2020.02.24
「『こんな家に生まれた自分が憎い』虐待を経験した男性が、発信するようになるまで」で話を聞いた東京都の会社員・橋本隆生さん(活動名)は、父親と継母の虐待を受けて育ちました。
現在は講演をしたり、虐待経験者3人で「internaReberty PROJECT」(インタナリバティプロジェクト)というグループをつくったりと、当事者目線の発信を行っています。
虐待への関心は高まっており、児童相談所への通報件数は増加傾向。2020年4月には、親による体罰を禁止などを盛った改正児童虐待防止法と改正児童福祉法が一部を除いて施行されることになり、少しずつ、社会も動きはじめています。
虐待経験者から見て、今の社会に必要なことは何なのか。私たちには何ができるのか。
橋本さんに聞いてみました。
「大人との繋がりがほしかった」
──虐待を受けていた当時を振り返って、橋本さんにとって必要だったものは何だったと思いますか?
橋本さん:
僕は、他の大人との繋がりを欲していたな、と思います。僕たち家族には親戚もおらず、父親の転勤が頻繁で小学校の6年間で5回引越ししたこともあり、学校の先生と信頼関係を築くことも難しかったので…。
ただ、親が周りとの関わりを制限すると子どもにはどうしようもない。なので、周りの人が目を光らせるしかないのかもしれません。今は僕が子どもの頃よりも世間の関心は強くなっていると思いますが。
──橋本さんが前編でも話していたように、周囲との繋がりがなければ、子どもたちは虐待されるのはおかしいことだと気付くこともできないかもしれません。
橋本さん:
そうなんです。子どもたちには「自分の家だけが全てじゃない」ということを知ってほしい。僕もそうでしたが、周りと比べることができないので「殴られるのは仕方ない。これが普通なのかな」と思ってしまう。そうすると声をあげられません。
なので、子どもたちに家族ってどういうものなのかを伝える活動ができないか計画を練っています。
さらに、僕は親たちに対する支援や声掛けも大切だと思って活動しています。
──虐待をしてしまう側への支援ですね。橋本さんから見て、親に対してはどういったサポートが必要だと感じますか。
橋本さん:
もちろん虐待はあってはならないことですが、僕も親になって、子育ての大変さも分かるようになりました。子育てのストレスが虐待に繋がることもあります。完璧な親などいないし、1人で背負いこまないでほしい、というのは伝えたいです。
また、児童養護施設などの視察を通して、虐待が起こる家庭では夫婦仲も悪いことが多いと知りました。最小単位なので見過ごされがちですが、夫婦関係の改善によって防げる虐待もあるのではないかと思っています。