今回は主にJRの特急列車のお話をします。おそらく、特急列車に対するイメージは世代によって異なると思います。なぜ、イメージが異なるのでしょうか。さっそく、見ていきましょう。

変わりゆく特急列車の顔

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特急列車に対するイメージは旧国鉄(国鉄)がJRに変わった1987年(昭和62年)を境に大きく変わると思います。国鉄時代を知っている方なら「特急列車」と聞くと、クリーム色と赤色の帯を巻いた車両を思い浮かべるはず。そして、前面に掲げられたカラフルなヘッドマークを懐かしく感じることでしょう。

 

一方、JRしか知らない世代ですと、個性的なフォルムをした特急列車をイメージするのでは。もしかすると、2000年以降に生まれた方なら「ヘッドマーク」という言葉自体を知らないのかもしれません。 実は国鉄とJRの車両デザインに対する考え方は大きく異なります。この違いが最もダイレクトに反映されたのが特急列車と考えていいでしょう。

ヘッドマークが楽しい国鉄の特急列車

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ここからは国鉄とJR、それぞれの特急列車を見ていきます。まずは国鉄の特急列車から。国鉄は全国一律の車両デザインでした。そのため、全国どこでも「特急列車」といえば、クリームの下地に赤帯の塗装、そして前面にはカラフルな飾り看板・ヘッドマークが掲げられました。 イラスト付きのヘッドマークは戦前の特急列車から掲げられていましたが、一時期は文字のみの時代もありました。再びイラスト付きのヘッドマークが復活したのは昭和後期のことです。

 

ヘッドマークの基本的な形状は電車・気動車は四角形、客車を連結している機関車は丸形でした。例外は東京と大分・南宮崎方面を結んでいた寝台特急「富士号」。「富士号」は富士山の形を模したヘッドマークが掲げられました。「富士号」以外にも山にちなんだ列車名はありましたが、ヘッドマークの形状は四角形や丸形ばかり。やはり、富士山は別格なのでしょう。

 

ほとんどのヘッドマークは列車名にちなみ、自然や動物が描かれていました。そんなヘッドマークにおいて例外だったのが東京と伊豆半島を結んでいる特急「踊り子号」です。踊り子号」がデビューしたのは1981年(昭和56年)のこと。同列車の名称はノーベル賞作家、川端康成の小説『伊豆の踊り子』に由来します。当時、小説から列車名になったケースはほとんどありませんでした。

 

そのため、ヘッドマークには美しい踊り子の横顔が大きく描かれています。デビューから30年以上が経過していますが、いつ見ても新鮮ですね。なお、「踊り子号」に使われている185系の引退が迫っています。撮影はお早めに。

個性豊かなフォルムをしたJRの特急列車

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国鉄は1987年に民営化し、今日のJRが発足しました。JRになり最初に登場した特急列車がJR九州の783系です。前面はヘッドマークをなくし流線型を採用。前面展望を重視した車両となりました。JR東日本初期に誕生した特急列車651系やE351系はLED式のヘッドマークを採用。列車名だけでなく、発車時刻や行先も表示され、次々とイラストが変わるヘッドマークは多くの撮り鉄を悩ましてきました。ただし、車両自体が個性的なので、従来と比べるとヘッドマークが地味に映ったことは否めません。

 

そんなJR東日本の特急列車もヘッドマークが省略された前面デザインになっています。JR発足時にデビューした特急列車も引退を迎えている昨今。JR東日本からヘッドマークが消えるのも時間の問題でしょう。

 

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JR西日本はJR九州と同様、当初からヘッドマークなしの特急列車を製造しています。例外は気動車特急の187系ですが、こちらは文字のみのヘッドマーク。JR西日本の営業特急列車の中で、イラスト付きのヘッドマークがあるのは岡山駅と山陰地方を結んでいる特急「やくも号」のみとなりました。

 

一方、JR化後も継続的にヘッドマーク付きの特急列車を製造しているところもあります。それがJR北海道とJR四国です。個人的に気に入っているのが札幌駅と釧路駅を結ぶ特急「スーパーおおぞら」のヘッドマークです。2羽の鶴が楽しそうに動く姿は何ともユーモラス!YouTubeで「特急 おおぞら ヘッドマーク」と検索すれば見られます。

 

2017年にデビューしたJR四国の2600系にはシンプルながらイラスト付きのヘッドマークが採用されています。2018年に製造された2700系にもイラスト付きヘッドマークが引き継がれることを期待しましょう。

 

このように、イラスト付きのヘッドマークは大きく減少しているのが現状です。一方、本屋に鉄道コーナーに行くと、かつてのイラスト付きヘッドマークを紹介した本があります。ヘッドマークのイラストを子どもに説明しながら見せると、日本の地理の勉強にもなりますよ。

 

文・撮影/新田浩之