もう10代の人に「寝台列車」と言ってもピン来ないでしょう。かつては寝台列車が日本中を走っていましたが、その大半は廃止されました。今回は「寝台列車知らない世代」に向けて、寝台列車の魅力をちょっとでもお伝えできればと思います。

そもそも、寝台列車とは?

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寝台列車とは文字どおり、寝ながら移動できる列車を指します。夕方から夜にかけて出発し、目的地に到着するのは朝~昼のこと。そのため、時間を有効活用できるので、多くの旅人が使っていました。車内には座席車もありましたが、メインはベッド付きの車両、すなわち寝台車でした。

 

寝台車は大きく高級のA寝台と標準のB寝台に分けられます。旧国鉄時代はベッド付近に扉がない「開放型」と呼ばれるタイプが一般的でした。1980年代末から「個室型」の寝台車が次々に登場し、B寝台1人用個室「ソロ」や2人用個室「デュエット」は高い人気を得ていました。この他、食堂車やサロンカーを連結する寝台列車もありました。

 

かつての寝台列車は客車で運行され、車体の色は濃い青色に白線という組み合わせ。そのため、人々は親しみを込めて「ブルートレイン」と呼んでいたものです。残念ながら、JRにおいて定期で運行されるブルートレインは消滅しています。

 

なお、寝台列車に乗車するには乗車券のほかに特急券(寝台急行の場合は急行券)、そして寝台車に乗る場合は寝台券も必要です。

昔はたくさん走っていた寝台列車

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かつて、日本には寝台列車がいたるところで走っていました。JR発足当初の昭和62年5月号の時刻表を見てみましょう。花形は東京~九州を結ぶ寝台列車を書き出してみました。

 

・さくら(東京~長崎・佐世保) ・はやぶさ(東京~西鹿児島) ・みずほ(東京~長崎・熊本) ・富士(東京~宮崎) ・あさかぜ1・4号(東京~博多) ・あさかぜ2・3号(東京~下関) ・瀬戸(東京~宇野) ・銀河(東京~大阪)

 

このうち「銀河」以外は寝台特急、「銀河」は寝台急行でした。当時、東京~九州間の寝台列車で最も人気があったのが「あさかぜ1・4」号です。この列車には当時珍しかったB寝台2人用個室「デュエット」やシャワー室、おしゃれな食堂車が連結されていました。まさしく「走るホテル」という名を欲しいままにしていました。

 

東京~九州以外では関西~九州、上野~東北・北陸、関西~北陸・東北間で運行されていました。また、1988年の青函トンネルの開通により、より豪華な寝台列車「北斗星」(上野~札幌)や「トワイライトエクスプレス」(大阪~札幌)もデビュー。寝台列車が単なる移動する手段ではなく、旅を楽しむ交通手段に変わったのです。

 

しかし、新幹線の延伸、高速バスの台頭、車両の老朽化により、次々と寝台列車は姿を消していきました。現在、定期で運行される寝台列車はサンライズエクスプレス出雲・瀬戸(東京~出雲市・高松)しかありません。

 

なお、筆者はなは(新大阪~西鹿児島)、あかつき(京都~長崎・佐世保)、だいせん(新大阪~出雲市)に乗車したことがあります。いずれも私が乗車したときの運行区間です。 ベッドに横になりながら、列車旅が楽しめる。そんな非日常が楽しめるところが寝台列車の魅力だと思います。そのような魅力的な列車がほとんど残っていないことはとても寂しいですね。

サンライズエクスプレス号に乗ってみよう

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消滅した寝台列車を嘆いても仕方がないので「サンライズエクスプレス出雲・瀬戸」に乗ってみましょう。この列車は東京~出雲市・高松を結ぶ寝台電車で、途中の岡山で出雲市方面と高松方面に分かれます。

 

この列車の特徴は一部を除き全て個室で構成されていること。しかも、A寝台1人用個室「シングルデラックス」、B寝台1人用個室「シングル」「シングルツイン」「ソロ」とバラエティーにあふれています。また、乗車券と指定席券で乗車できるカーペット式の「ノビノビ座席」も忘れてはいけません。シャワー室も連結されており「走るビジネスホテル」という感じでしょうか。ただし、食堂車は連結されていないので、食事は自分で確保する必要があります。

 

サンライズエクスプレスは東京を22時に出発。浜松(1時12分発)から姫路(5時25分着)まではどの駅にも止まりません。終着駅、高松には7時27分、出雲市には9時58分に着きます。夜出発し、朝に目的地に到着するので、時間を効率的に使えます。また、上り(東京方面)は大阪(0:34分発)にも止まるので、大阪→東京への移動にも最適。私も関西から利用したことがありますが、とても便利な列車です。

 

なお、オンシーズンになるとサンライズエクスプレスはあっという間に満席に。予約は早めに済ませることをおすすめします。

 

文・撮影/新田浩之