国際化社会が進む今、多文化共生は重要事項
最近、ビジネスの世界だけでなく、私達の普段の生活においても国際化の波を感じる機会が増えてきました。現在息子の通う小学校には、ダブル(昔は『ハーフ』という呼び方が一般的でしたが、ご両親の一方が外国人のお子さん)の児童を普通に見かけますし、コーヒーショップ等でも、外国名らしい名札を付けた店員さん達を見ることが珍しくなくなりつつあります。 しかし残念ながら、まだ日本では外国人の方達に対する偏見も残っている様で、真のグローバル国家への道のりは遠い感じがします。昔良く聞いた話ですが「Native English Speakerのアングロサクソン系外国人には友好的、Non Native English Speaker、特にアジア系の外国人にはそっけない」態度を取る日本人が未だに多いという傾向を、今でも時々耳にします(以前米軍基地周辺で、基地内の米国人英語教師の紹介を行っているエージェントの方の話を聞いたのですが「アジア系やアフリカ系のアメリカ人ではなく、アングロサクソン系のアメリカ人に教わりたい」と外見やルーツで差別をする方がいたそうです)。 私は昨年度まで、仕事でダイバーシティ推進の情報を収集していた関係で、居住市内の多文化共生についての講演会を聴講し、その時市内の「多文化子育てグループ “MulCulnoWA(まるかるのわ)”」の存在を知りました。 “MulCulnoWA”は外国にルーツを持つ家庭のサポートを行う事で、日本での子育てがより実りのある楽しいものになるようにと、有志の方が現在5人で運営されている、多文化子育てグループです。 代表のマダワラ真由子さんは、スリランカ出身のご主人と、保育園児の娘さんをお持ちの国際結婚ファミリーのママです。日本人のママですら社会から孤立感を感じる子育て、日本語が堪能ではない外国人の方達は、尚更日本での子育てが大変な事は察する事が出来ますよね。マダワラさんは、そんな外国人ファミリーや国際結婚ファミリーの皆様へ、有益な子育て情報や、イベントを通してお友達と知り合う機会を提供したりと、多文化共生を促進すべく精力的に活動されています。 講演会のお話だけでは物足りなく、改めてお話を聞きたくてマダワラさんにコンタクトを取ってみたところ、8月に開催されるMulCulnoWAのピクニックのお誘いを受けました。多文化共生についてリアルに学べるチャンスでしたので、息子と一緒に喜んで参加させて頂きました。その時の様子をリポートさせて頂きたいと思います。
※写真:可愛い横断幕が目印の『MulCulnoWA』のテント
様々なルーツを持つ方達とのピクニック
8月初旬、私と息子は、居住市内にある「夕焼け小焼けふれあいの里」を訪れました。こちらの敷地内の広場に可愛い立看板のあるテントを発見。ここがマダワラさん達の運営されている『MulCulnoWA』の集合場所でした。 過日の講演会の時と変わらない明るい笑顔でマダワラさんが迎えて下さり、メンバーの皆さんとピクニックの参加者の方を紹介して頂きました。マダワラさんの傍らには、ふんわりカールした黒髪が可愛い娘さんがいらっしゃいました。 この日のピクニック参加者は、実に様々なルーツを持つ方が参加されていて、分かる範囲で韓国、フィリピン、ロシア、スリランカ、ルワンダ、アメリカ合衆国等、テントの中が実に国際的でした。 テントの傍では、様々なルーツをお持ちのお子さん達が何人も集まってワイワイ楽しそうにシャボン玉を作っていました。息子も早速混じってシャボン玉作りを始めました。 参加者がある程度集まったところで、夏らしく皆でスイカ割りを楽しみました。子供・大人でチームを二つ作り、交互に頑張ってみたのですが、スイカが固くてなかなか割れず…ここは昔剣術を習っていた私が割らねばと、何とか叩き割りました(笑)。本当は子供達がスイカを割った方が絵になるのですが…。 スイカ割りの後は、皆でスイカを食べつつ、各自持参したランチを食べながら歓談しました。 隣にいらっしゃったフィリピン出身のママさんと最初にお話ししてみました。7歳の時日本に来た当時は、言葉がわからなくて大変苦労されたそうですが、現在は日本で結婚されて二児のママとなり、日本のコミュニティにすっかり溶け込んでいる印象を受けました。日本語も綺麗で、ご自分のお考えもしっかりお持ちの方でした。 ただ、「日本には未だに『フィリピン人=夜の仕事に就く人達』という偏見を持つ人もいる」という残念なコメントもありました。日本もグローバル化が進んだとはいえ、実際には偏見を持つ方達がまだまだ存在しているのかもしれません。(参考に、私が過去にお会いしたフィリピン出身の方達は、よく働く優しい方ばかりでした。) 次に、ルワンダ出身のパパさんともお話してみました。この方も綺麗な日本語をお話して、息子さんの世話も一生懸命されていたイクメンさんでした♪親が子供の成長を嬉しそうに語る姿は、世界共通なのだな…としみじみ感じました。 参加者の方の中には、まだ日本語があまり理解できない方もいらっしゃいましたが、皆で楽しくランチを食べていると、言葉が通じなくとも、楽しい雰囲気は共有できているのではと思いました。 久々に私も、様々なルーツを持つ方達とハウスシェアをしながら暮らしていた海外滞在時代を思い出して、懐かしくも楽しい雰囲気を味わう事が出来た、素敵なピクニックでした。
※写真:「巨大シャボン玉作成中」、「若き挑戦者、スイカ割りに挑む!の図」
子供達から学ぶ事
さて、ピクニック中に息子の反応はどうかと観察していましたが、ダブルのお子様が多かったことと、普通に日本語を話せるお子様が比較的多かったことで、多少外見の違いはあっても気にすることなく一緒にはしゃいでいました。特に池の中での水遊びなどは、キャーキャー歓声を上げて水を掛け合い、言葉などは必要無し!という感じでした(笑)。 昨年、息子のクラスに外国から来日したダブルのクラスメイトが転校してきた時は「彼は休み時間とか、一人でポツンと席に座っていてかわいそうだった。僕は友達になりたかったけど、彼は英語しか話せなかったから、英語が話せない僕はどうしたらいいかわからなかった」とこぼした事がありました。 その時私は息子に的確なアドバイスを与える事が出来ませんでした。そのうちクラス替えがあり、息子はそのクラスメイトとは別のクラスになってしまいましたが、自分の中ではモヤモヤが残りました。 その後、市内の多文化共生子育ての講演会を聴講して「そうか、言語以外にも目線や表情、動作で意思表示が出来るという事を息子に教えれば良かったのだ!」という事に遅まきながら気付きました。目があったら笑ったり、相手のパフォーマンスが良かったら大きく拍手をしたりと、意思表示をすることで気持ちは伝わる、これは相手が日本人であろうと外国人であろうと共通ですよね。どうしても大人になると先入観から「外国人とコミュニケーションを取るには相手の言語を理解してから…」となりがちですが、改めて親の私も、コミュニケーションの原点に立ち返る事が出来ました。 子供達の水遊びの様に、初めて会ったばかりで相手の事を殆ど知らなくても、一緒に楽しい空気を共有する事で仲良くなれる、心の距離を縮められる事は不可能ではない、それを改めて教えられました。子供達から親が学べる事は多いなと、改めて実感しました。
※写真:様々なルーツを持つ子供達の水遊び。こんな光景がもっと身近になると素敵ですね。
英語があれば全て良し、ではない
以前講演会で、マダワラさんが良いお話をされたので、この場を借りて一部ご紹介させて頂きます。 彼女が「MulCulnoWA」を立ち上げたきっかけは、外国人夫婦が3歳児検診のお知らせのお手紙を読めなかったので、日本語に訳してお手伝いした事や、エキゾチックな外見から娘さんが差別的発言を受けた事がある経験から「外国人でも、外国ルーツのある子供を持つ日本人でも、多様なママ達が安心して子育てできる環境を作るお手伝いをしたい」という思いがあったからだそうです。 以前、私の息子の学校で「外国人の親御さんも増えているから、PTAのお便りは日本語と英語で書こう」という話があったのですが、これが果たして英語圏以外の出身国の方に有効なのか?というモヤモヤがあったので、マダワラさんにこの件について質問してみたところ、「アジア圏の方達は、英語があまり得意ではない方も多いです。むしろ文章に使う日本語を簡単にする方が効果的です(例:漢字にフリガナを入れる、難しい表現は避ける、図で説明する…等)。」との事でした。「とにかく英語を入れればよい」ではなく、相手の日本語の理解度を計りながら、それに合った対応を取る事が望ましい様ですね。最近は外国語翻訳アプリや多言語電子辞書も沢山ありますので、状況に応じてこういったツールを活用しても良いかもしれません。英語活用もコミュニケーションの手段の一つではありますが、「あなたと意思疎通をしたい、出来ることを手伝いたい」という気持ちをまず示すことが、外国人の方に「この人と仲良くなりたい、もっと日本のコミュニティに溶け込みたい、日本語を理解できるようになりたい。」という風に、日本語を習得する為の原動力になるのではないかと思います。 また、母国で日本語を勉強した後来日した外国人の方達についても配慮が必要で、以前母国でじっくり日本語を勉強してから来日したカナダ出身の友人が、「日本に来たら、皆日本人が英語で話しかけてくる。日本語話せますよと言っているのに…僕は頑張って勉強してきた日本語を話したい!!」と憤慨した事がありました。 全く日本語が話せない英語圏の方に英語で話しかけるのは良いとして、「日本語話せます」とPRされた外国人の方に対しては、わかりやすい表現で、正しい日本語を話すように心がけて頂きたいです。(逆の立場で、もし皆さんが沢山英語を勉強して英語圏に行き、現地の殆どの方達に日本語で話しをされたらがっかりすると思います。)どんな国の方にでも臨機応変にコミュニケーションが取れる様に、経験値を積んでいきたいものですね。 多文化共生の社会を目指すには、私達一人一人の心構えが大切かと思います。きっと子供達も親の行動に倣ってくれる筈です。どんなルーツを持つ家庭でも幸せに子育てできる社会の実現は、とても素敵な事だと思います。
【取材協力】 多文化子育てグループ『MulCulnoWA(まるかるのわ)』(http://mulculnowa.com/)
CHANTOママライター/トヤマチエコ