ターミナルや特急停車駅で見られる種別や行先を案内するための機械、駅発車標。今回は駅発車標にスポットを当てます。駅発車標をじっくり見ると、いろいろな発見がありますよ。

1.昭和の主力だった駅発車標「パタパタ」

写真1

一言で「駅発車標」といっても、いろいろな種類があります。昭和から平成初期まで多く見られたのが反転フラップ式、通称「パタパタ」です。「パタパタ」の由来は種別や駅名が書かれた板が回転するときに聞こえる「パタパタ」の音から。「パタパタ」は駅だけでなく空港や某音楽番組でも見られました。

 

「パタパタ」は全国、とりわけ大手私鉄で見られました。大手私鉄では数多くの行先と種別があるので、変わるたびに「パタパタ」の音がたっぷりと聞けたものです。また、回転する際にレアな行先や種別がチラリと見られるのもポイント。最近、「パタパタ」が動いている様子を撮ったスローモーション動画がYouTubeがいくつも見られます。 長年にわたって活躍を続けてきた「パタパタ」でしたが、2000年頃からLED式にバトンタッチしています。首都圏を走るJRや大手私鉄、関西のJRではほぼ全滅。関西の大手私鉄では南海や近鉄、阪急で見られます。

 

こちらは、阪急神戸線岡本駅にある「パタパタ」です。なぜか、阪急線では岡本駅だけ「パタパタ」が残っています。じっくりと観察すると1997年に運行を終了した「須磨浦公園」の文字も見られますよ。

2.アナログな雰囲気がたまらない「行灯式」

写真2

「パタパタ」と並んで昭和の時代に見られたのが「行灯式」です。「行灯式」とはあらかじめ板に行先や種別が書かれてあり、該当の行先・種別を点灯させるもの。先ほど紹介した「パタパタ」よりもアナログな方法といえるでしょう。

 

「パタパタ」と比べると、「行灯式」は表示できる種別・行先が限られるのが欠点。たくさんの種別・行先を表示させようと思えば、かなりのスペースを取ることになります。その代わり、点灯されるので夜でもクッキリと表示。個人的には「パタパタ」よりも見やすいので、「行灯式」が気に入っているのですが…。

 

写真は阪急千里線山田駅のものです。千里線は普通だけ運行され、行先は「梅田」「淡路」「天神橋筋六丁目」「天下茶屋」に限られます。しかし、梅田方面と天下茶屋方面はまったく別方向なので、乗り間違えると大変!そのため、今でも「行灯式」が大活躍しています。 関西では阪急の他に大阪市営地下鉄や神戸市営地下鉄など、普通列車しか運行されない地下鉄で「行灯式」が見られたものです。しかし、地下鉄の「行灯式」はLED発車標に変わり、姿を消しています。

3.現在の主力「LED式」

写真3

1990年代後半から一気に広まったのが「LED式」です。「LED式」は文字どおり、LED(発行ダイオード)によって種別や行先を表示させるもの。「パタパタ」と異なり、すぐに行先や種別が加えることができるため、ダイヤ改正に迅速に対応できます。そのためか、大都市はもちろん、地方でも今や「LED式」が主力です。

 

初期の「LED式」は緑、オレンジ、赤色の3色なので、バリエーションが乏しいものでした。現在は多くの色が使える「LED式」になったので、より分かりやすいものに。当分は「LED式」の天下が続くのではないでしょうか。

4.これからの駅発車標「LCD式」

写真4

「LED式」を進化させた「LCD式」も着実に広がっています。「LCD式」は液晶ディスプレイを活用したもの。種別や行先はもちろん、時計のイラストなど、レイアウトは自由自在。また、路線図を表示させながら運行状況を表示させるのも「LCD式」の得意技です。当初はターミナル駅で見られましたが、都会の小駅でも進出しています。おそらく、地方でも広がることでしょう。

 

ところで、駅で多く見られる「LCD式」ですが、なぜか空港ではあまり見かけないような気がします。何か特段の理由があるのでしょうか。

昔はブラウン管を使った駅発車標もあった!

今まで「パタパタ」から「LCD式」まで、主な駅発車標を紹介しました。ここでは、少しレアな駅発車標を少しだけ紹介します。「LED式」の前に登場したのがブラウン管を使った駅発車標です。当初は行先、種別、発車時間だけが表示されるシンプルなものでしたが、後に「パタパタ」と同じく停車駅も表示。「パタパタ」に代わる駅表示機として期待されました。

 

しかし、ブラウン管の画面が小さく厚みもあったので、次々と「LED式」「LCD式」に取って代わりました。 このように駅でおなじみになっている駅発車標。個人的には駅発車標自体が消滅するのでは…と予想しています。駅発車標の新たなライバルがアプリを使った列車案内です。大半の利用客がアプリを使えば、駅発車標を設置するコストが省けることでしょう。

 

取材・文・撮影/新田浩之