コピーしました
お使いの端末は
この機能に対応していません

現代女性の生きづらさ、ハイヒールを履いたお坊さんはどう答える?

仕事

2021.01.30

西村宏堂さん

仕事をしながら子育てをしていると、職場、家庭、ママ友などとの人間関係や、自分のアイデンティティについてモヤモヤしたり、悩んでしまうこともありますね。

 

僧侶でメイクアップアーティスト、さらにLGBTQ活動家でもある立場から、自分らしく生きることの大切さを発信している西村宏堂さんに、現代女性が前向きに生きていくためのヒントを伺いました。

現代女性の「生きにくさ」の正体とは?

── 男女平等、女性の社会進出が叫ばれている現代。でもいまだに弱い立場に置かれている女性も多いと思います。現代女性の「生きにくさ」の理由とは、何だと思われますか?

 

西村さん:色々な理由があると思いますが、私は歴史の中で、男女を分けた方が都合が良かったこと、そしてそれが今の状態に繋がったからなのかなと感じています。

 

今までの歴史で、人は「領土を広げたい」とか「自分のチームを大きくしたい」という意思があったと思います。その中で権力者が人の役割を男女に分けて、効率化を試みたり、決まった価値観で人を教育してきたのでしょう。

 

その結果、「女性は子どもを産んで家庭を守るものだ」などと決めつけられ、女性が弱い立場に追いやられたのではないでしょうか?また違う意見を持つ人は排除されたりして立場が弱くなったということもあるかと思います。

 

── 望む未来を効率的に叶えるために弱者が作られ、そこに皺寄せがいってしまうという構図ですね。

 

西村さん:文明の歩みは複雑なものだと思います。人間にはさまざまな欲があるので、「自分たちさえよければ…」と考えたり、異質な人たちを排除しようとしたりすることは、人が人である限り、なくすことはできないのかもしれません。

西村宏堂さんインタビュー

── そんな背景から生まれた「生きにくさ」を解消するために、今私たちはどうすればよいでしょう?

 

西村さん:私たちの意識を変えることが大切です。これからは「世界平和や思いやりこそが本当の幸せだ」と気づくことが大切だと思います。全ての人が対等に活躍できる可能性が与えられることで、新しいアイディアが生まれ、人類の進化に繋がると思います。

 

今は政治家やリーダーとして社会で活躍する女性が増えつつあります。女性は昔のように子どもを産み育てるだけでなく、それも選択肢にしながら、社会、そして自分のために生きられる時代がきていますよね。女性自身が本来自分は男性と対等な存在なんだと強く確信することが必要だと思います。

 

── 女性自身が自分の価値に確信を持つことが重要なのですね。

 

西村さん:そうです。しかしそのためには今の制度について、もう一度考える必要があると感じます。

 

例えば「レディースデー」「女性限定割引」などは女性を優遇することで、得をしたりラクができますが、一方で逆に力を奪われているとも言えます。男女を分けることをできるだけ減らしていくことで、対等な関係を築けるようにシフトできると思います。自分が得をしても、さらに重要な権利を失っていないかを、しっかり見極めることが大切です。

 

── レディースデイなどは、元々は女性利用者が少ないサービスへの集客のために作られたものですよね。しかしそれが浸透した後では、「女性は得してるんだからいいじゃないか」と言われてしまう原因にも繋がってしまうということでしょうか。

 

西村さん:そう思います。例えば、僧侶の修行に参加する際に、私の宗派では男性は髪の毛を3ミリに剃らないといけないけれど、女性の修行僧は肩にかからない長さなら良いというルールがあります。

 

しかし女性に限らず、男性の修行僧だって剃りたくない人はいます。これは、修行が終わった後に、男性の僧侶は我慢してきたんだから、女性の僧侶は男性の言うことを聞けと言われるきっかけにもなってしまうと思います。つまり、女性の発言力が失われてしまうという原因にもなると思うのです。

働く人、妻、母、女…「自分って何?」と迷うときは?

西村宏堂さんインタビュー2

── 社会で働く自分、妻としての自分、母としての自分、女性としての自分。現代の女性は色々な「自分」を持っていて、ときに「自分とは何だろう?」と迷ってしまうことも。そんなとき、私たちはどうしたらいいでしょう。

 

西村さん:私たちは流動的なアイデンティティを持っているので、一つに絞ることはできませんし、全てを完璧にこなすことも難しいと思います。自分は何だろう、と追求するよりも、それぞれの分野で得意な部分を伸ばすことを楽しんでみてはいかがでしょうか?

 

私はメイクアップアーティストであり、僧侶でもあります。メイクは元々好きだし、たくさん練習してきたので自然と自信が持てています。一方で、お坊さんの仕事は、もっと勉強が必要だと感じています。どちらも完璧にはできません。これは当たり前のことです。それでも、それぞれの分野で得意なことを見つけて、そこを伸ばすようにしています。

メイクアップアーティストとしてミス・ユニバースで活躍する西村さん。出場者にメイクを施す西村さん(左)、ミス・ユニバース2019のバックステージの様子(右)

 

例えば、メイクであれば、私は特殊メイクはできませんが、エレガントなメイクは自信があるので、そこを追求して楽しんでいます。

 

僧侶としては、お経を覚えることは苦手だけれど、わかりやすい例えを使って仏教の話しするのは得意なので、表現方法を磨くように心がけています。楽しめることがあれば、それぞれのアイデンティティにやりがいを感じられます。

 

── 得意分野がない場合はどうすればいいのでしょう?

 

西村さん:得意か不得意かは、自分から見た視点によるものだと思います。というのも、仕事でも子育てでも、自分ではできて当たり前だと思っていることが、実は他人からは羨ましがられるものもあるのではないでしょうか。そのことに自分で気づくことが大切です。

 

例えば育児なら、子どもと外で遊ぶのは苦手でも、子供と一緒に料理を作るのが楽しいと感じられるのであれば、料理の部分をさらに伸ばしてみたらいかがでしょうか?

 

逆に苦手な部分は、助けを求めることも大切です。真面目な人ほど、苦手なものをなんとか克服しなくてはと頑張ってしまいます。

 

私の両親はスポーツが苦手だったので、外で遊ぶのが苦手でした。そこで私は小さい頃に親と外で体を動かして遊ぶことが少なかった代わりに、スポーツ教室に通っていました。全てを自分でまかなうことは難しいと思うので、そこまで真面目にならなくても良いと思います。

 

── できない部分に注目して「もっと頑張らなくては」と思ってしまうことが多いですが、もっと肩の力を抜いていいんですね。

 

西村さん:頑張りすぎて我慢をすることが必ずしも良いことではないと思います。「自分が元気で幸せでなければ、周りの人を幸せにすることはできない」ということを理解して、バランスよく休んだり、人の助けを借りられると良いと思います。

他人の幸せがつい羨ましくなってしまうときは…

西村宏堂さんインタビュー3

── 自分よりも活躍している人や、容姿のいい人を羨ましく感じて辛いときは、どうすればいいでしょう。

 

西村さん:私もよくそう感じてしまいます。しかし、羨ましいと思う相手について知れば知るほど「あの人も人間なんだな」と気がつけるはず。すると少しは気楽になれると思います。

 

私はメイクアップアーティストとしてミス・ユニバースの世界大会で各国代表者のメイクをしました。彼女たちはみんな美しくて、スタイルもいいし、お話も上手だと思っていました。

 

みなさん優秀ですが、おっちょこちょいをしたり、お腹が減って元気がなくなったり、大会の前は緊張して感情的になる人もいます。実際に彼女たちにメイクをして、近い場所で関わってきたからこそ、みんな私たちと同じような感情を持つ人間なんだと実感できました。

 

私は彼女たちと自分を比べて辛いと感じたことがありますが、よく考えてみると、私も言語や芸術が得意だったり、私のことをとても大事にしてくれる友達もいます。

 

そしてビジネスやキャリアで成功している人でも、みんなそれぞれの悩みがあると思います。 才能があるとか、有名になるとかいうことは、必ずしも幸せとイコールではないと思います。優れた容姿や財産、能力がなくても、家族と楽しい時間があったり、友達との信頼関係が安定していることって、実は幸せなことではないでしょうか。

 

仏教では「小欲知足」、欲張らずに、足るを知るという言葉があります。相手と比べすぎずに、自分がすでに持っているものの価値を忘れないようにしたいですね。

 

 

みんなが平等であることを意識し、今までの“当たり前”に流されず、自分の得手不得手や気持ちをあるがままに認め、いい部分を伸ばしていくことの大切さがわかりました。

 

PROFILE 西村宏堂さん

浄土宗の僧侶であり、ミス・ユニバース世界大会などで各国代表者のメイクを行なってきたメイクアップアーティストとしての顔も持つ。LGBTQでもある独自の視点から「性別も人種も関係なく皆平等」というメッセージを発信。著書に「正々堂々」(サンマーク出版刊)。

 

取材・文/野中真規子 撮影/中野亜沙美

あなたにオススメの記事

仕事テーマ : 【ハラスメント】その他の記事

ハラスメント
もっと見る