回答が数多く見られました。

 

ところが、家族全員が自宅で過ごすという時間が増えたことによって家事の総量も増加してしまい、家事負担割合は依然として変わらないという状態の家庭も多いようです。家事の負担感を減らすためには、この家事の総量を減らしていくことが重要な課題だと言えるでしょう。

共働き家庭の共倒れを防ぐには

そのためにも家事分担だけではなく、CHANTOがこれまで提唱してきた「家事分散」という考え方がよりスタンダードになっていく必要があります。夫婦だけで家事を分担するのではなく、家事のシンプル化や家事代行によるアウトソーシングなどを利用し、家事を手放して負担を分散していくことで、家事の総量を減らすことができます。

 

また昨今、有給取得や心身のリフレッシュのための「ワーケーション」が提唱されていますが、家事の負担軽減のために、自宅以外の場所で宿泊しながら仕事を行う「ワークデイトリップ」という習慣も普及していくかもしれません。家事をしなくてもいい環境に身を置き、仕事にのみ集中できる環境を作ることで、身体的な負担の軽減だけではなく、精神的な余裕も生み出すことができるはずです。

 

さらに、今回の調査では数多くある家事のなかでも特に食事の準備に負担感を覚える人が非常に多いという結果になりました。デリバリーサービスの選択肢も増えつつあるとはいえ、家計を考えるとかえってストレスになるという実情もあり、結局食事に関する家事を手放せていないという人が多いようです。

 

そこで考えられるのが、社食のようなデリバリーフードのサービスの登場です。月謝制でその都度注文しなくても毎日同じ時間帯に食事が届けられるという仕組みができれば、地域の飲食店の活性化につながるうえ、現在よりも気楽に、罪悪感なく家事のアウトソーシングができるのではないでしょうか。

仕事と育児の同時進行の難しさを痛感

2020年の緊急事態宣言下では、多くの子育て世帯が子どもの保育園や学校の休園・休校に直面しました。そのため在宅勤務をしながら子どものめんどうを見るという、これまでにない経験をした生活者からは、仕事と育児を同時に行うことはまず不可能だという声が多くあがっています。

 

現在は緊急事態宣言が解除されて学校が再開していますが、夏休みなどの長期休暇の期間は、再び親が在宅勤務をしている空間に子どもがいるという状態になります。これは一時的な問題としてではなく、中長期的に子育ての場所や時間を見直すべきでしょう。

園や学校以外の子育ての場を整える

今後、働き方同様に、子育ても時間や場所が「グラデーション化」していくと予想されます。現在は平日や日中は子どもを保育園に預けたり学校に通わせたりして、夕方以降は自宅で一緒に過ごすというケースが一般的ですが、将来的には子育てに関する選択肢も広がっていくかもしれません。

 

両親ともにフルタイムで働いている場合、子育てにかけられる時間不足に陥り、睡眠時間や家事の時間を減らして子育ての時間にまわさざるを得ないという事態が起こりがちです。また、夫婦で分担ができていない場合、どちらか一方に負担が偏ってしまうことも珍しくありません。

 

これを解消していくためには、個人の努力だけではなく、社会の仕組みから変えていく必要があります。例えば現在の時短勤務制度だけでなく、子育て中の「週4正社員」という雇用形態がもっと広まっていけば、夫婦で休みをずらして仕事と子育ての時間を切り離すことが可能になります。週休3日制が拡大すれば、夫婦でスイッチすることにより、育児と仕事が重なる時間を大幅に減らすことができるのではないでしょうか。

 

自宅での子どもの過ごし方も変わっていくでしょう。新型コロナウイルスの影響は来年以降も続くと予想されています。そのため、しばらくは子どもの在宅時間が長い状態が続くと考えられます。今回の調査では、子どもの在宅時間増加に伴う健康面や学習面の不安も数多く挙げられていました。なかでも、自宅で動画を視聴する時間が増えていることに対して危機感を覚えているという回答が多く、自宅でも教育的なコンテンツに触れる機会を増やす方法を模索している親が増加しています。

 

このようなニーズに応えるため、今後はオンライン保育園や学童がますまず拡充されることでしょう。すでに子ども向けのオンライン教育コンテンツやeラーニングなどは存在していますが、親や子ども自身がその都度コンテンツを選ぶという形が多いようです。オンライン学童という枠組みが広がれば、子どもが同世代の子どもたちとコミュニケーションを取ったり、より体系だった学びを得ることができるようになります。

 

さらに注目したいのが公園の存在です。コロナ禍において、公園の重要性を改めて痛感したという生活者は多く、子どもの遊びの幅を広げる場として活用しているという人が増えています。この十数年の間、公園からは遊具が減り、大声を出すことや球技を禁止するなど厳しいルールが設けられてきました。子どもにとって憩いの場ではなくなってしまった公園を再整備することで、地域に子どもが安心して快適に過ごせる場所が創出されることが期待されています。

 

▶︎「週4正社員」のヒントになる制度

「週4以下正社員」もOK!サムライトの多様な働き方が社員の夢を応援

在宅時間の増加によって運動不足に

通勤がなくなったことでストレスから解放されたという人は多いですが、マイナスの効果もあります。その一つが、運動不足です。これまでは通勤や社内の移動など、無意識のうちに行っていた運動が減り、基礎体力の低下を感じている人が増えています。

 

リモートワークが進みつつある今、従業員の健康は個人の問題だけにとどまらず、企業としての課題になってきています。従来のような健康診断やメンタルヘルスのサポートだけではなく、基礎体力向上に関する取り組みに対しても企業が積極的に行うことが、中長期的には企業にメリットをもたらすと考えられます。

 

漠然と健康管理をするのではなく、企業が「健康KPI」を設定し、数値目標を立ててシステマティックにサポートすることも重要です。そのためには有給取得の促進や産業医によるメンタルヘルスマネジメントなどは継続しつつも、基礎体力の維持や向上を図る必要があります。業務時間外に個人に努力を求めるだけではなく、業務時間内に運動の時間を設けるなど、企業としての課題と捉えることが重要ではないでしょうか。

 

また、コロナ禍以前は業務提携したジムを利用できることを福利厚生としている企業もありました。しかし、在宅勤務が浸透していけば自宅できる運動にも注目が集まると考えられます。すでに、フルリモートワークを実施する企業の一部ではオンラインで開催されるヨガ教室などを福利厚生のひとつとして提供しています。今後、このような「eトレーニング」がより注目されていくでしょう。

ジェンダーギャップの変化

世界経済フォーラムがジェンダーギャップ指数を毎年発表しています。2020年の日本は世界の中で121位という結果に。長年、男女間のギャップを減らしていくことが重要と言われながらも、数字上では大きな変化が見られません。誰もが生きやすい暮らしはどうしたら実現できるのか?仕事と家庭のなかのジェンダーギャップについて、CHANTO総研でも独自に調査を行いました。

職場のジェンダーギャップは当たり前?

職場におけるジェンダーギャップが改善されたかについてアンケート調査を行ったところ、意外にも「あてはまるものがない」「わからない」という回答が7割近くを占めるという結果になりました。これは男女別に数値をとってもほぼ同じ割合を示しています。

 

このような結果になった理由はいくつか考えられますが、そのひとつとして職場においてジェンダーギャップがあることが当たり前になっているため、課題意識が芽生えていないという可能性が考えられます。また、現在は女性が家事や育児の大部分を担っているため、女性自身が昇進を望んでいないというケースもありえます。

男女の家事分担は進みつつある

家庭においてもジェンダーギャップが大きいとされている日本ですが、今回の調査からは意外な傾向が見られました。

 

依然として女性の家事分担率が高く、また男女で家事分担に対する認識のズレが生じてはいる可能性があるものの、今年は男女ともに在宅時間が増えたことによって男性の家事・育児の分担割合が高くなっています。その影響もあってか、「自分とパートナーの家事分担率について教えてください」という質問に対し、男女ともに5:5と回答する人が多いという結果になりました。年代別に見ると、35歳〜39歳の層がその傾向が顕著になっています。

 

35歳〜39歳の層は男女ともに今まさに保育園に子どもを預けながら働いているという人が多い年代です。そのため、家事・育児の分担を常にアップデートし、家族が最も快適な状態を意欲的に模索している層とも考えられます。

2020年で議論を止めず、より多様な生き方を探る

テレワークの導入をきっかけに、2020年はこれまで以上に、多様な働き方・生き方について考える機会が生まれました。いっぽうで、働き方を変えられない人、かえって負担が増えたという人も少なくありません。「2020年は働き方が良い方向に変わった」で議論を止めず、2021年もより多くの人がより多様な働き方・生き方を実現できるように、 CHANTO総研では引き続きメッセージを発信していきます。

 

CHANTO総研2020白書のダウンロードはこちら

 

※調査方法 【対象者】・20〜59歳の有職の男女・全国 ・846サンプル 【調査方法】 インターネット調査 【実施時期】 2020年10月16日〜25日

KEYWORDS関連キーワード

あなたにオススメの記事

仕事テーマ : 【社会問題】その他の記事

社会問題
もっと見る