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増えるコロナ禍の産後うつ「ならない人の傾向と対策」

女性の健康

2021.08.09

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コロナ禍、産後にうつ傾向に陥る女性が増えています。

 

「もともと女性は、月経前、産後、更年期にうつになりやすいもの。コロナ禍、人と対面で交流するのが制限され、そのリスクは高まっています」と話すのは、産婦人科医の谷内麻子さん。

 

助産師の桑原さやかさんは、家族が在宅ワークになったことで、夫の昼食作り、会議中の赤ちゃんの泣き声といった新たな悩みを抱くママたちもいると指摘します。

 

「出産はスポーツの世界大会で大けがをしたようなもの」。こんなふうに表現する産婦人科医がいるように、産前、産後はさまざまなサポーターの協力を得て、初めて健やかに過ごすことができる時期。

 

産後、心身ともに健康に子育てをしていくためには、どんな準備、対策ができるのでしょう?妊娠中から考えておきたい専門家とのつながり方や夫婦コミュニケーションのコツ、産後の過ごし方について、谷内さん、桑原さんに聞きました。

イメージ共有できている夫婦は、産後うつリスクが低い

── コロナ禍、産後うつ傾向になる女性の増加が問題になっています。その予防のためにできることを教えてください。

 

谷内さん:

大きく分けて、2つあります。1つめは、産後に栄養と睡眠をきちんととり、ストレスを逃がしながら生活すること。2つめは、妊娠や出産、産後の生活について相談できる相手を確保することです。

 

── 里帰りがしにくかったり、両親、義両親に手伝いを頼みにくかったりするコロナ禍、健やかに生活していくには、パートナーとの協力体制はより重要に思えます。

 

谷内さん:

そうですね。妊娠中に、母親が遠慮せずパートナーを頼れる環境を作っておけると理想的です。お互いに産後の生活をシミュレーションしながら、どのように協力できるか具体的に話し合い、書き出しておくといいでしょう。

 

桑原さん:

パートナーと産後のイメージを共有することは、とても大切です。実際に、ある市町村の両親学級では、産後の生活をイメージしながらお互いがどのように過ごしたいのか、何ができるのかを話し合ったり、専用の記入シートに書き出して共有したりするワークを行っています。

 

しかし、それが叶わないご家庭の場合もあるかと思います。パートナーとイメージを共有できない場合でも、妊婦同士の仲間グループでのワークを通した支え合いは、産後うつリスクを低くすることができます。私が産後うつ予防のために大切だと思っていることは、「寄り添い、共感してくれる存在がそばにいること」です。

 

例えば、妊娠中に妊婦同士の仲間グループで産後のイメージを共有していたグループと、そうでないグループを比べる研究をしたことがあります。

 

前者のグループでは、親としての理想像やストレス解消法を共有しつつ、産後はどのようにサポートしあうか、助けを求めたいときはどう声をかけるか、問題が起きた際にはどうやって外部の専門家に頼るかなどをグループワークしました。

 

すると、イメージを共有していた母親たちしていない母親たちに比べて、産後うつのリスクが低く、かつ母親が母親であることに対して肯定的でいられたのです。

散歩や家庭菜園が産後うつ対策になる理由

── 積極的にリアルな情報をとりに行くことが大切なんですね。コロナ禍でも、友人などの先輩夫婦にオンラインで話を聞きつつ、夫婦で話し合うことはできそうです。産後の生活の中でも、必ず夫婦で決めておきたいことはなんでしょう?

 

谷内さん:

確保したいのは、母親の睡眠時間、そして母親が子どもと離れる時間です。

 

産後の母体はただでさえボロボロですし、慣れない産後の生活は母親の心身に響きます。特に3か月ぐらいまでは、昼夜問わず眠れるときは眠って、体を回復させましょう。

 

週に1時間でも、母親が一人きりでいられる時間をつくるのも大切です。

 

── 赤ちゃんと離れるのを不安に思うママもいそうですが…。

 

谷内さん:

産後は母子が一緒に過ごすことで関係性が強まっていくのですが、手のかかる赤ちゃんの場合、逆にストレスがたまってしまうこともあります。

 

一時的にパートナーが赤ちゃんと過ごす時間を作ると、お世話に慣れるいいチャンスにもなりますよ。パートナーのお世話に不安があるなら、近所に散歩に連れて行ってもらうのもおすすめです。

 

── パートナーが散歩に出て、ママが家でのんびりしたり、昼寝をしたり、オンラインでお茶会をしたりするのもいいですね。

 

谷内さん:

コロナ感染が怖くて散歩は…という人もいるかもしれません。でも、適切な感染症対策をすれば、近所の散歩はできます。

 

日光を浴びると、授乳中のママが陥りやすいビタミンD不足の解消にもなり、うつ予防にもなるとされています。日光を吸収するために、体の一部に手のひら一枚分、日焼け止めを塗らない箇所をつくりましょう。

 

桑原さん:

産後1か月を過ぎれば、赤ちゃんを直射日光に当てない、気温の高い時間帯を避ける、帰ったらうがいと手洗いをするなどに気をつけていれば大丈夫です。

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── 赤ちゃんとママで散歩に出るのもストレス解消にはよさそうですね。2歳未満は、呼吸の邪魔になるためマスクは不要と聞きます。ほかに、おすすめのストレス解消法はありますか?

 

桑原さん:

ストレスを逃がすという意味では、育てるのが簡単な野菜でプチ家庭菜園もおすすめです。

 

庭でもベランダでも手軽にお世話ができますし、ついでに日光浴にもなります。花や実がなれば達成感がありますし、有機無農薬野菜を育てることは食育にもつながります。

 

子ども以外のポジティブな会話のタネができるので、パートナーシップや周囲とのコミュニケーションにも役立つと思いますよ。

 妊娠中から専門家の手を借りる習慣を

── 妊娠や出産、産後の生活について相談できる相手を確保する必要性があるのは、なぜでしょうか?わからないことがあると、つい本やウェブサイト、SNSで調べたくなりますが…。

 

桑原さん:

専門家に相談するメリットは、個別性のあるアドバイスを得られることです。本やネットで答えを探す人もいますが、育児書や子育てサイトには一般的な話、SNSにはあまり起こりえない奇抜な話や真偽が疑わしい情報が掲載されていることもあります。

 

ただでさえ不安になりやすいコロナ禍、家族だけでなく専門家の助けを借りながら、いかに楽しく健康的に子育てをできるか、妊娠中からよく考えておく必要があります。

 

今、もっともおすすめしているのは、東京都助産師会の開催する無料オンライン相談でしょう。また、ワンコイン価格でオンライン上のお茶会、おしゃべり会を開催している開業助産師もいるので検索してみるのも手です。

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── 海外での出産や国際結婚、LGBT、若年、ひとり親、多胎児など事例の少ない出産をフォローする「じょさんしオンライン」といったサービスもあります。

 

谷内さん:

北欧の「ネウボラ(※1)」を導入している自治体もあります。妊娠期から子どもの小学校入学まで、1人の妊婦につき1人の保健師などがつき、産前、産後の生活を切れ目なくサポートする仕組みで、拠点を持つものもあれば、個々に派遣されるものもあります。

 

アメリカの「ドゥーラ(※2)」文化を参考に、産前、産後の女性にサポーターとなる専門家を派遣する自治体も。同じサービスは、民間団体の「ドゥーラ協会」でも受けられます。

 

── 産後ケア施設事業を提供している自治体もありますね。

 

桑原さん:

里帰り出産ができない今、産後ケア施設はとてもおすすめです。

 

産後でダメージを受けた体をしっかり休ませ、その上で授乳や沐浴、産後の生活についての相談や指導を受けられるもので、宿泊タイプや訪問タイプ、日帰りタイプなどがあります。上の子と一緒に宿泊したり、パートナーや両親と一緒に指導を受けられたりする施設も。

 

谷内さん:

母親学級、両親学級、新生児訪問など病院、自治体による対面でのフォローも再開し始めています。コロナ禍で抵抗があるかもしれませんが、産後うつ対策のためにもうまく活用してほしいですね。産後の生活を想像したり、近所のママやパパとつながったり、専門家につながれたりするいい機会ですよ。

 

PROFILE

谷内麻子(たにうち・あさこ)さん

谷内麻子さん

1995年、聖マリアンナ医科大学を卒業。2008年、同学産婦人科講師。2018年より庄司産婦人科に勤務している。日本産科婦人科学会専門医、日本女性医学学会認定女性ヘルスケア専門医。女性の生涯を通じたメディカルパートナーとして医療を提供している。2021年より「産後ママSOSプロジェクト」に参加。

 

桑原さやか(くわはら・さやか)さん

桑原さやかさん

北里大学大学院修了。聖マリアンナ医科大学病院 総合周産期母子医療センターに12年間勤務した後、町田市保健予防課、世田谷区立産後ケアセンター桜新町などを経て、2015年に開業。出張専門開業助産師として産後4カ月未満の母子の産後ケアを実践中。2017年から大学教育に携わり、東京医療学院大学の助産学教員として勤務。2021年より「産後ママSOSプロジェクト」に参加している。

 

取材協力:産後ママSOSプロジェクト
2021年3月、慶應義塾大学SFC研究所 健康情報コンソーシアム(https://hip.sfc.keio.ac.jp)が中心となり、SNS上にあふれる産後ママのリアルな悩みやSOSを分析し、課題を見つける活動として始動。プロジェクトには、医療や保育分野の専門家のほか、産後のママも参加。3月5日を「産後ママスマイルデー」(https://www.value-press.com/pressrelease/265790)に制定、記念日登録した。

 

取材・文/有馬ゆえ ※プロフィール以外の画像はイメージです。

(※1)フィンランドの子育て支援サービス。妊娠期から子どもの小学校入学まで、1人の妊婦につき1人の保健師がつき、産前、産後の生活を切れ目なくサポートする仕組みで、国が主導し、市などの自治体が運営している。
(※2)アメリカで始まった、妊娠・出産の過程で女性の心理的、身体的、社会サポートをする職業。アメリカでは妊娠や出産、産後の心強い味方として知られ、医学的研究でも効果が示されている。

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