長く続く人生を凝縮した1600㎞の歩き旅
映画を観始めると彼女はさっそく、歩き出します。持ち上げるのもやっとのリュックを背負い、フラフラと歩き出します。一日あたり17㎞、三ヶ月かけて1600㎞を歩破する予定を立てて出発しますが1日目から愚痴が止まりません。
しかし、彼女は歩きながらいろんな事を思い出します。過去にどんな事があったか。どんな失敗をしたか。どんな後悔をしたか。その思い出がフラッシュバックされ、観客は徐々に明かされる彼女の過去を知っていくことになります。 その過去がまぁ壮絶なこと!1600㎞を女性一人で歩いて旅をするだなんてよっぽどの事情がなきゃやらないよな…と何となく想像しておりましたが予想以上に壮絶な過去を背負っている事が明かされていきます。
しかし、彼女はそんな暗い過去を背負いながらも旅を続け、様々な人に出会い、歩き続けます。旅の始まりでは愚痴を吐き、苦しい表情で歩いていた彼女ですが、旅が終わりを迎える頃には彼女の背負っていた荷物は軽くなり、清々しい表情に変わっていきます。 最初は「本当に歩き切ることができるのか?」と不安なままでしたが、そんな彼女を見ているうちに、気がつくと我々観客も癒され、清々しい気持ちになっているのです。
この人の人生、トレイルよりもよっぽどスーパーオフロード
と、ここまで書いてきて「壮絶な過去って何だよ!」と皆さん、思っているかも知れません。詳しくは映画をご覧頂きたいのですが…少しネタバレを含みますが一旦、紹介しましょう。主人公の女性は「父親がDV→両親の離婚→最愛の母と死別→弟はアルコール中毒→自暴自棄に突入→覚せい剤と男に溺れる日々→自分も離婚」というコースの末、旅のスタート地点に辿り着きます。
歩いている場合か!とすら思いますよ。僕は彼女の過去が明かされていくうちに何度も思いました。「ヤケになっちゃダメだ」と。けれど、観終わる頃には、「いろいろあっても、やっぱり人生って素晴らしいよな」って思っているから不思議。この映画の魅力ですね。