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監督もコーチも怒らない!ドイツの部活で学んだ教訓

子育て

2020.09.11

2020.10.10

外国人の夫・トニーさん、中学生のトニーニョくん(15歳)と3人で暮らす漫画家の小栗左多里さん。

 

夫婦で子育てをしていくなかで「異文化で育った者同士はどうやったら折り合えるのか?」と試行錯誤した経験から、考えたことを語っていただきました。

 

今回のテーマは、「子どものスポーツと部活動」について。日本とはまったく違う外国の子どもとスポーツとの関わり方や親の対応に驚きながらも「いいなと思えた」という小栗さん。どんな体験がそう思わせたのでしょうか。

 

監督もコーチも怒らない!ドイツの部活で学んだ教訓

日本で、部活指導の見直しが行われるというニュースを読んだ。地域活動として、地域の団体などが指導に当たるよう変えていくらしい。いい動きだと思う。そして、息子の野球サークルのことを思い出した。

 

ドイツでは、というよりヨーロッパで野球をやる人は少ない。しかし息子の小学校はドイツ人とアメリカ人が半々で、高校まであったため、野球サークルには結構な人数が在籍していて、ベルリンではかなりの強豪である(まあ参加する学校は少ないけれど)。息子はほぼ未経験だったが、急に6年生でそこへ入った。

 

日本でなら遅すぎるし、永遠の球拾いが待っていたかもしれない。しかし、そのサークルでは入った翌週から試合に出られると言われた。なぜかというと「対外試合して勝つためのリーグ」と「内輪で楽しむリーグ」に分かれているからである(ここでは簡単に前者をA、後者をBと言う)。

 

AとBは掛け持ちもできるが、息子は当然Bのみに登録した。振り分けられたチームは「シアトル・マリナーズ」。いきなりイチローとチームメイトになるとは……成長を思うと目頭が熱い。ユニフォームは本家と同じデザインの市販品を買う。オリジナルを作るより簡単だ。

 

ふざけているかと思いきや、全員一生懸命

そして練習に1、2回出た後、試合当日を迎えた。Aの試合も複数あるので、グラウンドには市内のいろんな学校から、子供とその家族が集まってきている。アメリカに関係ある家が多いため英語が飛び交っていて、まるでアメリカの郊外のようだ。

 

さて、Bは校内の別チームと対戦する。「幼稚園〜小学校低学年」「小学校中〜高学年」などに分かれていて、女の子も何人かいる。この日の対戦相手は「マイアミ・マーリンズ」。対戦相手に不足はないが、試合はグダグダになるかもと危ぶんでいた。しかし「5回まで」「1回につき5点以上入ったら交代」などの特別ルールで行われ、ピッチャーはたいていAにも入っていてそれなりに速い球を投げる。緊張感もあるし、声援も飛んでにぎやかだ。

 

しかし驚いたことに、監督とコーチはどんなプレイにも一切怒らない。打てなくても、球が取れなくても「惜しい!」とか「悪くない!」とかめちゃめちゃ褒める。褒めに褒めを重ねてくる。褒めの波状攻撃。それで気が緩むかといったらそんなことはなくてみんな一生懸命。ミスした子は落ち込み、ほかの子に励まされている。

 

この「褒めの天才」の監督もコーチも、自ら手をあげた保護者だ。ポイントは自分の子供がいるチームを担当できること。週末、自分の子供と過ごすことにもなる。さらにはコーチの子ども(幼児)がベンチに侵入してくることもあって、後半はその子を抱っこしてバナナを食べさせながら「走れー!」って叫んでもいた。そして走って間に合わなかったとしても、「よくやった!」と褒められるだけなのだ。

 

試合が終わればまるで“お楽しみ会”

さて試合後は持ち回りで、誰かの家が持ってきた軽食をみんなで食べる。こんな時、私は巻き寿司一択。「日本人なら巻いとけ」である。とにかく巻いとけば間違いないのだ。この日も出した瞬間、「SUSHI!?」と親まで盛り上がってあっという間になくなっていく。

 

ほかに資金集めもかねて、BBQスタンドでパテを焼いて作るハンバーガーも売るのだが、巻き寿司とこの担当を同じ日に引き受けたので、トニーはハンバーガー屋さんと化している。試合以外は穏やかでのんびりしていて、レジャーっぽい雰囲気に溢れていた。

 

そんな週末が何回かあって、1シーズンが終了した。その後日本へ帰ったので、在籍したのは1年半くらい。それでも試合を何度も体験できたことをとても感謝している。プレッシャーがあり、ミスがあり、声援があり、活躍があり、全力で走る、「試合」というもの。息子はデッドボールを受け、ヒットを打ち、勝ったり負けたりした。野球は彼の中で、最初から最後まで”楽しいもの”として思い出に残った。

 

勝ちを目指すことも素晴らしい。私もそんな部活をやった。でも、楽しむことを目的としたものがあってもいいんじゃないだろうか。あんまり厳しくなければ、「試合」を体験できる子が増えるかもしれない。苦しくないと得るものがない、なんてことはない。

 

ベルリンでもAの場合、選ばれないと試合に出られず、怒られることもあるだろう。とはいえ、日本とは大きく違う気がする。サークルに入る前、どんなものかとAの高校の練習試合を見に行ったことがある。試合開始となったが、チームのみんなが守備についてもピッチャーとキャッチャーがいない。

 

最後にキャッチャーと共に登場したピッチャーは、ガムを噛んで首を回しながらだるそうに歩いてきた。かつて見たことがないチンタラ高校球児。あまりのことに笑いつつも「まずそのガムを捨てろ」と思う、日本育ちのわたくし。しかしここではチンタラOK、ガムOKなのである。カッコつけてもいいのだ。メジャーリーガーも何か噛んでるからいいのだ。もちろん丸刈りの子は一人もいない。ロン毛はいる。

 

何に重きを置くか、誰がどんなモノサシで判断するのか。深い印象を残して、我が家の野球シーズンは終わった。

 

 

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文・イラスト/小栗左多里

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