education201812

戦後の家制度の崩壊に伴って、内孫・外孫という呼び方も最近ではあまり聞かれなくなり、長男家の男子の孫だけに節句のお祝いをする・財産を残す…といった話は少なくなりつつあります。

 

しかし、祖父母にとってはみんな平等にかわいいはずの孫に対し、あまりにも待遇が異なるという別の形の「孫差別」を受けたというママは多く、ひそかに問題になっているといいます。 今回は、実際に差別を受けたという体験談と、なぜ祖父母はそのようなことをしてしまうのか、そしてわが子を傷つける「孫差別」に対してママやパパにできることは何か…考えていきたいと思います。

目次

うちはこんな「孫差別」を受けた!ママの実体験

まずは、実際にママたちが「これって孫差別では?」と感じた出来事を話してもらいました。

 

「わが家と夫の姉一家は、祖父母の家からはほぼ同じくらいの距離に住んでいます。たしかに、義姉の方がひんぱんに家を訪れたり、子どもを預けたりしているので、義母にとってはあちらの孫がかわいいのだと思いますが、ちらっと聞いたところによると、1年年下のあちらの長男には、ベビーカーとチャイルドシート、バウンサー、ブランド物のベビー服がお祝いだったとか。1年前にいただいた出産祝いはスーパーのベビー服上下セットでした…。豪華なモノが欲しいわけじゃないですが、差がありすぎではと少し悲しいです」Uさん(29歳・6歳と4歳のママ)

 

「義父母は、夫の妹夫婦の子には誕生日やクリスマスにプレゼントを贈るのですが、うちの子には誕生日のプレゼントどころかお祝いの電話もありません。こちらはもちろん義父母の誕生日や結婚記念日にはお祝いしていますが…。しかも、私の親がプレゼントをくれたことを聞くと、うちの孫なのに勝手なことを!と気を悪くします。お金は使いたくないけれどプライドは傷つけられたくないのか、私や子どもが憎くていい思いをさせたくないのか…理解に苦しみます」(Sさん・35歳・3歳のママ)

 

「義父母は、表面上は同じ扱いをしてくれているつもりだと思います。でも、いとこ(姉夫婦の子)たちを呼ぶ時の声とうちの子たちを呼ぶ声は全然違うし、そもそもあまり声もかけないですね。外食する時も、当たり前のようにいとこたちの希望だけ聞きます。そして極めつけは、いとこたちとしょっちゅう名前を間違われること。あまりうちの子たちが頭の中にないのだな、と分かってしまいます」(Yさん・30歳・7歳と3歳のママ)

 

そのほか、 「3人の子どもたちの孫に対し、それぞれの長男だけにランドセルや学習机を買ってくれた義父母。買って下さるのはありがたいのですが、うちは一人目が女の子で、二人目が男の子なので、長女にどう説明していいか困りました」 という長男にこだわる祖父母の行動や、 「数年あとに生まれた義妹の子どもたちとなんでも比べて、歯が生え始めた時期から歩き出した時期・しゃべった時期まで、いとこたちの方が早い・じょうずだと事あるごとに言うんです。

 

本当はうちの子たちの方が早かったこともたくさんありますが、都合よく記憶がすり替わっているみたい。」 と、孫たちを比べて一方を貶めるような発言をしたり、 「末っ子だけ入園・入学のお祝いなどがないんです。同居なので本当にかわいそうで」 という、疎遠にしたくてもできない辛い状況の人もいました。

 

子どもたちが成長してくると、そんな祖父母の態度は伝わってしまい、子どもから「遊びに行きたくない」と言われたり、「おばあちゃんは本当に私のおばあちゃん?」と聞かれたママもいるそうです。

 

さらに成長すると、子どもなりに人を見極めていくのか、自然と疎遠になりあまり話もしなくなる子も多いそうですが、ママ曰く 「義母は反抗期だと思っているみたいです…」 と自分の態度が原因だと分かっていないことも多く、とても残念なことですね。

祖父母が悪気なく「孫差別」をしてしまう理由と心理

祖父母は、どうしてかわいいはずの孫に分け隔てのある接し方をしてしまうのでしょう? パパに相談しても「母さんも悪気はないから…」と言われた、という人も多いのが「孫差別」の特徴ですが、その典型は、「経済力の変化」と「慣習」ではないでしょうか。

 

その子によってお祝いやプレゼントの額が大きく異なるような場合、現役で働いていたのか、定年して年金で暮らしているのかによって経済状況は大きく変わります。 そのため、一人目と二人目でお祝いの額が減ったという場合、いちがいに差別というのは間違いかも。ただ、限られた金額を、気に入った子にだけ回したい…と感じてしまう祖父母はいるかもしれません。

 

また、長男だけにお祝いを渡すという場合、地方や代々の慣習で、下の子たちが気の毒だと思いつつも、やり方を変える勇気がないのかもしれません。

孫ではなく、「嫁差別」が隠れていることも

リアルの会話でも、インターネットなどでも、必ず出てくるのが「息子の嫁が産んだ孫よりも、実の娘が産んだ孫の方がかわいい」という発言。 単に娘の子だからかわいい・かわいくないという以外にも、娘には遠慮なく色々言えるのに対し、お嫁さんには気を使って言えないこともあって、心理的な距離が異なるのは仕方ない部分はあると思います。

 

しかし、そうだとしても孫の扱いはできるだけ平等にし、差別は表に出さないのが小さな子への愛情や思いやり。年を重ね、痛みもたくさん経験してきたからこそ他人にも配慮できるはずなのですが…実際はそうとばかりもいえないようです。

 

お姑さんとお嫁さんの間で、相性が悪い・意見が合わないなどの明らかな理由がある場合はまだしも、かわいい息子を奪ったお嫁さんはどんな人でも憎い…というパターンもありうるのが怖いところ。

 

「実の母は、うちの子には出かけた時におもちゃなどを買ってくれたりお土産をくれたりするのですが、兄のところの子にはあからさまに何もしてあげなくて。一度、かわいそうでは?と言ったら、母は、冗談ぽく、大事なお兄ちゃんを奪った人の子なんだからいいのよと言ったんです」(Nさん・29歳・3歳のママ)

 

そのほか、祖父母自身が孫差別が当たり前の環境で育てられていた場合、そもそも自分たちの対応に疑問を抱いていない可能性も。

 

自分自身がイヤな思いをしていたから孫たちには同じ思いをさせないでおこうと思うのか、世の中はこういうものだから嫌な思いをしても仕方がないと思うのか…そこは、人それぞれの考え方なのかもしれません。

「孫差別」対策はどうすれば?

それでは「孫差別」で子どもが傷つきそうな時にママやパパがしてあげられることは何があるのでしょうか? 「これって孫差別!」と感じる時でも、まずは一歩引いて、自分たちの祖父母に対する接し方を見直してみましょう。

 

子守りやお祝いなどをしてくれて当然と、便利な相手のように思っていないかどうか振り返ってみたり、誕生日や法事など決まった日だけでなく、なんでもない日に「お元気ですか」と連絡を入れてみるなど、少し接し方を変えてみると祖父母の側も少しずつ変わってくることがあります。

 

こちらは心を込めた対応をしているのに通じていないと思われる場合は、できれば実の息子(または娘)側から、冷静に現状を伝えて、せめて子ども本人には辛い思いをさせないような配慮をお願いしましょう。

 

また、多くのママが口にしたのは、「節句のお祝いや誕生日プレゼントなど、お金やモノが欲しいのではなく、片方の孫だけに悲しい思いをさせないような心遣いが欲しかった」ということです。お祝い、お金関係は期待しないと割り切った方がモヤモヤしなくて済むといえます。

 

孫どうしをいつも比較される場合、可能であれば、帰省の時期をずらすのも一つの方法です。 しかし、それでも、子どもが心を痛めるような明らかな差別・暴言などがある場合、最後の手段として「会わせない」「夫だけで帰省してもらう」などの方法をとっています、と聞かせてくれたママもいました。

 

そして、あまりにひどい発言に対し子どもが抗議した時には、「おばあちゃんにそんなこと言うなんて!」と頭ごなしに叱らず、できるだけ「○○と言われて嫌だったね」と共感してあげてほしいと思います。

 

同居の母と祖母の折り合いが悪く、自分自身が孫差別を受けていたというHさん(36歳・5歳と2と0歳のママ)は、当時を振り返り、 「子どもの頃はつい祖の扱いに不満を口にしてしまうのですが、母は私を叱らず、おばあちゃんはあんな人だからね、もっとこうしてくれたらいいのにね…と慰めてくれました。いとこが遊びに来て、お菓子やおもちゃなどを与えるのを見てしまったら、あとからそっと私の好きなものを母が買ってくれたことも」 と母親の対応を振り返り、感謝の気持ちを話してくれました。

孫差別の心理や対策 まとめ

おじいちゃん・おばあちゃんは孫が無条件に可愛いもの…というのは思い込みであり、祖父母にも孫にも性格があるので、合う合わないはどうしても出てくるもの。

 

それでも、子どもの気持ちを考え、受け入れられないような「孫差別」があった場合には、ぜひ今回紹介した内容も参考に対応してみて下さいね。

 

文/高谷みえこ